最期まであなたと
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春、入学した呪術高等専門学校。
同級生は4人。
入学早々、五条家の息子と術式を使って盛大に喧嘩をした。
そしてその後、二人で先生に叱られた。
女子二人は物静かな2人だった。
綺麗系な子と可愛い系の子。
初めは、特に意識していなかった。
数少ない同級生と当たり障りなくやっていこうと思っていたくらい。
彼女は常に自信が無かった。
私と同じ非術師の家系から来た彼女。
父親の知り合いに少しだけ呪術界のことを教えてもらえていたみたいだが、基本的に呪霊を避けて生きてきたと。
だから、命のやり取りをするこの高専で、彼女は浮いていた。
溶け込むことも出来ず、溶け込めず
そのせいか悟は彼女にちょくちょく辛口な言葉を飛ばしていた。
「悟、言い過ぎじゃないかい?」
「あーゆー中途半端な奴から死んで行くんだよ。なら、今ここで辞めた方がいいだろ」
「確かにね」
呪術師になるには、彼女はまともだった。
イカれてるくらいが丁度いいこの世界に付いていくのに必死で、イカれきれず、彼女は同級生の中で一人だった。
「優しい子なんだよ」
「優しさだけじゃ呪霊は祓えねぇよ」
「まぁね」
今となってはアレが悟なりの優しさだったのかもしれない。
言い方はキツいものだが、優しい人間から死んでいく世界で、彼女は生き残れない。
だからこそ辞めろと、向いていないと言い続けていたのに彼女は辞めなかった。
泣きそうな顔をしているのに、1度も泣かなかった。
呪霊と対峙した時も恐怖で顔が強ばっているのに泣かなかった。
どんなことを言われても
どんなに辛くても
彼女は私達の前で泣くことは無かった。
私は彼女が居残っていても、辞めてもどちらでもいいと思っていたから特に気にはならなかった。
授業が終わってから就寝までの間
時折身なりが汚れて遅くに帰ってくるな、と見かけることがあり、いつの間にかそのあとに硝子が戻って来ることが多くなった。
「硝子?」
ふわりと香る臭いは未成年の彼女からしてはいけない香り。
眉を寄せて見れば、硝子は悪気の無い表情。
「匂いがしてるよ」
「だろうね」
「最近夜吸いに行ってるのかい?」
「吸いながら見てたらこの時間なだけ」
「?」
最初は意味がわからなかった。
硝子はいつもは変わらない表情を少しだけ拗ねた顔をしながらどこか遠くを見る。
「私じゃ力になれないから」
「………名前かい?」
「いつも裏山で一人で鍛練してんだよ」
「………この時間まで?」
「一人で鍛練して、一人で泣いて
誰にも頼らないし距離置いてる」
硝子の言葉に驚いた。
いつも泣かずに耐えていたのに
彼女は泣いていたのか……一人で。
それから、興味本位だった。
彼女の後をつけて裏山まで行けば……
彼女は泣いていた。
声も出さず
流れ落ちる涙をそのままに
唇を噛み締めていた。
なのに
瞳に宿る光は失っていなくて……
その姿が綺麗だった。
鍛練に付き合うようになって、彼女のことを知っていった。
自信が無いのに負けず嫌いで
怖いのが嫌いで
甘えん坊で
寂しがり屋で
恥ずかしがり屋で
一人ぼっちが嫌い
彼女は彼女が思っているほど弱くはない。
が、あれこれと考えすぎて行動が遅れてしまう。そのため、毎回危なげに呪霊と闘い小さな怪我をする。
呪具自体も彼女の手に馴染んでいるようには見えず、だからこそより危なげに見えた。
どこか抜けていて、何もないところでよく転びそうになるし、下手すれば転ぶ。
控えめに、照れたように笑う姿が好きだと思った。
打ち解けて緊張が無くなれば、一番に頼ってくれるのが嬉しくなった。
途中、硝子とも打ち解けて笑顔が増えてきても、私のとこに来てくれるのが可愛らしくて……いつしか、彼女を想うことが増えた。
悟のことはまだ苦手らしく、それでも負けないように、認められるように頑張る彼女が愛しかった。
悟も彼女を嫌って厳しくしているわけじゃなかった。
どこか肝心な時に甘い彼女を危惧しているからこそ、悟は強く言葉を放つ。
認められたい彼女は必死に頑張る。
そうしているうちに、悟も彼女の頑固さと頑張りを認めるようになり、自分から彼女の鍛練に付き合うようになっていった。
控えめなのに頑固で
大人しそうに見えて突拍子も無いことをし
可愛らしく見えて凛々しく綺麗な彼女
秋には四人で行動することが増えていた。
「夏油さぁ、名前のこと好きなの?」
「突然どうしたんだい?」
「傑はわかりやすいけど、あいつ微妙だよな」
「懐いてるのはわかる」
「それな」
名前がいない隙に硝子と悟が話し出す。
私は隠すことすらしていないから、確かにわかりやすいと言われても仕方がない。
「名前こないだ先輩にちょっかいかけられてた」
「は?硝子、その話詳しく話してもらえるか?」
「怖ェよ」
「名前がシャワー帰りで先輩に捕まってた」
「誰だよそいつ」
「知らね。話遮って戻って来たけど、最近ちょくちょく名前に話しかけてる」
「ありがとう、硝子。
後から探しておくよ」
「こーわっ!!」
「……そろそろかな」
「何が?」
「可愛い小鳥を鳥籠に入れなきゃいけないかなぁ、と思ってね」
「………あーあ、名前可哀想」
「コイツに目ェつけられるとか…」
「君たち、人を外道みたいに言わないでくれないかな?」
それからすぐに、名前に想いを伝えたら驚かれたが、まぁ私のになってくれた。
可愛い可愛い私の名前。
君が笑う回数が増えた理由が
私だとわかるからこそ、私は嬉しかった。
私といられて幸せだと笑う君が可愛くて、愛しくて……君を知れば知るほど、私は君に恋をする。
君を抱き締めた時に香るシャンプーの香りが好きだ。
触れるたび、くすぐったいと笑いながらこちらを見上げる瞳が好きだ。
小さな手で、頬に触る君が愛しくて
戦闘になると以前は怯えていたままだったのが、その瞳の奥に生きたいと願う強い意志。
強くなっていく凛々しさが好きだ。
「夏油くん」
「傑って呼んでくれないのかい?」
「………あの、えっと…」
「二人のときくらい、駄目かい?」
「………すっ、すぐ…傑……くん」
名前を呼んだだけなのに、真っ赤になる顔。
こちらまで恥ずかしくなっていくような反応に、彼女を抱き締める力を強める。
「君、可愛すぎ」
「そんなことないよ」
「可愛いよ、名前」
「ふふっ、くすぐったいよ」
ちゅっ、ちゅっ、と顔中にキスをすれば
くすぐったいと笑う彼女。
「好きだよ、名前」
「私も……好き、です。す…傑、くん」
「はは、そのまま慣れておくれ」
「が、頑張るよ…」
春、君と出会った。
夏、君の涙に恋をした。
秋、君は想いに気付いてくれず
冬、君に愛を囁いた。
彼女の隣は心地よくて
私は確かに、幸せだった。
あとがき
短いですが、ちょっとした箸休め。
むっずかしーなぁ…傑……。
むずい……。
同級生は4人。
入学早々、五条家の息子と術式を使って盛大に喧嘩をした。
そしてその後、二人で先生に叱られた。
女子二人は物静かな2人だった。
綺麗系な子と可愛い系の子。
初めは、特に意識していなかった。
数少ない同級生と当たり障りなくやっていこうと思っていたくらい。
彼女は常に自信が無かった。
私と同じ非術師の家系から来た彼女。
父親の知り合いに少しだけ呪術界のことを教えてもらえていたみたいだが、基本的に呪霊を避けて生きてきたと。
だから、命のやり取りをするこの高専で、彼女は浮いていた。
溶け込むことも出来ず、溶け込めず
そのせいか悟は彼女にちょくちょく辛口な言葉を飛ばしていた。
「悟、言い過ぎじゃないかい?」
「あーゆー中途半端な奴から死んで行くんだよ。なら、今ここで辞めた方がいいだろ」
「確かにね」
呪術師になるには、彼女はまともだった。
イカれてるくらいが丁度いいこの世界に付いていくのに必死で、イカれきれず、彼女は同級生の中で一人だった。
「優しい子なんだよ」
「優しさだけじゃ呪霊は祓えねぇよ」
「まぁね」
今となってはアレが悟なりの優しさだったのかもしれない。
言い方はキツいものだが、優しい人間から死んでいく世界で、彼女は生き残れない。
だからこそ辞めろと、向いていないと言い続けていたのに彼女は辞めなかった。
泣きそうな顔をしているのに、1度も泣かなかった。
呪霊と対峙した時も恐怖で顔が強ばっているのに泣かなかった。
どんなことを言われても
どんなに辛くても
彼女は私達の前で泣くことは無かった。
私は彼女が居残っていても、辞めてもどちらでもいいと思っていたから特に気にはならなかった。
授業が終わってから就寝までの間
時折身なりが汚れて遅くに帰ってくるな、と見かけることがあり、いつの間にかそのあとに硝子が戻って来ることが多くなった。
「硝子?」
ふわりと香る臭いは未成年の彼女からしてはいけない香り。
眉を寄せて見れば、硝子は悪気の無い表情。
「匂いがしてるよ」
「だろうね」
「最近夜吸いに行ってるのかい?」
「吸いながら見てたらこの時間なだけ」
「?」
最初は意味がわからなかった。
硝子はいつもは変わらない表情を少しだけ拗ねた顔をしながらどこか遠くを見る。
「私じゃ力になれないから」
「………名前かい?」
「いつも裏山で一人で鍛練してんだよ」
「………この時間まで?」
「一人で鍛練して、一人で泣いて
誰にも頼らないし距離置いてる」
硝子の言葉に驚いた。
いつも泣かずに耐えていたのに
彼女は泣いていたのか……一人で。
それから、興味本位だった。
彼女の後をつけて裏山まで行けば……
彼女は泣いていた。
声も出さず
流れ落ちる涙をそのままに
唇を噛み締めていた。
なのに
瞳に宿る光は失っていなくて……
その姿が綺麗だった。
鍛練に付き合うようになって、彼女のことを知っていった。
自信が無いのに負けず嫌いで
怖いのが嫌いで
甘えん坊で
寂しがり屋で
恥ずかしがり屋で
一人ぼっちが嫌い
彼女は彼女が思っているほど弱くはない。
が、あれこれと考えすぎて行動が遅れてしまう。そのため、毎回危なげに呪霊と闘い小さな怪我をする。
呪具自体も彼女の手に馴染んでいるようには見えず、だからこそより危なげに見えた。
どこか抜けていて、何もないところでよく転びそうになるし、下手すれば転ぶ。
控えめに、照れたように笑う姿が好きだと思った。
打ち解けて緊張が無くなれば、一番に頼ってくれるのが嬉しくなった。
途中、硝子とも打ち解けて笑顔が増えてきても、私のとこに来てくれるのが可愛らしくて……いつしか、彼女を想うことが増えた。
悟のことはまだ苦手らしく、それでも負けないように、認められるように頑張る彼女が愛しかった。
悟も彼女を嫌って厳しくしているわけじゃなかった。
どこか肝心な時に甘い彼女を危惧しているからこそ、悟は強く言葉を放つ。
認められたい彼女は必死に頑張る。
そうしているうちに、悟も彼女の頑固さと頑張りを認めるようになり、自分から彼女の鍛練に付き合うようになっていった。
控えめなのに頑固で
大人しそうに見えて突拍子も無いことをし
可愛らしく見えて凛々しく綺麗な彼女
秋には四人で行動することが増えていた。
「夏油さぁ、名前のこと好きなの?」
「突然どうしたんだい?」
「傑はわかりやすいけど、あいつ微妙だよな」
「懐いてるのはわかる」
「それな」
名前がいない隙に硝子と悟が話し出す。
私は隠すことすらしていないから、確かにわかりやすいと言われても仕方がない。
「名前こないだ先輩にちょっかいかけられてた」
「は?硝子、その話詳しく話してもらえるか?」
「怖ェよ」
「名前がシャワー帰りで先輩に捕まってた」
「誰だよそいつ」
「知らね。話遮って戻って来たけど、最近ちょくちょく名前に話しかけてる」
「ありがとう、硝子。
後から探しておくよ」
「こーわっ!!」
「……そろそろかな」
「何が?」
「可愛い小鳥を鳥籠に入れなきゃいけないかなぁ、と思ってね」
「………あーあ、名前可哀想」
「コイツに目ェつけられるとか…」
「君たち、人を外道みたいに言わないでくれないかな?」
それからすぐに、名前に想いを伝えたら驚かれたが、まぁ私のになってくれた。
可愛い可愛い私の名前。
君が笑う回数が増えた理由が
私だとわかるからこそ、私は嬉しかった。
私といられて幸せだと笑う君が可愛くて、愛しくて……君を知れば知るほど、私は君に恋をする。
君を抱き締めた時に香るシャンプーの香りが好きだ。
触れるたび、くすぐったいと笑いながらこちらを見上げる瞳が好きだ。
小さな手で、頬に触る君が愛しくて
戦闘になると以前は怯えていたままだったのが、その瞳の奥に生きたいと願う強い意志。
強くなっていく凛々しさが好きだ。
「夏油くん」
「傑って呼んでくれないのかい?」
「………あの、えっと…」
「二人のときくらい、駄目かい?」
「………すっ、すぐ…傑……くん」
名前を呼んだだけなのに、真っ赤になる顔。
こちらまで恥ずかしくなっていくような反応に、彼女を抱き締める力を強める。
「君、可愛すぎ」
「そんなことないよ」
「可愛いよ、名前」
「ふふっ、くすぐったいよ」
ちゅっ、ちゅっ、と顔中にキスをすれば
くすぐったいと笑う彼女。
「好きだよ、名前」
「私も……好き、です。す…傑、くん」
「はは、そのまま慣れておくれ」
「が、頑張るよ…」
春、君と出会った。
夏、君の涙に恋をした。
秋、君は想いに気付いてくれず
冬、君に愛を囁いた。
彼女の隣は心地よくて
私は確かに、幸せだった。
あとがき
短いですが、ちょっとした箸休め。
むっずかしーなぁ…傑……。
むずい……。