八重垣
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山を抜け、谷を翔ける。
一刻も早く。
「み、皆本せんぱいぃい! 速いです、速いです、速いですーっ!!」
「これくらいで泣き言を言うな! しっかり掴まっていろ!」
「だ、だってえぇ…」
委員会の一年生を背負い、皆本金吾は街道を翔ける。
「すっかり遅くなってしまった…! 他の委員会は、もうゴールしてしまったかもしれんぞ!」
「それは皆本先輩が途中で喧嘩売ってくる他の委員会をまともに相手するからですよぉ!」
「なあに言ってんだよ! 全力を持って敵と戦うのが漢だろっ!」
「そうだ、これしきの事で泣き言など――…」
体育委員会の一年生の鋭いツッコミは、横手からの声が笑い飛ばした。
それに金吾は同意し…「ん?」と体育委員会の六年生と一年生は横手を見る。
「か、会計委員会!?」
「うわわっ、加藤先輩っ!」
「よお、体育委員ども!」
「ど、どうもー…」
藪を抜けて並走していたのは、泣く子も黙る会計委員会の委員長、加藤団蔵だった。
会計委員会の一年を俵抱きで抱えている。
「まだ金吾たちもゴールしてなかったんだな! タイムオーバーは厠掃除だぜ!」
「それはお前もだろう、団蔵!!」
「負けないからなっ!」
「こっちの台詞だ!」
一年生の「ぎゃああああ…!!!」という悲鳴は、残念ながらも聞き入れられる事などなさそうだ。
「おい、金吾、あれ…」
「ん?」
学園近くの川縁だった。
一人の旅装束の女が数人の男たちに囲まれている。
ふふん、と加藤団蔵が口元をあげた。
「一年坊主ども」
「はい!?」
「このまま学園へ駆けろ! おれたちはちょっと野暮用が出来た!」
「え、えええ!?」
「か、加藤先輩、タイムオーバーは厠掃除ですよ!?」
「上等!」
腕まくりをし直すと、団蔵はカラッとそれは良い笑顔で笑う。
「おれを誰だと思ってる!! 一年の時から補習だ追試だ罰ゲームだと、幾度となくこなしてきた勉強に比べれば、厠掃除なんて苦痛でもなんでもない!!」
「団蔵、自慢になってないから…」
どん、という文字をバックに背負う団蔵。
ちょいちょい、と金吾は控え目にツッコミを入れた。
「ですよねー…」と異口同音に頷いた一年生を走らせて、六年生の二人は髪を翻す。
向かう先は、勿論――。
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