保健委員会の攻防
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「数馬はなんだって?」
「うん、まあ、その、うん」
なんとも歯切れの悪い遥に、伊作は首をかしげる。
数馬と話は終わったのだろうか。
医務室に入ってきたはいいが、ちょこんと座って、じっと薬草の芯抜きを手伝うだけだ。
「まあ、いいけど…」
伊作の煮詰めている薬壺からは、強烈な匂いがした。
薬草の本を片手に薬を調合している彼は、いつもとは違って真剣である。
遥は、ひとつため息をつく。
「なあ、伊作」
「んー?」
話しかけてから、遥は考える。
はて、なんと聞き込みをするべきか。
「えーと…今日はいい天気だな」
「そうだね」
「夕飯何かな」
「お昼はお魚だったから、お肉かな」
「最近、留三郎とはどうだ」
「んー?別にどうってことはないけど」
久しぶりに子供と会話を試みる父親か…。
そんな風に、床下に潜んでいた数馬は頭を抱えた。
クモの巣を頭にかぶるが、とりあえずできるかぎり息をひそめる。
「どうしたの、遥?」
「うん、伊作、ちょっと聞きたいんだが」
数馬は、息をのむ。うまく、好みのタイプだけでも聞き出してくれれば、あの子に報告できる。
「うん、何?」
「お前、好きな女の子のタイプは!」
がんがらがしゃんっ
ああ、これは生薬の入った木箱でもひっくり返したな、と三反田の頭痛が増す。望んだ問いだったが、保健委員会の少ない予算でやり繰りしている薬草なのだから、あまり委員長を動揺させないでいただきたい。
「わああっ!」
「何をしてるんだ!」
盛大にこぼした薬草を、伊作と遥はわたわたしながらかき集める。
「なになに、なんで!? なんで急に!?」
「えっと、いや、別に……」
伊作は、遥に向き合った。
遥が薬を煎じているときに、珍しいな、と思っていると、伊作は先ほど以上に真摯な瞳で見つめてくる。
「君は、なんでもないのに僕にそんな話しないでしょ」
「………」
「何かあったの?」
あった、といえばあったが、これは伊作には相談できない問題だ。
遥は内心で舌打ちした。せめて、もう少し口のうまいヤツ――仙蔵か三郎あたりに相談して連れてくれば良かった。数馬を恨んでも、遅い。
「伊作、わかった、単刀直入に聞く!」
「うん」
数馬も、ぐぐっと息を詰める。
「好きな女の子、いるか?」
「いるよ」
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