迷い子たちの晩餐
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今、彼らは迷っていた。
「不破先輩、ここはどこでしょう」
「う、うーん………」
うっそうと繁る源初の樹海。昼なお暗く、獣の道さえここにはない。
なんで、こんなところに来てしまったのか。五年ろ組の不破雷蔵は、首を捻った。
そうは言っても、頭の隅では冷静だ。
原因など、分かっている。
自分の隣で「あれえー?」とキョロキョロしている萌黄色の、忍び装束。
三年ろ組の、神崎左門。
彼を形容する言葉は「決断力のある」「方向音痴」。
――どうして彼と、この僕が、組まされたのやら。
雷蔵は方向音痴でもなんでもない。温厚篤実、成績優秀。文武両道を地で行く彼だが、しかしそれ以上の弱点があった。
付和雷同。
つまりは、優柔不断で決断力がないのだ。
普段は、努力型の優等生。多少大雑把でおおらかだが、決して調子に乗ったりする事もない。後輩からの人望も厚い。
そんな彼だが、一度考え込み、深みに嵌まると、なかなか抜け出す事ができなかった。
忍者には、慎重さは必要だ。
しかし、うたぐり深くなればなるだけ、機会も逃がす。
迷い癖は『忍者の三病』のひとつとして戒められている。
しかし、忍者の病気であるとかそれ以前に、迷い癖は彼の持って生まれた性格だった。
――げんに、いま。
「先輩、ゴールはいったいどこに行ったんでしょう!」
「うーん…」
元気に尋ねる神崎左門に、雷蔵は首を捻った。
ゴールがどこかに行ったというよりも。
「これは、僕たち、迷子になったね」
「なんと! 五年生の大先輩ともあろう不破雷蔵先輩が迷子とは!」
「君もだよ! 君も!」
「僕はいつものことなので!」
「そ、そうだったね……。まずいな、実習どころではなくなってしまった」
遭難したら、まずは落ち着いて現状を把握しなくてはならない。
天候は問題ない。
荷物の中には兵糧丸もある。水も確保している。もともと、学園の生徒は、サバイバルの知識は一年生の時から叩き込まれている。
六年生になると、雪山に放り込まれることもあるらしいから、まだマシだ。
救助を待つにしても、自力で下山するにしても、とにかく落ち着かなくては。
頭では、そう冷静な自分がいる。
「では進退は疑うなかれ! こっちだーっ!」
「って、ちょ、待った左門、わああああ!?」
問題は押しに弱い自分と、学園一の決断力である彼、神崎左門との相性の悪さであった。
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