桜花歳時記
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恋でもひとつ
「げっ、遥先輩っ!」
「上ノ島一平?」
「う、ううう、動かないでくださいよ、絶対動かないでくださいよ!!」
「…………………上ノ島、委員会中か?」
「はいいい…」
「…手には虫取り網と壷、制服は泥だらけで髪も乱れている。今現在の、生物委員会の活動内容だが、この条件から推測するに…いや、もとより推測するにも及ばないが………」
「は、い…」
「お前たち、今度は何を逃がした」
「き、聞かないでください、聞かない方が良いと思います」
「そうか、では私の背中についた物体Xを早く回収してくれ」
「は、はい! あ…っ」
「上ノ島?」
「あ、いえ、なんでも。先輩、もう動いても大丈夫ですよ」
「もしかして、刺されたのか?」
「あ、いえ…」
「見せなさい、隠さないで」
「わ、ちょ、先輩…!」
「毒虫の治療は、患部から毒が回らないように体幹に近い方を押さえ、吸い出す……」
「大丈夫です、そんなに大した毒じゃ――…って先輩!!?」
「…ん?」
「先輩、あの…っ、…、……っ!」
「上之島、井戸に行こう。毒は吸い出したけど、お前の傷と私の口をすすがないと…」
「…………」
「どうしたの?」
「…な、なんでも…、ありません…」
「あ、一平、毒虫見つかった~…? …って、あれ? 一平、と遥先輩~…」
「あれ、遥先輩、こんにちは!」
「もしかして六年生のくせに刺されたんですか、先輩ったら…」
「私じゃなくて…」
「先輩、ありがとうございました」
「うん、またな」
「はい」
「一平ったら、大丈夫~…?」
「みんな…、女の子って凄いね…」
「うん?」
「暖かくて柔らかくて、なんだか感動した…」
「え、一平?」
「ど、どうしたんだ、一体?」
「あと、なんか、ムズムズしたよ…!」
「へ~…?」
「孫次郎、どうしよう…。指先がなんだかじんわり熱があるみたいだ…!」
「え、いや、どうって~…」
困ったように背後の一年は組の二人を見ると、虎若は困ったように笑って、
「そりゃ、刺されたからだろう」
とだけ、返す。
「でも、なんだかドキドキしてるし!」
三治郎は「いや、長屋からここまでダッシュしたらそれは動悸もするよね」といつもと変わらない笑顔で返す。
「ほら、先輩って『夜叉』とか『阿修羅』とか『番長』とか言われてたから、絶対に迷惑かけたらスマキにされるかナマスに斬られるかと思ってたのに…っ! 思ったより優しかった…!」
「ひ、ひどい言われよう…」
「それは、思ってたより優しいだろうね~…」
「一平、君はあの先輩の事なんだと思ってたんだ…って突っ込んだら駄目かな?」
「どうしよう! これって恋かな!?」
「「「絶対に違う」」」
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