桜花歳時記
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あとはきみのぶん
「すみません、危ないところをありがとうございました。危うく刀を奪われるところでした」
「いやいや、このあたりは人気がないから気をつけないと追いはぎが――…」
「…、………、その声」
「え」
「え!」
「うわ!!」
「あ、あなた、タソガレドキの!」
「君は確か学園の…、伏木蔵くんと一緒にいた…」
「しょせんそのていど、さん!」
「しょせんそんなもんだ!! …え、あ、ちが…もとい! 諸泉尊奈門だ!!」
「…どっちでもかまいませんが」
「名前を正しく覚えられないなど、忍者としてあるまじきことだろ!」
「…失礼いたしました。お約束かと思って。それで、今日は何のご用です」
「別に、君に用などないよ」
「学園にほど近いこの峠で出会ったと言う事は、また組頭の雑渡昆奈門がいなくなったとか、そんなところでしょうか?」
「憎たらしいくらい、その通りだ…。というか、推理にもならないか…」
「雑渡昆奈門は学園にはいませんよ」
「なんでそう言い切れる?」
「保健委員会が今日は山で薬草摘みにいってますから、いるとすれば山の方を探したらいかがです?」
「…敵からの情報を鵜呑みになどできるもんか」
「尊奈門さん、先日はご挨拶できなかったのですが、私は学級委員長委員会の最上級生です」
「ん?」
「一年生の庄左ヱ門と彦四郎を知っていますでしょう?」
「学級委員長…、あ、庄左ヱ門ってあの、眉毛の太い、小生意気な感じの――…。彦四郎っていうのは、つかまって泣いてた彼かな?」
「その節は、助けていただいて感謝いたします。後輩がお世話になったので、この情報は確かです」
「…そうか」
「ただ、鉢屋も学級委員長委員会の後輩ですので」
「…鉢屋ってあの変装してる五年生の小生意気そうな」
「次は容赦しません」
「おい、追いはぎから助けてやったのに、それはないんじゃないか?」
「頼んでないです」
「まあ、そうなんだが…」
「ではこれで失礼いたします」
「あ、なあ」
「まだ何か?」
「次は容赦しないって、まだ次は来てないんだよな?」
「はあ?」
「そこの茶店で一休みしないか? ついでに組頭と保健委員会に差し入れを買おうと思うんだが、あの店では何が旨いか教えてくれないだろうか?」
「敵のあなたとお茶なんて――」
「その敵が保健委員会の差し入れを持っていくと言っているんだ、警戒しなくていいのか?」
「敵からの差し入れなんて忍たまが食べるわけ――………。…ほ、保健委員会のヤツらは警戒せず食べそうですね」
「…た、確かに」
「保健委員会にそんな真似すれば、あなたの組頭…雑渡昆奈門が許すとは思えませんが…。一応、監視させていただきます」
「奢ってあげるよ、なにがいい?」
「結構です…あ、あのお店はお団子が美味しいです。お土産ならばそれに」
「ああ、ありがとう。ちなみにさっき助けたのは『貸し』に勘定しておくから」
「はあ!?」
「だから、次も組頭を見逃してくれ」
「ちょ…! そんな事できるわけ――、尊奈門さん!!」
「すみません、お団子二人前ー!それと土産に七人前ー!」
――あそこはきっと、やっと見つけたあの人の安らげる場所なのだから。
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