一世一代の恋
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凛は佇んでいた。
胸元をギュッとその手で握りしめ唇を噛んで
でもその目を逸らす事なく父を見ていた。
銀時は黙ったまま着物の裾を手で破いて凛の傷口を覆った。
「凛。行きますよ、私たちがなすべきことは一つだけです。」
静かにそっと蓮に促されるように背中を押され
装置のメインボタンを停止するために父の亡骸の横を通り過ぎ
銀時の横を・・神威の横を通り過ぎる。
銀時と神威には視線を向けずただ上を見上げて
蓮に手を引かれて階段を上りメイン中枢部へと向かう。
システムの電源が落とされる。
蓮は階段で座り込んだ凛を支え
亡骸になった父のそばにもう一度佇んだ。
蓮が
「あとは私に任せてここを去りなさい。
まだウィルスはシステムの中で生きている。
私のやるべき事はまだ残っています。
しっかりしなさい。
彼らを地球に送り届けるまであなたの役目は終わってないんですよ。」
額通しを合わせ瞳を閉じそう言った。
銀時たちにラボを出るようにいい、凛をお願いしますよと
伝えたあともう一度優しく凛を抱き寄せた。
「あなたは大丈夫です。
今度会う日は・・また遥か遠いのかもしれません。
・・でも私たちはいつも一緒にいる。だって双子でしょう?
同じ遺伝子配列でただ一つ男女の配列が違うだけ
何もかも一緒です・・
だからお互いに何もかも手に取るようにわかる、
素直になりなさい、君だけが背負う咎ではないのですよ。」
凛もわかっていた・
そう、私たちはいつも一緒にいる
だから蓮は自然とここへきて、こうしているんだ.
「顔を上げて、・お父様は再生する・・だから
私たちは私たちの生き方で生きる・・それでいいんですよ。」
その言葉に
凛は息を大きく吸うと気を取り直すかのように歩き出した。
あの日。
青蓮香を発った神威たちはすぐに春雨に戻った。
知らなかった事実、夜兎である自分と彼女の関係
憎んで当然なのに憎むと言う感情を持たない凛。
去り際。。どうしても確かめたくて。
「なぜ助けた?」と、凛に神威は聞いた。
「・・・だって、絶滅危惧種だから・・守るのは私たちの役目」
・・・あっさりとそう言ってのけた
たったそれだけ?本当にそれだけか?と確かめたい気持ちを
押し殺して別れた。
思い出すように、凛の言葉を神威は口にする。
「人は愚かだから愛おしい、か・・
あの人の目に映るのは絶滅危惧種の俺でしかないのかな?
阿伏兎、どう思う?」
「さあ、元々あの種とは考え方が違いすぎる。
最も詳しくは知らないが、
あの種を絶滅に追い込んだのは遥か昔の夜兎だ。
それに、
敵ですらいとも簡単に助けてしまうような、
俺たちからすれば考えも及ばない種だ。
別嬪で強いのは確かだがな。
好戦的の夜兎とは真逆のところにいる。
別の意味の強さで言えばピカイチなんだがな・。」
「あの人の父親が言った言葉をあの人はどう捉えたんだろう。
わかんないよ、あの人が何も逆らわなければ俺たちは死んでた。
でも逆に守る事でああなった・・
だからって
恨んだり憎んだりそんな感情は一切見せてない
そう言う種なのかな」
「さあなぁ、あの同じ顔の兄きならホントの所
全部わかってるんだろうなあ。」
「うらやましいね、
あの人の全部わかってるってさ。
・・知れるものなら知りたいよ」
「団長、まじで惚れたな?」
「・・ああ、・・惚れたよ・・惚れてるよ、前から。」
「・・こりゃまいった、素直に認めちゃったよ」
「阿伏兎、俺は素直なときは素直なんだよ、知らなかったっけ?」
神威は視線を宇宙に戻して聞こえない小さな声で
彼女の名を呼んだ
恋こがれるってこんな感情なのかとあたらめて思う
そう、こんなに他人を思うことなどなかったから。
まだ・・神威の思いはまだ届かない。