5億の女
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神威も花梨の仕草一つで、今まで気づかなかった小さなことに気づいている
たった一度のキスでこうも変わるんだろうかと自問自答していた。
ホテルへ戻って蓮水の見舞いに行ってからまたくるよ、そう言って研究所を出た。
「今日はなかなか進まないようですね。ジェンガのお相手でもしましょうか?」
副官がそう言ってくれたけれど、ジェンガはなぜか蓮水としかしたくない
「今日はヘコまわしにする」そう言って将棋盤を引っ張り出し、
小姓二人も入れて四人ですることになった。
副官はヘコ回しってなんですか?と聞いてきたので回し将棋のことだと教えた。
学生時代にたまたまそばにいた同級生に混じってやったのは最初だった。
でもこれも人がいないとなかなかつまらないもので、二人ババ抜きみたいなものだ。
今日は四人だから結構楽しめた。
切り替えて、そろそろ始めようと、洗面所に顔を洗いに行った時・・
鏡に写る自分を見た。そっと唇に触れて、神威の優しいキスを思いだす。
“きっと気まぐれだったんだろう”そう思いながらも、どこか安心する優しいキスだった。
こんなふうにする相手などいなかったから・・今だって心が揺れるんだろう。
やがて神威もここを離れる、そしたらあの蓮水しかいない、でも蓮水だって移動があれば私のそばにはいない。
人と関わるときは楽しくて、満たされて・・
別れは辛くて前よりもっと寂しくなるから一人でいたのに。
みんな通り過ぎていくだけなのにね、それぞれに帰るだけ。
「さて、お仕事お仕事」切り替えていつもにもどる。
それでも。ふと手が止まると、考えてしまう。
”ここしかないなら、ここで生きるしかない。誰かが私を殺してくれない限り。”
神威に心の奥底を覗かせてしまったことが正しかったんだろうか。
知らず知らず指で唇をなぞっている自分に気づく、浮かぶ神威を慌てて打ち消す。
ーーーー去っていく人なんだからと言い聞かせて。
それでも。
「ただいま」無邪気そうな顔で神威はまるで家に戻るかのように研究室へ戻って来る
「いいニュースだよ、蓮水、だいたい二週間で退院できるらしいよ」
「ほんと?」
「退院したらすぐこっちに戻るって」
花梨は嬉しそうに戻ってきたらジェンガ3番勝負ができると楽しそうに笑った。
蓮水が退院した3日後入れ替わるように神威は滞在していた木蓮から離れることになった。
ーーーーー神威が宇宙に戻る前日
花梨は久しぶりに第七師団へ向かった。
蓮水も付き添ったがここでは花梨は神威といつも二人きりになっていたため阿伏兎の部屋で酒を飲むことになった
神威と今回はずいぶん長く一緒にいた。
毎回さらわれるというおまけがついていて、変な話だなと思う。
それを神威にいうと「それに5億がついて回るよ」と笑った。
ーーー隣に神威が座ることも肩を抱き寄せてくることも、
優しいキスをくれることもあの雨の日から普通のことへと変化して行った。
そう、恋人のように。
「神威、今日はここにいてもいい?」
そう聞いた花梨はいつものように夜を過ごすつもりだった。
たわいない話をしてウトウトしたら眠ってまた起きたら話をして。
「いいよ」と答えた神威は違っていた
”花梨が欲しい”と思った神威はそのままその感情に従った
戸惑いを見せる花梨に想いを伝え、彼女の想いを聞き
花梨も神威と同調するように全てを任せ、その熱を受け止めた。
ーーー「花梨、キツくなかった?」
心配そうに聞く神威には理由があった。
研究と勉強に明け暮れ、友人すら作らなかった人に恋人など過去にいるはずがなく
自分が初めての相手だと知ったのはついぞさっきのこと。
「ん、大丈夫」
初めての甘い時間に気が緩んだ神威は素直な感想を口にしてしまう
「一応胸があったね、まな板じゃなかった、一応だけど」
「か、か、か」(カムイと言いたいが言えない)
「みんなにまな板じゃなかったと説明する?」笑いながら神威はそう言って花梨を腕の中にもう一度収める
「いや、やっぱりもったいないから言わないでおこう」そいうと額に一つキスを落とした。
翌朝、身支度を整えた二人はまた抱きしめあった。
「花梨、すぐ戻るから待ってて」
神威はそういうとあの日と同じ優しいキスをした。