用具委員の災難
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「留三郎…」
「遥?」
「今、いいか?ちょっと、話があるんだけど…」
「ん?」
食満留三郎は、六年は組。用具委員長を務めている。
目つきは悪いが、人はいい。
喧嘩っ早いが、情には厚い。
伊作ほどの不運でもないが、地味にハズレくじを引く男でもある。
遥は、所在なさげに用具倉庫に入ってきて、留三郎の前に正座した。
「…あの、お願いがあって…」
「なんだよ」
「言いにくいんだが…」
愛想笑いをする遥に、嫌な予感が留三郎を支配する。
なにより、彼女は足の脛から下がびっしょりと濡れているというのに、手足や頭巾には、所々焦げた跡がある。
「なんで、お前、ここ濡れてるんだ」
「そ、それは」
「理由は」
「…言えない…」
「これだけ濡れてて、言えないって何だ」
「だって…」
「言わないなら、俺も頼みは聞けねえぞ?」
「留三郎、そんなこと言わないで…」
ばたーーーんっ
と、用具倉庫の扉が開いた。
二人が振り返れば、真っ赤になっている萌黄色の影。
「食満先輩、こんな所で何をしてるんですかあ!!!」
「作兵衛…?」
最上級生二人は、いきなり乱入してきた後輩、しかも怒っている様子の彼に、気おされて後ずさる。
「作兵衛……、ろ組の富松作兵衛だよね!?」
記憶の中の彼よりも、やはり背が高い。
目の前にいるのは、二年、いや、三年ろ組の富松作兵衛だった。気は強いが、面倒見の良い性格で、三年生のまとめ役ともいえる兄貴肌。
気風もいいし、まっすぐな気質。遥にとっては弟のように可愛い後輩の一人だった。「元気だったか」と遥が聞こうと彼を見れば、大きく目を見開いて、今にも泣きそうに顔をそむける。
「酷いっす。先輩たちは、仲は良くてもそれは、節度があるものだと思ってたし、三禁をやぶるものではないと思っていたのに!」
「ん?」と、留三郎を見ると、彼もわけがわからない、といった表情で見つめてくる。
「こんな、めったに誰も来ないけど、いつ誰が来てもおかしくないような倉庫の中で、やらしくちちくりあっているなんて! 食満先輩の趣味ですか!」
三年ろ組、富松作兵衛。
若干、思い込みが激しい。
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