桜花歳時記
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醤油か出汁か
鶴町伏木蔵は、ぐる、と鍋をかきまぜた。
「遥先輩、はい大根」
「ありがとう、伏木蔵。…それにしても朝晩は随分と涼しくなったな」
「昼は暑いのに、太陽が沈むととたんに風が冷たくなりますねえ」
「この時期に、風邪ひくなんて伊作も迂闊すぎるな。保健委員のくせに毎年毎年おかしな時期に風邪を引くんだから――…」
「早く暖かいうどん作って持って行ってあげましょうね」
「ああ――……ん?」
「遥先輩?」
「そこっ!!」
「おーっと、あっぶねー、包丁ぶん投げんなヨ。よお! 達者かー?」
「与四郎!?」
「風魔の錫高野与四郎さん…。すんごくよく顔を見る気がするんですけど…暇なんですか…?」
「わりーけど、水くんねーかナ?」
「お暇なんですね…」
「まったく…この忙しいのに何をフラフラと…」
「あ、これ、おめーへつつっこ。納豆だ。おらんちのほーで作った奴な」
※おらんちの方=常陸国・錫高野(捏造)
「遠いところはるばるお疲れ様。お茶淹れるから座って」
「遥先輩、わかりやすすぎますー…」
「外、ずいぶん風もでてきたけんど……、このあたりも風がつえーんだな。……まあ、おらんちの方も秋口から風がつめてえけどよ」
「風……時には竹や松まで折れるという、噂の――…」
「やだなあ、遥先輩。風で竹が折れるわけないじゃないですかー。与四郎さん、オーバーなんですから…」
「………」
「………」
「………」
「まあ、そうだーナー」
「普通はな…」
「え、ほ、本当に?」
「いいか、伏木蔵…世の中には常識でははかれない不思議な事がたくさんあるんだ…」
「ほええ…。す、すごいスリルー…」
「にしてもよ、このうどん、味薄くねーか?」
「あ、醤油ばっかり足すな!」
「なんで汁に色ついてねーんさ」
「なんで坂東はうどんの汁が茶色いんだよ!」
「あ、食堂のおばちゃんのお話では、東は出汁が出づらいから味が濃いんですって」
「へえー、物知りだーナー」
「あ、こらっ、塩辛くなるだろう!」
「と、いうわけで伊作先輩、うどんをどうぞ。桶いっぱいにうどんができあがってしまいましたけど……」
「…そ、そお…」
(ぜ、全部食べられるかな…?)
長次「…………ちなみに戦国時代に醤油は一般的にはまだ普及してません。油ではなく、ひしおという形でした。悪しからず。…注釈は中在家長次でした」
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