保健委員会の攻防
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「ごめんね、呼び出したりして」
目の前にいるのは、くの一教室の三年生だ。
数馬は、普段から成績も素行も目立つ事はない。そんなわけで、ほとんどくの一たちとかかわる事が無い――わけではなかった。
若干の不運も手伝って、くの一たちからお菓子の差し入れだとか、化粧の練習だとか、罠の試運転だとか…何かと言えば捕まって、級友の浦風藤内とともにからかわれていた。
くの一たちからすれば、穏やかで優しい数馬は、絶好の獲物である以上に、安心して話しかけられる「良い人」だったが、数馬本人は、一向に災難だとしか思っていない。
今日も今日とて、食堂から戻る所を呼びとめられて、校庭の片隅で相談をされていた。
「いいけど、どうしたの?」
「あの…ね」
頬を染めてもじもじと先をきりだそうとしないくの一に、数馬は覚悟した。これが、噂に聞く「色仕掛け」ってやつだろうか。
くの一教室で、ときどき出されると噂の「忍たまを口説け」もしくは「デートに誘え」という非道な課題。
そんな風に、可愛いしぐさで話を切り出されたら、仕掛けられていると分かっても、そして課題だと知っていても、断れないかもしれないなあ、などと、頭の片隅で考えていた。
「あのね、わたし、好きな人がいてね…」
「うん」
「あのね…っ」
「それで、そのくの一の娘から、告白されて断れなかったんだな?」
遥は、呆れて数馬を見た。
お人よしにもほどがある。そう言おうとすると、数馬は沈痛な顔でかぶりを振る。
「僕に告白とか、そんなことなら良かったんですけど…」
「あ、違うのか」
「……その子、好きな人がいるそうで」
「私、ちょっと頭がいた」
「待ってください!」と、数馬には珍しく素晴らしい思い切りの良さで遥にしがみつく。
「だって、オチが読めたもの! それで、三反田、協力するって言っちゃったんだろ!」
「だって、だって! ほんとに真剣だったんですよ、彼女!」
「私は、色恋沙汰なんか分からないんだって!」
「でも、伊作先輩と仲いいですよね!!」
ぴたり、と遥は止まった。腰にしがみつく三反田を見下ろす。
「え、まさかその娘の好きな人って」
「――保健委員長の、善法寺伊作先輩です」
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