最期まであなたと
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君に出会って恋をした。
君と過ごして愛を育んだ。
当たり前に隣にいることが幸せで
嘘つきな君も
意地悪な君も
弱い君も
優しい君も
正義感がある君も
強い君も
愛しくて
哀しかった。
16歳の春、君と出会い
16歳の夏、君に恋をした。
私は一人ぼっちだった。
両親がいても、友達がいても、私と同じ世界を見てくれる人はいない。
例えどんなに大切にしてくれていても、仲のいい人でも、私が見える世界を共有していない。
だからこそ、一人ぼっちだった。
寂しくて、孤独で…
父の知り合いに出会えたときはとても嬉しかった。そして、同じ世界を共有できる仲間が、友がいるこの学校に来ることに不安もあったが、楽しみでもあった。
なのに……私はみんなと一緒に並べない。
例え同じ世界を見えていても
やはり私は一人ぼっちで寂しかった。
「名前?」
今まで、裏山に来る人なんていなかった。
一人で泣いてるとこを夏油くんに見られ、驚きはしたものの、泣いているところを見られたくなくて袖で目尻を擦った。
「泣いているのかい?」
「泣いてないよ!!ちょっと目にゴミが入っちゃって……
夏油くんは、こんなところにどうしたの?」
「名前が一人で此方に来るのが見えたから追いかけてきたんだよ」
必死に笑った。不細工な顔をしていたと思う。
ぐちゃぐちゃに歪み、涙で汚れた顔で笑うなんて、ただただ不細工だったはず。
なのに
彼は笑わないで頭を撫でてくれた。
「頑張っていること知っているよ。
だから、そんなに自分を追い込まなくていいよ」
「夏油……く、ん」
「名前が弱いと思うなら、私も手伝うよ。
一人よりも実戦出来て指導もしてあげられる」
単純な私は、この時彼に恋をした。
自分なりに頑張っていると思っていることを、他人が認めてくれたことが嬉しくて……
たとえ、その場凌ぎの慰めだったとしても、私の頑張りは天才に認められていた。と、なぜか安心したのだ。
無理をしていた。
諦めがつかなかった。
追い込んでいた。
死に近かった。
命を軽んじているような無理の仕方をし、自分に優しくできなかった私は、彼の一言で許された気持ちになったんだ。
「ふっ……うぅ…っ」
今まで抑え込んでいた涙が溢れだす。
いつも、必死に歯を食い縛りながら声を出さずに泣いていた。
泣く資格なんて無いんだと、泣くよりももっともっと頑張らなきゃいけないと自分を叱咤しながらポロポロ溢れる涙を拭いていた。
けど、今日は初めて
声を出して泣いた。
泣いている間、夏油くんはずっと頭を撫でてくれていた。
温かな、男の人のゴツゴツした手。
後にも先にも、異性の手を愛しいと思ったのは彼だけだ。
泣き止む頃には、目が腫れて見せられるような顔じゃなかったはずなのに、夏油くんは笑っていた。
恥ずかしくて、情けなかったが……どこか、スッキリとした気持ちになれたのも確かだった。
この日から私は努力はするけれど、無理することは止めた。
私は凡人だから、先行く彼らと並べない。
私は私を認めてあげながら、彼らとは違うペースでやっていこうと思えたら、色んな張りつめて必死になっていたことから解放されると、視野が広くなり、余裕が出来ていった。
夏油くんはちょくちょく私の鍛練に付き合ってくれるようになった。私の知らなかった癖を指摘したり、こうしたらいいとアドバイスをくれたため、以前より少しだけ強くなっている気がしたんだ。
「少し休憩しようか」
「うんっ」
木の根元に腰を降ろせば、何かが飛んできたのでキャッチすれば、スポーツドリンク。
夏油くんとは違う方向から飛んできたため、そちらを向けば硝子ちゃんが手を振っていた。
「お疲れ」
「硝子ちゃん……?何で…」
「頑張ってるから差し入れ」
「ありがたく貰うよ」
夏油くんは驚いていなかったが、私は硝子ちゃんの存在にただ驚く。
秘密の特訓をしていたわけじゃないが……隠れて特訓している自分のことを知られるのが少しだけ恥ずかしくなってしまう。
一人顔を覆い、目の前に硝子ちゃんがしゃがみこむ気配がした。
「ばーか」
「え……」
「夏油に相談する前に、せめて私くらいには言ってよ。
同性だし、同級生なのに」
「私と硝子ちゃんを同じに扱うなんて……恐れ多いよ」
「名前の中の私は神様か何かなの?」
「………私、自分に自信が無いの。
みんなはとっても凄いのに、凄く頑張らないと私は置いていかれちゃう」
「そんなことないさ」
「ずっと、呪霊が見える世界が嫌だった。
私には見えているのに、他の人には見えていなくて……一人ぼっちな気持ちだった。
高専に来たら……仲間が出来ると思ってた。
けど、私の軽い気持ちで来ていいところじゃなかった」
五条くんの言うとおり、私には抜き出た才能なんかない。
命を掛けて挑まなければ、死を常に覚悟していなきゃいけないくらい弱くて、誰も守れやしない。
才能が無いならさっさと辞めてしまえばいい。
けど、私はまた一人ぼっちになってしまう。
「ここなら、同じ世界を見えている人がいる。
辞めてまた一人ぼっちになるのが……怖いんだ」
「名前」
「ごめんね……みんなとは違う理由で。
私は弱いから、誰かを助けられる人間じゃない。
自分を守ることすらままならない……弱い人間なんだ」
「おーい」
「だからね、そんな私がみんなと同じだなんて……」
「聞けよ」
ビシッと、硝子ちゃんにデコピンされた。
痛くて涙目になり、硝子ちゃんをまともに見る。
硝子ちゃんは怒っていた。
何故かわからなくて、頭を傾げたらまたデコピンされそうになる。
「名前に自信が無いことはよーくわかった。
けど、勝手に一人で落ち込まないでくれない?」
「へ……」
「硝子も、私も
名前のことをきちんと同級生だと思っているのに、勝手に距離を置かれたら寂しいよ」
「え……」
「友達だと思ってたの私だけ?」
「………友達に、なりたいっ」
「友達だよ。だから頼れよ馬鹿」
「ちなみに、私も友達だからね?」
「げとうくん…っ」
ポロポロ泣き出した私に、2人は笑っていた。
この日
私は今まで欲しかった
唯一無二の友達を手にした。
恋をするより
強くなるより
私はずっと……
一人ぼっちで見る世界から抜け出したかったんだ。
あれから、硝子ちゃんと行動することが増えた。
寮だとお互いの部屋を行き来し、雑誌を見たり映画を見たり何をするわけでもなく部屋で携帯片手にゴロゴロしたり……たまに、2人で遊びに行ったり。
夏油くんも時間が合えば一緒に居るようになった。
五条くんとはまだ、距離を縮めるには心の準備というか……鋭利な刃物のような言葉に耐えられる自信がない。
教室で私の髪を雑誌を見ながら編み込む硝子ちゃん。そして、椅子をこちらに向けたまま携帯を弄る夏油くん。
「できた」
「本当?あ、鏡…」
「名前、そのままで」
「ん?」
カシャリ、と写真を撮る夏油くん。
その写真を見せてくれたら、可愛らしく編み込まれた髪型に、頬が緩む。
「硝子ちゃんすごい!!」
「またやるのは面倒だけどね」
「可愛いよ、名前」
「うっわ……」
「……夏油くん、手慣れてる」
「酷いねぇ。素直に思ったことを伝えたのに」
「髪型が可愛いって言ってくれないと」
「名前含め、髪型も可愛いよ」
「寄るな、夏油」
にこりと笑う夏油くんに、私はキャパオーバーで顔に一気に熱が上がる。
両手で顔を覆う私に対し、硝子ちゃんが冷めた表情で夏油くんから守るように私を抱く。
くすくすと、笑う夏油くんに遊ばれていると気付いても、慣れないことを言われると熱が冷めない。
そんな姿をじっと見つめるのは五条くん。
「おい、傑」
「どうかしたかい?」
「どーゆーことだよ」
「仲間外れが寂しいのかい?」
「オイ」
「クラスメイトと仲良くすることが
何か悪いことでも?」
にやにやとする夏油くんに対し、五条くんは面白くなさそうな顔で見ている。
ハラハラとしていれば、硝子ちゃんに腕を引かれて教室の外へ。
「巻き込まれないように行くよ」
「いいの?あれ…」
「ほっとけばいいよ」
ガッチャーンと派手な音が聞こえてきて、ビクリと体が跳ねる。
「うーわ、派手にやってるね」
「え?あ、アラート…」
「しーらね。名前、飲み物買いに行こ」
「う、うん?」
その後、2人は夜蛾先生に鉄拳制裁をされていた。
終わった頃にゆっくりと硝子ちゃんと戻れば2人はお互いボロボロだ。
「夏油くん、痛そうだね…」
「平気……いや、痛いから名前頼めるかい?」
「私より硝子ちゃんの方が…」
「名前にお願いしているんだけど、嫌かい?」
「い……や、じゃない…デス」
お願いするよ、と近寄ってくる夏油くん。
最近、こんな風に距離を詰められるためどうしていいかわからなくなる。
けど、お役に立てるならばと反転術式を使えば嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれる。
それが嬉しくて、私も表情を緩ませる。
「ありがとう、名前」
「こちらこそ」
「そこはどういたしまして、じゃないのかい?」
「私を頼ってくれて、ありがとうってことで」
「これからも頼むよ」
「出来れば怪我しないで欲しいな」
「そうだね」
楽しそうに穏やかに笑っている2人に、五条が硝子に近寄る。
「硝子、治してよ」
「やーだね。自業自得だろ」
「あれ何?」
「何が?」
「………あいつ、あんな風に笑うんだな」
「五条が虐めなければビクビクしないよ」
「虐めてねーよ」
「名前、五条も痛いから治して欲しいってさ」
「えっ……」
「………嫌なのかよ」
「い、嫌じゃないけど……あの、硝子ちゃんは…?」
「断られた」
「………私でいいの?」
「傑は治せて俺は無理って?」
「違っ」
しゅんと顔をうつ向く名前に、五条は
どすっ、どすっと、2撃真横からどつかれる。
「名前、悟の言うことなんか気にしなくていいよ」
「金請求する勢いでいなよ」
「お前ら………っ」
「あの……私でごめんね?今やるから」
あっという間に傷を治したが、五条くんはじっと私を見ているだけ。
もしかしてきちんと出来なかったのかと、オロオロし始めた私に、大きく舌打ちが聞こえた。
「オロオロすんな」
「は、はい!!」
「俺が虐めてるみたいだろ。ビクビクもすんな」
「はい!!」
「虐めてるだろ」
「威圧感怖いぞー」
「……治してくれてどーも」
「痛くない?平気?」
「大丈夫」
「そっか………良かったぁ」
ちゃんと出来ていたと、安心した私に
五条くんはまじまじと顔を見てくるので
驚いて距離を開ければ、目の前に夏油くんが入ってくれたのでほっとする。
「悟、見すぎだよ」
「なんだよ」
「名前、よく出来ました」
「硝子ちゃん!!ありがとう」
少しずつ、少しずつだが
以前よりは前に進めている気がした。
あとがき
自信がない、頼りない、儚い系の夢主。
うちのサイトでは強い子ばっかりだから
珍しいタイプで書いてます。
君と過ごして愛を育んだ。
当たり前に隣にいることが幸せで
嘘つきな君も
意地悪な君も
弱い君も
優しい君も
正義感がある君も
強い君も
愛しくて
哀しかった。
16歳の春、君と出会い
16歳の夏、君に恋をした。
私は一人ぼっちだった。
両親がいても、友達がいても、私と同じ世界を見てくれる人はいない。
例えどんなに大切にしてくれていても、仲のいい人でも、私が見える世界を共有していない。
だからこそ、一人ぼっちだった。
寂しくて、孤独で…
父の知り合いに出会えたときはとても嬉しかった。そして、同じ世界を共有できる仲間が、友がいるこの学校に来ることに不安もあったが、楽しみでもあった。
なのに……私はみんなと一緒に並べない。
例え同じ世界を見えていても
やはり私は一人ぼっちで寂しかった。
「名前?」
今まで、裏山に来る人なんていなかった。
一人で泣いてるとこを夏油くんに見られ、驚きはしたものの、泣いているところを見られたくなくて袖で目尻を擦った。
「泣いているのかい?」
「泣いてないよ!!ちょっと目にゴミが入っちゃって……
夏油くんは、こんなところにどうしたの?」
「名前が一人で此方に来るのが見えたから追いかけてきたんだよ」
必死に笑った。不細工な顔をしていたと思う。
ぐちゃぐちゃに歪み、涙で汚れた顔で笑うなんて、ただただ不細工だったはず。
なのに
彼は笑わないで頭を撫でてくれた。
「頑張っていること知っているよ。
だから、そんなに自分を追い込まなくていいよ」
「夏油……く、ん」
「名前が弱いと思うなら、私も手伝うよ。
一人よりも実戦出来て指導もしてあげられる」
単純な私は、この時彼に恋をした。
自分なりに頑張っていると思っていることを、他人が認めてくれたことが嬉しくて……
たとえ、その場凌ぎの慰めだったとしても、私の頑張りは天才に認められていた。と、なぜか安心したのだ。
無理をしていた。
諦めがつかなかった。
追い込んでいた。
死に近かった。
命を軽んじているような無理の仕方をし、自分に優しくできなかった私は、彼の一言で許された気持ちになったんだ。
「ふっ……うぅ…っ」
今まで抑え込んでいた涙が溢れだす。
いつも、必死に歯を食い縛りながら声を出さずに泣いていた。
泣く資格なんて無いんだと、泣くよりももっともっと頑張らなきゃいけないと自分を叱咤しながらポロポロ溢れる涙を拭いていた。
けど、今日は初めて
声を出して泣いた。
泣いている間、夏油くんはずっと頭を撫でてくれていた。
温かな、男の人のゴツゴツした手。
後にも先にも、異性の手を愛しいと思ったのは彼だけだ。
泣き止む頃には、目が腫れて見せられるような顔じゃなかったはずなのに、夏油くんは笑っていた。
恥ずかしくて、情けなかったが……どこか、スッキリとした気持ちになれたのも確かだった。
この日から私は努力はするけれど、無理することは止めた。
私は凡人だから、先行く彼らと並べない。
私は私を認めてあげながら、彼らとは違うペースでやっていこうと思えたら、色んな張りつめて必死になっていたことから解放されると、視野が広くなり、余裕が出来ていった。
夏油くんはちょくちょく私の鍛練に付き合ってくれるようになった。私の知らなかった癖を指摘したり、こうしたらいいとアドバイスをくれたため、以前より少しだけ強くなっている気がしたんだ。
「少し休憩しようか」
「うんっ」
木の根元に腰を降ろせば、何かが飛んできたのでキャッチすれば、スポーツドリンク。
夏油くんとは違う方向から飛んできたため、そちらを向けば硝子ちゃんが手を振っていた。
「お疲れ」
「硝子ちゃん……?何で…」
「頑張ってるから差し入れ」
「ありがたく貰うよ」
夏油くんは驚いていなかったが、私は硝子ちゃんの存在にただ驚く。
秘密の特訓をしていたわけじゃないが……隠れて特訓している自分のことを知られるのが少しだけ恥ずかしくなってしまう。
一人顔を覆い、目の前に硝子ちゃんがしゃがみこむ気配がした。
「ばーか」
「え……」
「夏油に相談する前に、せめて私くらいには言ってよ。
同性だし、同級生なのに」
「私と硝子ちゃんを同じに扱うなんて……恐れ多いよ」
「名前の中の私は神様か何かなの?」
「………私、自分に自信が無いの。
みんなはとっても凄いのに、凄く頑張らないと私は置いていかれちゃう」
「そんなことないさ」
「ずっと、呪霊が見える世界が嫌だった。
私には見えているのに、他の人には見えていなくて……一人ぼっちな気持ちだった。
高専に来たら……仲間が出来ると思ってた。
けど、私の軽い気持ちで来ていいところじゃなかった」
五条くんの言うとおり、私には抜き出た才能なんかない。
命を掛けて挑まなければ、死を常に覚悟していなきゃいけないくらい弱くて、誰も守れやしない。
才能が無いならさっさと辞めてしまえばいい。
けど、私はまた一人ぼっちになってしまう。
「ここなら、同じ世界を見えている人がいる。
辞めてまた一人ぼっちになるのが……怖いんだ」
「名前」
「ごめんね……みんなとは違う理由で。
私は弱いから、誰かを助けられる人間じゃない。
自分を守ることすらままならない……弱い人間なんだ」
「おーい」
「だからね、そんな私がみんなと同じだなんて……」
「聞けよ」
ビシッと、硝子ちゃんにデコピンされた。
痛くて涙目になり、硝子ちゃんをまともに見る。
硝子ちゃんは怒っていた。
何故かわからなくて、頭を傾げたらまたデコピンされそうになる。
「名前に自信が無いことはよーくわかった。
けど、勝手に一人で落ち込まないでくれない?」
「へ……」
「硝子も、私も
名前のことをきちんと同級生だと思っているのに、勝手に距離を置かれたら寂しいよ」
「え……」
「友達だと思ってたの私だけ?」
「………友達に、なりたいっ」
「友達だよ。だから頼れよ馬鹿」
「ちなみに、私も友達だからね?」
「げとうくん…っ」
ポロポロ泣き出した私に、2人は笑っていた。
この日
私は今まで欲しかった
唯一無二の友達を手にした。
恋をするより
強くなるより
私はずっと……
一人ぼっちで見る世界から抜け出したかったんだ。
あれから、硝子ちゃんと行動することが増えた。
寮だとお互いの部屋を行き来し、雑誌を見たり映画を見たり何をするわけでもなく部屋で携帯片手にゴロゴロしたり……たまに、2人で遊びに行ったり。
夏油くんも時間が合えば一緒に居るようになった。
五条くんとはまだ、距離を縮めるには心の準備というか……鋭利な刃物のような言葉に耐えられる自信がない。
教室で私の髪を雑誌を見ながら編み込む硝子ちゃん。そして、椅子をこちらに向けたまま携帯を弄る夏油くん。
「できた」
「本当?あ、鏡…」
「名前、そのままで」
「ん?」
カシャリ、と写真を撮る夏油くん。
その写真を見せてくれたら、可愛らしく編み込まれた髪型に、頬が緩む。
「硝子ちゃんすごい!!」
「またやるのは面倒だけどね」
「可愛いよ、名前」
「うっわ……」
「……夏油くん、手慣れてる」
「酷いねぇ。素直に思ったことを伝えたのに」
「髪型が可愛いって言ってくれないと」
「名前含め、髪型も可愛いよ」
「寄るな、夏油」
にこりと笑う夏油くんに、私はキャパオーバーで顔に一気に熱が上がる。
両手で顔を覆う私に対し、硝子ちゃんが冷めた表情で夏油くんから守るように私を抱く。
くすくすと、笑う夏油くんに遊ばれていると気付いても、慣れないことを言われると熱が冷めない。
そんな姿をじっと見つめるのは五条くん。
「おい、傑」
「どうかしたかい?」
「どーゆーことだよ」
「仲間外れが寂しいのかい?」
「オイ」
「クラスメイトと仲良くすることが
何か悪いことでも?」
にやにやとする夏油くんに対し、五条くんは面白くなさそうな顔で見ている。
ハラハラとしていれば、硝子ちゃんに腕を引かれて教室の外へ。
「巻き込まれないように行くよ」
「いいの?あれ…」
「ほっとけばいいよ」
ガッチャーンと派手な音が聞こえてきて、ビクリと体が跳ねる。
「うーわ、派手にやってるね」
「え?あ、アラート…」
「しーらね。名前、飲み物買いに行こ」
「う、うん?」
その後、2人は夜蛾先生に鉄拳制裁をされていた。
終わった頃にゆっくりと硝子ちゃんと戻れば2人はお互いボロボロだ。
「夏油くん、痛そうだね…」
「平気……いや、痛いから名前頼めるかい?」
「私より硝子ちゃんの方が…」
「名前にお願いしているんだけど、嫌かい?」
「い……や、じゃない…デス」
お願いするよ、と近寄ってくる夏油くん。
最近、こんな風に距離を詰められるためどうしていいかわからなくなる。
けど、お役に立てるならばと反転術式を使えば嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれる。
それが嬉しくて、私も表情を緩ませる。
「ありがとう、名前」
「こちらこそ」
「そこはどういたしまして、じゃないのかい?」
「私を頼ってくれて、ありがとうってことで」
「これからも頼むよ」
「出来れば怪我しないで欲しいな」
「そうだね」
楽しそうに穏やかに笑っている2人に、五条が硝子に近寄る。
「硝子、治してよ」
「やーだね。自業自得だろ」
「あれ何?」
「何が?」
「………あいつ、あんな風に笑うんだな」
「五条が虐めなければビクビクしないよ」
「虐めてねーよ」
「名前、五条も痛いから治して欲しいってさ」
「えっ……」
「………嫌なのかよ」
「い、嫌じゃないけど……あの、硝子ちゃんは…?」
「断られた」
「………私でいいの?」
「傑は治せて俺は無理って?」
「違っ」
しゅんと顔をうつ向く名前に、五条は
どすっ、どすっと、2撃真横からどつかれる。
「名前、悟の言うことなんか気にしなくていいよ」
「金請求する勢いでいなよ」
「お前ら………っ」
「あの……私でごめんね?今やるから」
あっという間に傷を治したが、五条くんはじっと私を見ているだけ。
もしかしてきちんと出来なかったのかと、オロオロし始めた私に、大きく舌打ちが聞こえた。
「オロオロすんな」
「は、はい!!」
「俺が虐めてるみたいだろ。ビクビクもすんな」
「はい!!」
「虐めてるだろ」
「威圧感怖いぞー」
「……治してくれてどーも」
「痛くない?平気?」
「大丈夫」
「そっか………良かったぁ」
ちゃんと出来ていたと、安心した私に
五条くんはまじまじと顔を見てくるので
驚いて距離を開ければ、目の前に夏油くんが入ってくれたのでほっとする。
「悟、見すぎだよ」
「なんだよ」
「名前、よく出来ました」
「硝子ちゃん!!ありがとう」
少しずつ、少しずつだが
以前よりは前に進めている気がした。
あとがき
自信がない、頼りない、儚い系の夢主。
うちのサイトでは強い子ばっかりだから
珍しいタイプで書いてます。