5億の女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
再び仕事に戻ろうとしたとき声がした・
「光栄だね、こんな強い人はいないだなんてさ」
神威が寝転んだまま花梨に話しかけた。
「あら、事実でしょ?私が知ってる人の中で神威ほど強い人はいない」
「喉乾いたから、それくれる?」
ペットボトルの水を指差す神威にそれを手渡した。
起き上がってそれを飲んだ神威は目が覚めてしまったようで雨の音を聞きながら
「・ねえ、花梨、ここに戻るの怖くなかった?」と聞くと
不思議そうに神威を見る花梨に言葉を続けた
「ここで襲われて誘拐されて死にそうな目にあったのに、同じ場所へ戻ってくる。
・・それに」
神威は危ないかもと思いポケットにある高杉からもらった箱のスイッチを押して話した。
「自由になりたいって言いながらここへ戻る。シンスケに斬って欲しいとまでいって
花梨は何を考えてる?シンスケが言ってた俺たちが来た瞬間泣いたって、それはなぜ?」
箱を見るとランプは青、念のために押したけど大丈夫みたいだ。
雨の音がさらに大きくなって窓を叩きつけている中で花梨は息を飲んだ。
「諦めるしかないでしょ、どこにも行けないんだから。
・だからあの時高杉に斬られて死んだら、本当の意味で自由になれそうな気がした。
神威がこなかったら本当に死ねてたかもしれないのに、
責任とって今度は神威が殺してよね」
ーーーー悲しい顔で神威を見た、そんな顔をするのかと思うほど。悲しい顔をした。
思わず神威はその手を引き寄せていた。
ふざけて怒ってる、いつもの花梨じゃない
シンスケがみた、花梨という箱の底にある感情はあまりに切なかった。
花梨の頬から涙が落ちた。初めて見たその涙は綺麗で悲しい
「このまま行くか?花梨。シンスケも協力してくれる、だからここを出るか?」
「できないよ、処罰を受ける人が多すぎる、神威にも春雨にも、高杉にも迷惑がかかる」
「・・花梨、俺は何をしてやれる?」
「ちょっとだけでいいから、こうしてて。寂しさも紛れる」
一人でいることを覚悟して、俺や阿伏兎以外付き合わず、常に一人っきりでこの中にいる
ふざけるのも、怠惰にするのも、全部最後の感情を誤魔化すため。
神威はそれを知ってしまった。
声も出さないで、ただ涙を流した花梨を守りたいと思ったのは、いつか感じた感情と同じだった。
神威は花梨の涙を拭った。
「そんな顔するな」そういうとそのまま花梨にキスをした
優しい重ねるだけのキス。
抱き寄せたまま、キツくなる雨の音と伝わる体温と呼吸が二人を包み込んでいるようだった。
・・花梨は神威に持たれたまま眠ってしまった・・・
「俺が寝袋だな」そう言って花梨をソファに寝かせた。
「きっと俺がここから連れ出してやるから。待ってろ」
そう言って額にキスをもう一つ落とした。
翌朝、副官は花梨の研究室にバナナを持ってやってきた。
ソファで寝ているのが花梨で部屋の隅っこで寝袋に入ってるのは神威、あれ入れ替わってるなと思いながら
「花梨さん、朝ですよ〜バナナですよ〜」と声をかけると
「ふえ???バナナ??バナナ」そう言って手を伸ばすから丁寧に皮を剥いて手渡すと
ーーー寝転んだまま食べる、副官は”これが蓮水が言ってたやつだな“と理解した。
そしてまた手を伸ばす、二本目だ。
これでようやくお目覚めになる。副官も聞いて知ってはいたが直に見るとなんだか笑ってしまう
天才がこれかと。
そして隅っこで寝ていた神威も首をコキコキしながら起き上がった。
「床で大丈夫でしたか?」そう聞く副官に
「花梨、こんなところでよく寝られるな」と言いながら寝袋をたたんだ。
「神威にもバナナあげて」
そう言われて副官は一本渡そうとするが花梨が残り全部と言うので驚いた。
神威はパクパクと食べ進めていく、バナナ十本は食べただろうか。
驚く副官に花梨が「夜兎の食欲は尋常じゃない」と教えた。
花梨はもういつもの花梨に戻っていた。
昨夜の雨は嘘のように上がり、優しい光が窓越しに降り注ぐ様を見て花梨は小さく笑った