短編
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一年は組は、基本的に火薬の使用を禁止されている。
なぜなら以前、硝煙蔵に焙烙火矢を放り込んだからだ。
それでも、佐武虎若は火縄銃の使用許可が出る時があるらしい。条件は、監修できる者が近くにいること。
「すみません、名前先輩」
「いいよ、ちょうど手が空いていたから」
学園の近くの田畑は、すでに収穫を済ませてある。夏に田んぼとして使っていた湿地。そこに、この時期になると水鳥が集まってくる。
「もう、渡りの時期なんだな。そういえば、今年は学園長先生が『鳥鍋じゃ!』って騒いでないような」
夏場を過ぎると、必ず騒ぐ。
食道楽な学園長は、旬のものに敏感だ。食に楽しみを見つけるのは良い事だと、名前などは思っている。
「今年はちょっと前まで暑かったですからね」
「確かに……」
「父ちゃんが夏場は鳥は食べない方が良いって言ってました」
「虎若の父上って……、佐武鉄砲隊の組頭、佐武昌義殿?」
「はい。火縄銃で狩りをすることもあるんですけど、そこで言われた事があるんです。祇園祭の頃は虫が多いから、雁を食べてはならないと」
「え、佐武村は火縄銃で狩りをするのか?」
「はい、鍛錬を兼ねて。熟達した火縄の名手……、例えば山田先生は、蛍を相手に撃つらしいのですが、ぼくはまだまだ」
虎若はいつか蛍を撃つ気らしい。三年生くらいで出来るようになりそうで怖い。
「確かに狙撃の練習にはもってこいだが……、なんか雁に火縄とは贅沢だな」
「でも、夏場は撃ちません。とっても食べられないし」
夏場のこと、足も早い。
食の禁忌というものは、日本各地に色々な形で伝わっていた。
虎若が言ったのも、そのひとつである。
「それが懸命かもしれないな。虫のせいで命を落とした武将も多いよ。武家は鷹狩で野鳥をとって食べるから。口から虫を吐いて亡くなった者もいる」
「うげ……」
「だから、戦場では虫下しはきちんと用意した方が良い」
「なんきんの種でしたっけ?」
「そうそう、よく出来ました」
「先輩、ぼくこれでも生物委員会なんですから……」
「そうだったね」
「――秋ですし、この時期の獲物はあれです」
指を指す先には、雁の群れ。
「渡りの時期だな」
「見ててね、名前先輩。今夜は鳥鍋ですよ」
「それは楽しみだ。ところで13の顔はやめてくれるかな、先輩後ろに立てなくなるから」
「監修なんですから、後ろにいてください」
「じゃあ殺し屋みたいな劇画タッチやめて」
「これは立派な雁じゃ。虎若は腕が良いのう」
「――学園長先生、虎若に定期的に火縄銃を貸し出しているのはこういう……?」
「鳥鍋が食べたいだけでないぞ、生徒の自主性にまかせて――」
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