風魔の五年生男子の名前
はちまん
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恋文
「はーちざーえもーん」
「いねーよ!」
与一の声だ。
あいつ、またサボりにきやがった。
もう少しで課題が終わるんだから、外で待ってろ。
そうおれが机に向かっていると、
「………」
「………」
とんっ、とすぐ真裏に気配。
「居留守使う気ねーなら素直に戸っぱぐちさ出てくりゃいいのによ」
「うおお⁉ お前、意外と優秀だな!」
「神出鬼没は風魔のモットーよ。…なになに? こりゃ和歌か? そんな試験もやんのか、忍術学園」
「もうやった。即興で読まされるんだ。で、これは追試験。明日までに提出なんだよ。正直無理…」
「こーゆー心得があっと、恋文書くとき便利だナ。そーいや八左ヱ門好きな女は?」
「…………、いない」
「おらはおめーさんにどんだけ信用ならねーと思われてんだろーナ……」
「絶対面白がるだろ、教えるか!」
「まあいいけどよ。恋文で告白ってのはロマンなんじゃねーの? 筑波の方じゃ歌垣なんてのがあんだと。足柄でも昔はやってたみてーだけんど、今は、はー、やってねーわ」
「お前は恋文得意なのか?」
「いやあ、おらは全然。文才ねーもん」
「なあ、前々から思ったんだけどよ」
「んあ?」
「お前、モテないだろ」
「…………」
「…………」
「なぜあなたがそう思ったのか、原稿用紙三枚以内で的確に述べよ」
「動揺のあまりいまだかつてないほど流暢な標準語! やればできるじゃねえか!」
「うっせー! お前みてーな爽やか好青年きどってる奴にゃおらの悩みなんざ一生かけてもわかんねー! だいたいなあ、男は顔だとか金だとか生活力だとかせーてっから人間よりイノシシの方が多いんじゃんかよ風間谷は!」
「きどってねえよ! そして謝れ里に!」
「いや、わりー。おらとしたことがつい取り乱して……」
「いや、通常運転のお前だった」
「モテねーな。なんでだべ」
「人の話ぜんぜん聞かないからだろ……」
「付き合った女はいんだけどよ」
「え、いるのか」
「だいたいフラれんだわ。またたくまに」
「またたくまに…って、そんなわけないだろ。じゃあ聞くが、フラれるときってどうやってフラれるんだ?」
「そーだなー。んじゃ、問題。どーやっておらはふられたでしょーか! パターンその一『初めからそんなに好きじゃなかった』……」
「うお…、それは傷つく」
「パターンその二『実は先輩の方が好きだった』っ言われる」
「その先輩って、与四ろ……、まあいいや。その三は?」
「パターンその三『背が低いからやっぱ無理』…さて、どの理由でフラれるでしょーうかー」
「う、うーん……。どれもすっげー説得力あったが……その二?」
「ぶー、全部でしたー」
「全部言われてるのか!? 思った以上にコイツ可哀想だった!」
「この前はよ、授業だ試験だ鍛錬だで飛び回ってた後に、厩の世話ですっかり忘れてて…いや、頭の隅っこさーあったんだけどよ、んな感じでいさしかぶりに会ったら、『私のこと大事にしてくれているとは思えない』ってフラれた。死にたい」
「いや生きろ超生きろ!」
それにしても、とおれは脳内で先ほどのコイツのフラれた理由を整理する。
授業。
試験。
鍛錬。
厩の世話。
「なあ」
「んー?」
「おれも、当分好きな女の子に告白とかできねえかも…」
「そっか…、なんか、わりーな。よくわかんねーけど…そんな顔すんなよ?」
「ああ…」
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