嵐が来た
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「何と、文のひとつも出してなかったのか、あやつは」
六年は組の二人が庵に訪れると、事の次第を知らされた学園長は、目を見開いた。自分自身には、毎月二通、必ず判を押したように届く手紙。同じように、友人にも宛てて書いていると思っていた。
「では、本当に帰ってきているのですか」
食満留三郎は、鋭い目つきをますます鋭くして、学園長に詰め寄った。
「あの遥のこと、てっきりお主らには手紙を書いていると思っていたが…」
学園長の言葉に、伊作は困ったように微笑んだ。留学することも、帰ってくることも、何一つ知らされていなかったのは悔しいが、それより、何より、遥に会いたい気持ちが先行する。
「遥は、やはり忍たま長屋ですか?」
「うむ。荷解きをしているのではないかな」
学園長が言うが早いか、伊作と留三郎は「失礼しました!」と駆け出した。
「あ、潮江文次郎くん、お帰りなさい」
文次郎が学園の門を潜ると、箒を片手に、パタパタと駆け寄ってくる忍び装束。事務、と書かれた事務の制服姿を見ると、不覚にもほっと和んでしまう。
「ただいま帰りました、小松田さん」
「ねえ、潮江くん、遥さんって知ってる?」
「は!?」
予期せぬ名前に、文次郎は思わずぽかんと口を開ける。
土産の団子を、取り落としそうになった。
「凄い綺麗なお嬢さんだけど、忍たまなんだね、彼女!」
「え、こ、小松田さん!」
小松田秀作と遥は、会った事はないはずだ。小松田秀作が事務に入ったのは彼女がここを離れた後だ。
「まさか、遥と会ったのか!?」
がくがく揺さぶり問うが、返事がない。気が付けば、小松田秀作はほえーっと目をまわして伸びている。
「ち、だらし無い」
舌打ちをひとつすると、文次郎はすぐさま事務員を放り出して、長屋へ走った。
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