桜花歳時記
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猪名寺乱太郎は、現在かくれんぼの真っ最中だった。
校庭の茂みの中で、身を低くしていた。
クラスメイトの何人かも、どこかに隠れているだろう。
「おおハマチ、町に買いそわそわ…」
乱太郎はそう口にすると、
「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカだよ…」
傍らから、声がした。
「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ?」
「あれ、遥先輩こんにちは!」
「こんにちは、乱太郎、三治郎。こんな茂みの中で何をしてるんだ? かくれんぼか?」
「はい、そうなんです」
「一年は組は仲が良いな」
「いやあ」
そういえば、と乱太郎は首をかしげる。
「遥先輩、これってどんな意味なんですか?」
「これは密教の真言だな。摩利支天という仏様の呪文だ」
「まり…? …真言?」
「摩利支天だよ」
「乱太郎、真言って言うのは、真実の言葉。力ある言葉。…言魂というものだよ。神様の加護を受けたいときに唱える呪文のこと」
「へー、そうなんだ」
「うん、さすがは三治郎。山伏の修行しているだけあるな」
「えへへ。でも、簡単な真言ならともかく、長い呪文となると、口が回らなくて。いまだに雪彦大権現の呪文は唱えられないし…」
「遥先輩、摩利支天ってどんな神様なんですか?」
「うん。我々忍者は神にも仏にもすがれない。しかし、我々を守護する天が一柱、存在する。それがこの摩利支天だ」
「へえ…。じゃあ、その神様の呪文なんですね?」
「斬れもせず、焼く事も出来ない陽炎の化身だと言われている。人、天を見ず、天、良く人を見る。捕えることかなわず、失道荒野の中にあっても、決して人を見捨てることはない。これはもともと女性神らしい』
「山田先生の授業で、身を穏す時の呪文だって教わったんですけど…」
「本当に効くんですか?」
「宗教の話をすると長くなるが…、武将や忍者には信仰する者が多い。人間気の持ちようは大事だな」
「そんなもんですか?」
「そう。そんなものだ。しかし、神頼みだけして自ら努力しない者を天が助けるとは思えない! 天命にすがるのは、人力を尽くしてからだ!」
「「はいっ!」」
「ところで二人とも、かくれんぼだったんじゃないのか? 鬼は誰だ?」
「はい、今の鬼は三…………じろう……」
「乱太郎、みぃーつけた!」
2011・2月拍手(加筆修正あり)
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