最期まであなたと
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君に出会って恋をした。
君と過ごして愛を育んだ。
当たり前に隣にいることが幸せで
嘘つきな君も
意地悪な君も
弱い君も
優しい君も
正義感がある君も
強い君も
愛しくて
哀しかった。
16歳の春、君と出会い
16歳の夏、君に恋をし
16歳の秋、君達と仲間になれ
16歳の冬、君と通じあえた。
五条くんは、はじめの頃は弱いとよく口にしていた。呪術師に向いていないと言われたこともあったが、気が付けば面倒見のいいお兄さんのような立場になっていた。
面倒くさそうにしながらも、私の鍛練に付き合ってくれて、指導までしてくれる五条くんの教え方はなるほど、と思うことが多かった。
言葉がきついことも多々あるが、はっきりと私の弱いところ、ダメなところ、癖などを教えてくれて、頑張った暁には飲み物を奢ってくれたりと……出来の悪い妹のような生徒のような扱いだった。
硝子ちゃんは、実は悪い子で隠れて煙草を吸う不良だ。身体に悪いからと言いながら、硝子ちゃんの煙草を吸う姿が様になっていて、その姿を見るのが好きなのは内緒。
数少ない女子の同級生だから、買い物したり、雑誌をチェックしたり、お風呂に入ったり、一緒に行動することは多い。
たまに突拍子もない質問もされるが、私と正反対の硝子ちゃんは私の憧れだ。
夏油くんは……いつも優しかった。
私に強くなるきっかけをくれた。
例え、夏油くんが思っていなかった一言でも、あの時切羽詰まっていた私を認めてくれた一言は、大きな衝撃だった。
あの時夏油くんじゃなければ、私は心がバキバキに折れて死んでいたかもしれない。
追い詰められていた私を救ってくれたのは夏油くんなのだ。
だからこそ、硝子ちゃんとも仲良くなれたし、五条くんとも仲良くなれた。
強くて、優しくて、たまに意地悪。
子供扱いするときもあれば、女性として扱うこともあり、その度にドキドキさせられた。
弱い私は夏油くんや五条くんの足手まといになるのに、いつも庇ってくれる。
日に日に大きくなる想い。
その想いを必死に箱の奥にしまいこむ。
私はそんな暇も余裕も無いのだから。
「名前ってさ夏油のこと好きなの?」
硝子ちゃんが部屋で寛いでいるなか、ボソリと聞いてきた。
あまりの衝撃に私は持っていた携帯を落としてしまい、顔に熱が集まる。
「そ、そんなわかりやすい!?」
「あ、やっぱりそーなのか」
「夏油くんにも五条くんにもバレてる!?
そんなに私顔に態度に空気に出していた……?
気付いてないの私だけ……?」
「何となく思っただけ」
「………単純でごめんなさい」
「何で夏油なの?」
「うーん…一番苦しかった時に認めてくれたのが夏油くんだったから、かな…」
もしもあの時、出会ったのが五条くんだったら?
私は惚れたのだろうか……と考えるが、今でこそ仲良くなれたが、あの時に五条くんに認めて貰えたかと言えば、きっと駄目だったはずだ。
むしろ、心が折られていたかもしれない。
そう考えるとゾッとした。
硝子ちゃんだったら?と考えたが、仲良くはなれただろうが自信は付かなかったかもしれない。
先生や先輩だったら?
きっと、好きにはならなかった。
じゃあ、何で夏油くんだったのかと頭を悩ませる。
「うーん…」
「そんな悩ませる事聞いた?」
何で、と聞かれたら……私のことを認めてくれたから。頑張っている事を凄い同級生に認められて嬉しかった。
どうして好きなの?と聞かれたら……あの時、笑わずに向き合ってくれたのが夏油くんだったから。
自信が出たのも、歩み寄ってくれたのも、みんなと仲良くなる機会をくれたのも……全て夏油くんがいたから。
そう考えると、私は夏油くんがいなかったら何も出来ず消えていたのかもしれないと思うと、好きな気持ちよりも感謝の気持ちが芽生える。
「夏油くんって聖人かな…?」
「クズでしょ」
「優しいよ?」
「上部だけだよ」
「えーっと……」
「まぁ、泣かされたら言いなよ。
削ぎ落とすから」
何を?とは聞けなかった。
硝子ちゃんがいい笑顔だったから……聞くのが怖くなってしまった。
「名前」
「なぁに?夏油くん」
今日は珍しく、硝子ちゃんと五条くんペアと私と夏油くんペアの2チームに分かれている。
と、言ってもほとんど夏油くんが祓ってしまい、私は彼の隣にいるだけ。
「名前は誰か好きな人はいるのかい?」
「………最近、その手の話好きだね」
「そうかな?」
「好きな人はいるよ」
想いを伝えようとは思っていない。
私が彼を想う気持ちすら迷惑な気がするが、相手とどうこうなろうとは思っていない。
「初めて誰かを好きだなって漠然とした想いなの。今まではそんなこと気にしている余裕無かったからよくわからないんだ」
「………初恋、なのかい?」
「うん。物心ついたときには呪霊ばかりに目がいって、いかに避けて過ごすかばかり考えていたから」
恥ずかしい話、私はこれが初恋だ。
初恋は叶わないと決まっている。
漫画ではハッピーエンド。
私の生きる世界は、そんな都合良くはいかないことくらいわかっている。
「今は側に居られるだけでいいの。
気持ちを伝える気もないし、どうにかなりたいわけじゃないんだ」
「………」
「まず、高専で落ちこぼれの私は恋愛に気を回す余裕無いからさ」
へへへ、と笑いながら夏油くんを見上げればぐっと顔を寄せられる。
慣れない距離にぎょっとしてすぐに顔に熱が集まる。
「へぇ……じゃあ、その相手が君に告白したら?」
「無いよ!そんな奇跡!」
「私が君を好きだと言っても?」
突然の事に身体の動きが止まる。
目を見開き、近い距離の夏油くんを見上げれば、真っ直ぐにこちらを見ている。
きゅっと、狭まった喉から出た声はとても間抜けな声。
「………へっ?」
「名前が好きなのは私だろ?」
まだ呪霊だっているのに、今この瞬間だけは違う世界のようで……
夏油くんは身を屈んでいて、私の顔の位置と夏油くんの顔の位置が近い。
切れ長な目尻は柔らかく下がっている。
鼻が高いな、とか耳の拡張痛くないのかな?とか、唇薄いな……とかまじまじと夏油くんの顔を見るのは初めてかもしれない。
いつも顔を寄せられても恥ずかしくて見られないから、いろんな事に情報が追い付いていない頭は、夏油くんの顔を見る機会をくれたのだった。
「違ったかな?」
笑みを浮かべながら小首を傾げる夏油くん。
そして、一気に情報を理解した途端に、顔に熱が集まり、夏油くんの顔を見ていられずキョロキョロと周りを見る。
「ちが……わ、ない……けど!」
なぜ、このタイミングなのかと言いたいが、私に言う勇気はない。
くすくすと笑いながら屈んでいた身体を真っ直ぐにして、立つ夏油くん。
「名前が好きだよ。
頑張り屋なところも、弱いところも、
抜けているところも、自信がないところも
名前が嫌いな名前自身のことも含めて、私は君を愛おしく思ってるんだ」
慣れない褒め言葉に加え、私を好きだと告げる言葉を頭が理解すると今まで以上にぶわっと熱が上がり、赤くなる顔を隠そうと両手で顔を覆う前に、夏油くんに腕を捕まれ、唇に柔らかい感触と、視界いっぱいに広がる夏油くんの顔。
恥ずかしさと、嬉しさと、情けない気持ちがごちゃまぜになり、泣きそうになってしまう私を見て、夏油くんは笑う。
「名前は私のことが好きなんだろう?」
「だって……だって、私……っ」
「私は名前のことが好きなんだ。
名前は望まないと言ったけど
私が我慢ならないんだよ」
恋愛に気をやるほど、私は強いわけでも、器用でもない。
「私……私、自信ない」
「?」
「夏油くんに釣り合うような子じゃないし
呪術師を頑張らなきゃいけないのに…
夏油くんばかり気にしてたら弱くなっちゃう」
「………名前」
「とっても、とっても嬉しいけど
私は1つの事をまず頑張らなきゃいけない不器用な奴だから……っ!!」
頭と腰を引き寄せられぎゅっと、抱き締められる。
「今まで通りでいいさ。
名前は術師になることを頑張るなら私が勝手に名前を甘やかすから」
「………それ、今までと変わらないよ?」
夏油くんには、充分甘やかされている。
それは、硝子ちゃんからも五条くんからも言われていて、他の人より気にかけてもらい、甘やかされているのは気付いてる。
「変わらないならいいだろう?
名前の邪魔にはならないし、名前が私のになるだけさ」
「……けど、私に夏油くんは勿体ないよ」
「私が名前がいいと言ってるのにかい?」
「………ズルいよ、夏油くん」
「そうさ。私はズルいんだよ」
くすり、と笑う彼にそろそろと手を伸ばせば、彼は黙って私の手を取って自分の頬に添える。
「夏油くん……すき、です」
「良くできました。
私と付き合ってくれるかい?」
「はいっ」
泣き出す私に夏油くんは笑って抱き締めてくれた。
弱い私は夏油くんの足手まといだし、守って貰うことが多い。
重荷になることはわかりきっていたから、この想いに蓋をしていた。
彼の隣に居るには私は不釣り合いだから。
けど……
抱き締められた温もりが嬉しくて
こんな私を好きだと言ってくれるのが嬉しくて
繋がれた手を離したくないと、我が儘な私が顔を出す。
この幸せを知った私は、簡単に離せない。
「………ごめんなさい。泣いて…まだ任務中なのに」
「可愛いからいーよ。
初めに言い出したのは私だからね」
「夏油くん……私のこと好きなんて、趣味悪い」
「傑」
「え?」
「名前で呼んでくれないのかい?」
「……無理、デス」
「今後の課題だね。さっさと任務終わらせてデートしようか」
「デッ!?」
いちいち反応する私に、くすくす笑う夏油くん。
片手を繋いだまま余裕綽々に呪霊を祓い、あっという間に終わらせてしまった。
繋がれた手は温かくて
眉を下げ、目尻を下げて笑う夏油くんを見て
私は胸がポカポカと温かくなる。
私の初恋は
優しい彼によって
思いがけない形で叶ってしまった。
あとがき
あっさりすぎかなー?と思ったが
おいおい番外編でちょこちょこ書きたい。
自信がない、気になってる、押しに弱いなら
ゴリ押しで傑は言いくるめそう。
君と過ごして愛を育んだ。
当たり前に隣にいることが幸せで
嘘つきな君も
意地悪な君も
弱い君も
優しい君も
正義感がある君も
強い君も
愛しくて
哀しかった。
16歳の春、君と出会い
16歳の夏、君に恋をし
16歳の秋、君達と仲間になれ
16歳の冬、君と通じあえた。
五条くんは、はじめの頃は弱いとよく口にしていた。呪術師に向いていないと言われたこともあったが、気が付けば面倒見のいいお兄さんのような立場になっていた。
面倒くさそうにしながらも、私の鍛練に付き合ってくれて、指導までしてくれる五条くんの教え方はなるほど、と思うことが多かった。
言葉がきついことも多々あるが、はっきりと私の弱いところ、ダメなところ、癖などを教えてくれて、頑張った暁には飲み物を奢ってくれたりと……出来の悪い妹のような生徒のような扱いだった。
硝子ちゃんは、実は悪い子で隠れて煙草を吸う不良だ。身体に悪いからと言いながら、硝子ちゃんの煙草を吸う姿が様になっていて、その姿を見るのが好きなのは内緒。
数少ない女子の同級生だから、買い物したり、雑誌をチェックしたり、お風呂に入ったり、一緒に行動することは多い。
たまに突拍子もない質問もされるが、私と正反対の硝子ちゃんは私の憧れだ。
夏油くんは……いつも優しかった。
私に強くなるきっかけをくれた。
例え、夏油くんが思っていなかった一言でも、あの時切羽詰まっていた私を認めてくれた一言は、大きな衝撃だった。
あの時夏油くんじゃなければ、私は心がバキバキに折れて死んでいたかもしれない。
追い詰められていた私を救ってくれたのは夏油くんなのだ。
だからこそ、硝子ちゃんとも仲良くなれたし、五条くんとも仲良くなれた。
強くて、優しくて、たまに意地悪。
子供扱いするときもあれば、女性として扱うこともあり、その度にドキドキさせられた。
弱い私は夏油くんや五条くんの足手まといになるのに、いつも庇ってくれる。
日に日に大きくなる想い。
その想いを必死に箱の奥にしまいこむ。
私はそんな暇も余裕も無いのだから。
「名前ってさ夏油のこと好きなの?」
硝子ちゃんが部屋で寛いでいるなか、ボソリと聞いてきた。
あまりの衝撃に私は持っていた携帯を落としてしまい、顔に熱が集まる。
「そ、そんなわかりやすい!?」
「あ、やっぱりそーなのか」
「夏油くんにも五条くんにもバレてる!?
そんなに私顔に態度に空気に出していた……?
気付いてないの私だけ……?」
「何となく思っただけ」
「………単純でごめんなさい」
「何で夏油なの?」
「うーん…一番苦しかった時に認めてくれたのが夏油くんだったから、かな…」
もしもあの時、出会ったのが五条くんだったら?
私は惚れたのだろうか……と考えるが、今でこそ仲良くなれたが、あの時に五条くんに認めて貰えたかと言えば、きっと駄目だったはずだ。
むしろ、心が折られていたかもしれない。
そう考えるとゾッとした。
硝子ちゃんだったら?と考えたが、仲良くはなれただろうが自信は付かなかったかもしれない。
先生や先輩だったら?
きっと、好きにはならなかった。
じゃあ、何で夏油くんだったのかと頭を悩ませる。
「うーん…」
「そんな悩ませる事聞いた?」
何で、と聞かれたら……私のことを認めてくれたから。頑張っている事を凄い同級生に認められて嬉しかった。
どうして好きなの?と聞かれたら……あの時、笑わずに向き合ってくれたのが夏油くんだったから。
自信が出たのも、歩み寄ってくれたのも、みんなと仲良くなる機会をくれたのも……全て夏油くんがいたから。
そう考えると、私は夏油くんがいなかったら何も出来ず消えていたのかもしれないと思うと、好きな気持ちよりも感謝の気持ちが芽生える。
「夏油くんって聖人かな…?」
「クズでしょ」
「優しいよ?」
「上部だけだよ」
「えーっと……」
「まぁ、泣かされたら言いなよ。
削ぎ落とすから」
何を?とは聞けなかった。
硝子ちゃんがいい笑顔だったから……聞くのが怖くなってしまった。
「名前」
「なぁに?夏油くん」
今日は珍しく、硝子ちゃんと五条くんペアと私と夏油くんペアの2チームに分かれている。
と、言ってもほとんど夏油くんが祓ってしまい、私は彼の隣にいるだけ。
「名前は誰か好きな人はいるのかい?」
「………最近、その手の話好きだね」
「そうかな?」
「好きな人はいるよ」
想いを伝えようとは思っていない。
私が彼を想う気持ちすら迷惑な気がするが、相手とどうこうなろうとは思っていない。
「初めて誰かを好きだなって漠然とした想いなの。今まではそんなこと気にしている余裕無かったからよくわからないんだ」
「………初恋、なのかい?」
「うん。物心ついたときには呪霊ばかりに目がいって、いかに避けて過ごすかばかり考えていたから」
恥ずかしい話、私はこれが初恋だ。
初恋は叶わないと決まっている。
漫画ではハッピーエンド。
私の生きる世界は、そんな都合良くはいかないことくらいわかっている。
「今は側に居られるだけでいいの。
気持ちを伝える気もないし、どうにかなりたいわけじゃないんだ」
「………」
「まず、高専で落ちこぼれの私は恋愛に気を回す余裕無いからさ」
へへへ、と笑いながら夏油くんを見上げればぐっと顔を寄せられる。
慣れない距離にぎょっとしてすぐに顔に熱が集まる。
「へぇ……じゃあ、その相手が君に告白したら?」
「無いよ!そんな奇跡!」
「私が君を好きだと言っても?」
突然の事に身体の動きが止まる。
目を見開き、近い距離の夏油くんを見上げれば、真っ直ぐにこちらを見ている。
きゅっと、狭まった喉から出た声はとても間抜けな声。
「………へっ?」
「名前が好きなのは私だろ?」
まだ呪霊だっているのに、今この瞬間だけは違う世界のようで……
夏油くんは身を屈んでいて、私の顔の位置と夏油くんの顔の位置が近い。
切れ長な目尻は柔らかく下がっている。
鼻が高いな、とか耳の拡張痛くないのかな?とか、唇薄いな……とかまじまじと夏油くんの顔を見るのは初めてかもしれない。
いつも顔を寄せられても恥ずかしくて見られないから、いろんな事に情報が追い付いていない頭は、夏油くんの顔を見る機会をくれたのだった。
「違ったかな?」
笑みを浮かべながら小首を傾げる夏油くん。
そして、一気に情報を理解した途端に、顔に熱が集まり、夏油くんの顔を見ていられずキョロキョロと周りを見る。
「ちが……わ、ない……けど!」
なぜ、このタイミングなのかと言いたいが、私に言う勇気はない。
くすくすと笑いながら屈んでいた身体を真っ直ぐにして、立つ夏油くん。
「名前が好きだよ。
頑張り屋なところも、弱いところも、
抜けているところも、自信がないところも
名前が嫌いな名前自身のことも含めて、私は君を愛おしく思ってるんだ」
慣れない褒め言葉に加え、私を好きだと告げる言葉を頭が理解すると今まで以上にぶわっと熱が上がり、赤くなる顔を隠そうと両手で顔を覆う前に、夏油くんに腕を捕まれ、唇に柔らかい感触と、視界いっぱいに広がる夏油くんの顔。
恥ずかしさと、嬉しさと、情けない気持ちがごちゃまぜになり、泣きそうになってしまう私を見て、夏油くんは笑う。
「名前は私のことが好きなんだろう?」
「だって……だって、私……っ」
「私は名前のことが好きなんだ。
名前は望まないと言ったけど
私が我慢ならないんだよ」
恋愛に気をやるほど、私は強いわけでも、器用でもない。
「私……私、自信ない」
「?」
「夏油くんに釣り合うような子じゃないし
呪術師を頑張らなきゃいけないのに…
夏油くんばかり気にしてたら弱くなっちゃう」
「………名前」
「とっても、とっても嬉しいけど
私は1つの事をまず頑張らなきゃいけない不器用な奴だから……っ!!」
頭と腰を引き寄せられぎゅっと、抱き締められる。
「今まで通りでいいさ。
名前は術師になることを頑張るなら私が勝手に名前を甘やかすから」
「………それ、今までと変わらないよ?」
夏油くんには、充分甘やかされている。
それは、硝子ちゃんからも五条くんからも言われていて、他の人より気にかけてもらい、甘やかされているのは気付いてる。
「変わらないならいいだろう?
名前の邪魔にはならないし、名前が私のになるだけさ」
「……けど、私に夏油くんは勿体ないよ」
「私が名前がいいと言ってるのにかい?」
「………ズルいよ、夏油くん」
「そうさ。私はズルいんだよ」
くすり、と笑う彼にそろそろと手を伸ばせば、彼は黙って私の手を取って自分の頬に添える。
「夏油くん……すき、です」
「良くできました。
私と付き合ってくれるかい?」
「はいっ」
泣き出す私に夏油くんは笑って抱き締めてくれた。
弱い私は夏油くんの足手まといだし、守って貰うことが多い。
重荷になることはわかりきっていたから、この想いに蓋をしていた。
彼の隣に居るには私は不釣り合いだから。
けど……
抱き締められた温もりが嬉しくて
こんな私を好きだと言ってくれるのが嬉しくて
繋がれた手を離したくないと、我が儘な私が顔を出す。
この幸せを知った私は、簡単に離せない。
「………ごめんなさい。泣いて…まだ任務中なのに」
「可愛いからいーよ。
初めに言い出したのは私だからね」
「夏油くん……私のこと好きなんて、趣味悪い」
「傑」
「え?」
「名前で呼んでくれないのかい?」
「……無理、デス」
「今後の課題だね。さっさと任務終わらせてデートしようか」
「デッ!?」
いちいち反応する私に、くすくす笑う夏油くん。
片手を繋いだまま余裕綽々に呪霊を祓い、あっという間に終わらせてしまった。
繋がれた手は温かくて
眉を下げ、目尻を下げて笑う夏油くんを見て
私は胸がポカポカと温かくなる。
私の初恋は
優しい彼によって
思いがけない形で叶ってしまった。
あとがき
あっさりすぎかなー?と思ったが
おいおい番外編でちょこちょこ書きたい。
自信がない、気になってる、押しに弱いなら
ゴリ押しで傑は言いくるめそう。