生物委員長(代理)の見解
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「あっ!遥ちゃん!」
職員室から出て来たところを背後から呼ばれて、遥は眉をよせた。
こんな所で、「遥ちゃん」と叫ぶ猛者は、今やこの学園には一人だけだ。
「斎藤タカ丸……」
「あ、よく振り返らずに分かったねえ!」
分からないでか。
「斎藤、先輩を付けなさいと言ったはずだろ、先輩を!」
「あ、ごめんね、つい!」
えへへ、と笑うとタカ丸はどこから取り出したのか、クシとハサミをかまえている。
「で、遥ちゃん、いつ僕に髪の毛いじらせてくれるの?」
「一体、いつ、そんな話になったんだよ…」
しかも、やっぱり「遥ちゃん」に戻っている。おそらく、わざとやっているんだろうなと思って、遥は注意をやめた。
先輩ではあるが、同じ年である。極端に礼儀にもとるというわけでもない。
授業中の態度や、実践訓練の様子を見る限り、真剣に学んでいる様子。
学業に支障がなければ、まあいいか、と思いなおした。
もともと、名前で呼ばれるのを気にする性質ではない。
歩き出すと、タカ丸もそれについてきた。
「どこ行くの?」
「ご飯を食べに」
「あ、僕も一緒に食べていい?」
コイツの笑顔は毒気を抜かれるな…。
心中でそう苦笑して、遥は頷く。
ありがとう、と笑って、彼はハサミとクシを下げた。
「納豆だ」
「いいじゃないか、好きなんだ」
そう言って定食の納豆をかき交ぜる遥に、うれしそうに、タカ丸は笑う。
「良質なたんぱく質は髪にもいいんだよ」
「そ、そおだな…」
「卵とかお肉とか」
「薬食いか……」
薬食い、という。仏法には殺生を禁じる旨があるが、肉は滋養になるのは間違いない。
「納豆とか豆腐も髪の毛に良いよね」
入ってきた時は混んでいたので、あいにく隣同士の席しかなかったが、ちらほらと空席ができるようになってきた。
そう思っていると、紺色の制服姿の生徒たちが増えてくる。
五年生が、授業を終えたようだ。
「髪の毛から離れなさい」
「もっと、ちゃんと気にかければいいのにぃ」
そんな風に考えていれば、タカ丸はすっと手を伸ばして遥の髪の毛をひと束すくう。
「ほら、毛先が少し痛んでる」
間近に迫る彼に驚いて、遥は身を引く。
――こ、コイツできる…!
簡単に、間合いに入ってくるとは。遥の間合いに簡単に入り、髪をすくい、枝毛を見つけるまでわずか三秒。流れるような連続技だった。
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