保健委員会の攻防
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「へ」
「いるよ。好きな女の子」
あっさりと言う伊作に、遥は正直拍子ぬけた。
「いるんだ」
「いる」
数馬は、嫌な予感がひしひしと背中を這う。
この展開、ひょっとして。
――蓬川先輩、とりあえず、もういいから!
そんな数馬の心の叫びは、床上まで届かない。
「僕にそんな人がいるのは、意外かい?」
「え、うん…そうでも、ない…かな」
優しくほほ笑む伊作に、遥は困ったように笑いかえす。
とにかく、好きな人というのが、例のくの一でないとも限らない。
淡い期待だったが、遥は聞いておかなければと身を乗り出す。
「えーっと、それは誰?」
――蓬川先輩、それ聞いちゃだめですよ!!
いつの間にか、数馬は、じっとりと嫌な汗をかく。もう、床下にたとえ竹の筒が埋めてあっても驚けない。
「遥だよ」
数馬の耳に、予想通りの音が訪れた。それは、いつものように穏やかで耳触りのよい委員会の先輩の声だった。
「あれ、御帰り、数ぶっ」
「藤内っ!!」
ごっすうっと飛び込んできた同室の親友に、浦風藤内は巻き込まれてゴロゴロゴロと床板に転がる。
「数馬っ!なんだよ!」
「どおしよお、藤内!!」
「………何だよ、その顔…」
「伊作先輩が」
「いつもの不運だろ」
「そうなんだけど、そうじゃなくて……」
藤内は、ボロボロと顔の穴という穴から出せるものを出している級友に、手ぬぐいをかぶせた。
部屋の隅で丸まっている彼に、大方、保健委員会で特製もっぱんでも作っていたのだろうな、と深くは考えず、藤内は予習に励むのだった。
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