5億の女
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銃弾を受け血にまみれ床に転がる蓮水を見た花梨の叫び声が響いた。
残党処理をしていた陸戦部隊が少年を確保し、蓮水の状態を見るも、首を横に振る。
兵の一人が「どうして殺さなかった」と蓮見に問いかけると
「まだ少年兵だ、・・それに処分は軍規に照らして行うべきが木蓮軍人ではないですか?
私たちは私情で殺してはいけない軍人は軍人でなければ・・」
そう言った。
蓮水は床に寝転んだまま花梨に手を伸ばした。
「花梨・・」
阿伏兎に支えられたまま蓮水の手を握った。
「蓮水!蓮水!」花梨は何度も名前をよんだ
虫の息の蓮水が必死に訴える。
「生きることを・・あき、らめないで・・ください。自由になることを怖がら、ないで。」
「いや、だ、いやだ、蓮水、一人にしないでよ、蓮水」
「そばに。いられて、・・よかった。きっと。誰より・・あなたをそばで支えてこられた
楽しい時も・・苦しい時も・・危険な時も・・・誰より近くにいた。私の誇りです。
それに・・もう、一人じゃ、ありませんよ、
ずっと前から・・この鳥籠から・・出してくれる人はそこにいたじゃありませんか・・
一緒に行きたいところですが・・私は無理なようです」
神威が苦しげにいう
「もう・・・蓮水は助からない」
「いやだ、蓮水がいなくなるなんて、いやだ、いやだよ」
その涙は蓮水を思う涙、
そして蓮水は監視しながら警護しながら世話を焼きながら花梨を支え続けてきたことを嫌というほどわかっているから、
失うことがとてつもなく怖く怯える涙
まるで子供が不安で泣くように花梨が泣いている
「だ、い・じょうぶ・・です・・よ。・・で・・しょう?」
ーー蓮水の目が神威を見た
もう光を失いつつある、蓮水の瞳が見たものは・・強く生きる力を漲らせた青年の蒼い瞳
”きっと。彼ならこの人を守り支えてくれる。自由を与えてくれる”そう確信させた
「どう・・か・・・。彼女・・を・・・を・・たの・・み・・ま、す」最後の言葉を残して蓮水は事切れた。
「蓮水?・・ねえ。起きて?蓮水?・・嫌だって言ってるでしょ?
蓮水!嫌だって!蓮水!起きてよ!起きてって!!」
必死で体を揺り起こす花梨の肩に手を伸ばし
「花梨・・もう死んでる」神威はそう言って蓮水から引き離した
それでも蓮水を泣き叫んで起こそうとする花梨を阿伏兎に預け、神威は蓮水の遺体に自分のマントをかけてやった。
ーーーー約束しよう、神威の無言の返事だった。
阿伏兎は花梨を抱き抱え第七師団に戻った、
後を追うように神威も戻ってきたが
花梨は泣き止んだものの毛布をかぶったまま身動ぎもせず、阿伏兎にしがみついたままだった。
「ずっとこれだよ。こんな嬢ちゃんは初めてだ」
「阿伏兎、悪いけどしばらくついててやって。俺は龍翔提督と話があるから」
そう言って通信室へ向かった
龍翔提督と第七師団団長としての話し合いが始まった
クーデターは成功し龍翔提督側の勝利により国家体制は大きく変化することになる
蓮水の死を知った龍翔提督は大きくため息をついた
「最後まで自分の役目を果たしたか。・・それで花梨は?」
神威は花梨がとても話せる状態ではないこと、蓮水の遺体回収ができていないことを伝えた。
龍翔提督がこちらで遺体回収をした後棺に納め両親に遺体を引き渡しも行うと返事をし一旦通信を切った。
蓮水の遺体が回収され棺に納められたのは翌日。
龍翔提督から呼び出され渡されたのはいざというとき花梨に渡して欲しいと常に預かっていた蓮水の遺書だった。
「蓮水は監視という役目をしなければならなかったが、
いつも彼女を支えるのは自分だと言っていた。
もし自分に何かあればこれを渡してほしいと預かっていた。
半年に一回、新しいものに書き換えて・・
その度に渡さずに済んでよかったなと話していたが・この日が来ようとは・・・」
そして神威は高杉とともに蓮水の棺に面会した。
すでに軍服に身を包み、血も綺麗に拭き上げられて彼は穏やかな顔で眠っていた。
自分に命じられた最後の命令に逆らい、花梨を守り命を落とした蓮水は裏切り者かもしれない
しかし龍翔提督はそんな蓮水を裏切り者としては扱わなかった
「私が命じたんだ、一番最初に。蓮水が軍に入った時なにがあっても花梨を守りぬけと
そして最後まで私の命令に従った。木蓮の政府体制が変わる、
上に立つものが変わると組織の再編成が行われる、
花梨は軍部から離れることになるだろう。自由にしてやってほしいと進言した蓮水との約束だ。
私が上に立つ時がきたら花梨が開発研究したものは暗号コード含め全て私が権限をもち
その代わり花梨をこの星に縛りつけないでくれと言った。
命をかけた約束だ。反故にするわけにはいかぬ、
しばらくはこの星の政治は混乱する、クーデターが起こったのだ仕方あるまい。
ーーーだからこそ。その間花梨をここに置くことは危険だ
私が完全に治めるまで預かっておいてくれんか?そのあとは花梨が選べば良い。
もう十分彼女は働いた。蓮水が願ったように彼女は生きれば良い
、この男の死を無駄にはさせん。」
ーーーそう言って棺に軍旗をかぶせた。
神威の記憶にある蓮水はいつも花梨の後を追い、世話を焼き、困ったように笑っているそんな男で
そして、いざとなれば命がけで花梨を守り戦い続けた男だ
“約束は守る“神威は蓮水の棺に触れたとき、心の中でもう一度そう言った。