短編(現パロ)
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「庄左ヱ門」
「うん?」
本を読んでいるときは声をかけても反応しない庄左ヱ門が、今日もこちらを振り返らずに返事をする。
「なんだい?」
「あのね、ちょっと聞きたいんだけど」
「うん」
「わざわざ、私が遊びに来てるときに、勉強する意味あるの?」
ベッドに腰かけていた私は、テーブルに参考書を広げる庄左ヱ門を眺めてため息をついた。
そんな私に彼は「なにをいうのかと思えば」と笑う。
「意味ならあるけど」
「なに?」
「宿題があってね。これを終わらせないとゆっくりできない。でも、少しでも長く名前と一緒にいたい。そう思ったから、遊びにおいでと言ったんだ。だから少し待ってて」
私の投げた枕が、ぼすんっ、と庄左ヱ門の顔にクリーンヒットする。
どんな理不尽だ。
「暴力に訴えるのは感心しないよ、名前」
「宿題なんて夜にしなよ。友達が遊びに来てるっていうのに…。まったくなんで私の幼馴染みはこんな奴なんだろう」
「不満かい?」
「すごく」
そう笑ってから、私はベッドへ寝転ぶ。
友達に借りた漫画をバッグから出して広げた。
「庄ちゃん、えっちな本とか持ってる?」
「無いよ」
「ふうん…」
「なんでがっかりしてるんだ?」
「別にー。団蔵とかに借りてるんだと思っただけ」
「………」
自分の本は持ってない。そういうことだろう。
さすがに付き合いが長いだけのことはあるでしょう。私が得意気にしていると、
「甘いよ、名前」
と、庄左ヱ門は笑う。
「本はないけど、データはあるってことだよ」
「庄左ヱ門、法律的なものは大丈夫でしょうか…」
「もちろんだよ。きちんと合法的なレベルのものだよ。――ジャンルは少し狭義の世界だけれども」
狭義のっていうか、本格的なっていうか…。マニアックということだろうか。
いったい、この幼馴染みのどこが良いのか、彼は学級委員としてクラスの面々に絶大な支持を得ている。
――…私にしてみれば、ただの変人。
「そういえば」
なんでだろう、人気はあるのに庄左ヱ門は彼女いない歴イコール年齢だ。
告白もされているようだけど、誰かと付き合うとかそういうことは無い。
好きな人でもいるのだろうか。
「庄ちゃん、好きな人いないの?」
「………」
「庄左ヱ門?」
「………」
「ねえ、人が聞いてるんだから、返事したら?」
「…いや、ごめん。まさか名前からそんなこと聞かれると思っていなかったから、驚いた」
「なにそれ。私だって人並みに恋愛に興味もったりしますよ。お年頃だからね!」
「…ふうん。でもね、ただの興味本位ならそういうことを聞かない方が良いと思うよ。少なくとも、ぼくは誰が好きだとか嫌いだとかいう話題を、こんなふうに軽い調子で聞いてほしくない」
「あ、ごめん」
「真剣に気になったら、言ってくれ。いつでも教えてあげるから」
庄左ヱ門はなんだかんだで優しいんだろうな。
昔から、不愉快な質問にも、そうやって誠意をみせて応えてくれるし。
そう思った。
変人なんて言ってごめん。
いや、まあ、変わった人だとは思うんだけどさ。
「気になるかい?」
「え、ううん、大丈夫」
「そうなのか?」
ぶんぶん手を振った。
軽々しく聞いちゃって、本当に申し訳ない。
「いいよ、気にならないから!ごめんね!」
「気にならないんだな…」
少し、気にしたら良いのに。
庄左ヱ門はそう呟いてから、また宿題に向かったのだった。
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