天才トラパーと不運
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「伊作、傷薬はあるかな」
「え! 遥、どこか怪我したの!?」
思い切りボケる彼に、青すじを立てて、蓬川遥は、怒鳴り付けた。
「お前の傷につけるんだよ!」
「いたたたっ、遥、もう少し優しく…」
「うるさい、最高学年にもなって、何を情けない!」
ずるりと剥けている伊作の上腕に、消毒用のお酒をかけると、泣きそうな顔で振り向いた。その鼻を摘んでヒネると、伊作は「痛い痛いっ」と涙目になった。
「伊作は相変わらず、不運委員なんだな」
先日、学園の生徒名簿で見かけた役職欄には、保健委員長に『善法寺伊作』の文字。
「とうとう、六年間務めることになったわけか。まあ、大方の予想通りだけれども」
あはは、と伊作は愛想笑いする。
「そうなんだよね。僕、委員会決めの日は、毎年間が悪くて」
笑う伊作に、遥は「あー…」と濁す。
間が悪いのは、その日に限った事じゃないじゃないか、とは口に出さない。引き続き彼の制服をたくしあげて、背中の痣に軟膏を塗った。
「一年生の時はじゃんけんで負けたし、二年生の時は風邪で不在投票だったし、去年は推薦だった」
「今年は?」
「つい、志願しちゃったよ」
伊作らしい、と遥が笑うと、伊作は何やら頬を染める。褒めてない。決して褒めてないぞ。
「なあ、伊作、背中だけは怪我するんじゃないぞ」
「え、なんで?」
「背中の怪我は自分じゃ手当てできないじゃないか」
遥は、渋い顔をして痣だらけの背中を見る。
「私は、伊作ほど手当て、上手くないもの」
「遥……、遥、僕の心配してくれてる――」
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