風魔の五年生男子の名前
はちまん
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しみつかれ
「八左ヱもーんっ!」
すぱーんっ、とおれの名前を叫びつつ長屋の台所の勝手口から入ってきたのは、白装束の山岳行者――。
風魔流忍術学校の五年生である高取与一だった。
「いさしかぶりー!あー、あったけーなー。何焼いてんのさ」
「ちょ、返事してから開けろ!それで早く閉めろ!寒いだろ!」
今日はおれが夕食当番なのだ。
ただでさえ土間だというのに、湯気と火の気が外の風に持っていかれる。
「相変わらず風魔勢は進出鬼没だな」
「それが身上なんさ!」
拳をつきつけてくるから、手の甲でぽんっと打ってやった。
鍋から汁物を差し出してやると、高取与一はからっと笑って受け取る。
「おーわりー。おめーも食ったら?」
「いいよ、おれは」
「遠慮するな、そなたの米じゃ」
「じゃ?訛ってねえけど何のキャラ?」
「人に相伴をすすめるときはこう言えってうちのじーちゃんがせーてた。にしてもさすが八左ヱ門、いーツッコミだ!しょーがいーナ!」
「しょう…何?」
「良い性格だって意味だ!」
「いや、なんか悪口に聞こえるぜ」
「いーヤツだってせーてんのよ。今日は山野先生のお共なんさ。ついでにお歳暮渡しにきたんだからそう邪険にするもんじゃねーヨ! …んーやはり我が使用すると標準語はいささかむずかしいでござるのう」
「お前のそれは標準語じゃねえよ!! 用事がすんだら帰れ!」
「他のクラスメイトいねーの?」
「今日はみんな委員会なんだよ」
「ふーん、ほれ、八左ヱ門にもお歳暮。おらんちのほーの納豆」
「あ、ありがとな。へー、お歳暮って土地の特産品も納めるっていうからな。お前の実家の方じゃ納豆なんだ?」
「んー、そんでもねえな。でもじっちゃんのトコに送るお歳暮、さけにしたんだ」
「酒か…。あんまりこっちと変わんないんだな」
「そうそう。そんで、年末年始はそれで盛り上がんだわ。やっぱり味ちげーんだよナ」
「へー。やっぱり家庭の味があるんだろうな」
「あー、なんせ作んの大変だからヨ。頭一晩煮込むんだわ」
「ん?」
「あ、魚焼けたみてーだヨ、八左ヱ門――」
「ちょっと待て、酒の頭がなんだって?」
「魚の臭み抜くのにヨ、よがさら煮んだ」
「鮭な!酒じゃなくて!」
「あー、それそれ」
「わかんねーよ!標準語アクセントで喋ってくれよ!――で、鮭の頭煮込むって…一体何の料理だ…」
「食う?保存食だかんな」
「…なんだこれ」
「しみつかれ」
「…しみ…なんだって?」
「おらのじーちゃんちのほーでは毎年コレ作ってんだ。稲荷神社に備えんだと。陣中食ってヤツで――あー、おめーにもちっとんべーわけてやっから食ってみー」
ちょっと分けてやるから食べてみろ。
たぶんそんな風に言っている高取に手渡された料理(?)は――。
「待て。コレなんだ?」
「食ってみー。うめーから」
「…もう一度聞く。コレなんだ?」
「食えって」
「待て。勇気が…」
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