5億の女
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近づけば近づくほど大きな花梨という箱の中からいろんな彼女が出てくる。
シンスケはもしかしたら、その一番奥底にいる花梨を見つけたからあんなことを言ったのかもしれない。
なんかモヤモヤしてやりきれない気分になっていく。
掴めそうで掴めない、掴まえさせない花梨
”どうかしてるな”心の中で何度も繰り返していた
木蓮では蓮水が龍翔提督の副官から花梨が無事保護され戻ってくるという報告を受けて
ベッドから体を起こし、お世話をしなければとまだ回復しない体で退院を訴えた
もちろん許されるはずもなく、その副官が当面花梨のそばにいることになったが
蓮水は副官に1時間以上のレクチャーをしなくてはならなかった。
副官は蓮水の事細かな仕事ぶりに舌を巻き、花梨が想像以上に大変な相手だということも知った。
流石の副官も不安になり小姓を二人花梨につける事にした。
警護は副官ができるか他のことは凛々しい副官にはできそうもなかった。
花梨とともに木蓮に入った鬼兵隊と第七師団は迎賓館へ案内された。
そこには龍翔提督以下主に宇宙艦隊と呼ばれる木蓮軍部における提督たちがずらりと並んでいた
「無事でおられて何よりだった」
龍翔提督は元々花梨を重用しているだけに一安心といった顔だった。
それもそのはず、ここにいる提督全ての旗艦戦艦、武器開発に至る携わったのは花梨だからだ。
何か問題が起これば花梨が変更対応する、故にここにいる提督たちとの繋がりは強かった。
この人質事件では軍統括本部と宇宙軍との軋轢も生まれてしまったのは事実だった。
花梨をそのまま見捨てるかどうかで紛糾した。
一部、統括本部の中で花梨個人と言うよりその頭脳のみを話す変な輩も出たりしたが
提督たちはこぞって花梨本人の命が優先だと言い切った
捕虜交換に応じろと、
反政府の捕虜が仮に戻ってもすぐ自分たちが攻撃し
本拠地を焦土とかすまで破壊し尽くすと
木蓮人のもつ強固な闘争心を露わにしたほどだった。
全面戦争になる前に事態は収拾したがきな臭い軋轢は木蓮の中に漂い始めていた。
花梨は神威たちと共に病院にいる蓮水を見舞った
病室で蓮水は花梨を見るなり起き上がろうとして顔を歪めた。
「蓮水、起き上がらないでいいから」
そう言う花梨の顔を見て今にも泣きそうな声で何度も守れなかったことを詫びた。
蓮水は銃弾を浴び、一時は意識がなかったと副官から説明を受けた。
「早く治してそばにいてくれないと困る、誰がジェンガの相手をしてくれるの?」蓮水の手を握り花梨がそういうと
「ジェンガは嫌です、絶対あなたが勝つのでチェスにしましょう」
「それは蓮水が絶対勝つから嫌だ、ジェンガにして」
「本当にわがままですね、パワハラですよ、仕方ないのでジェンガにします
ただし3回勝負にしてください」
「わかった、だから早く治して」
「はい、上官の命令です、早く治します」
蓮水は柔らかい笑顔でそう答えた。花梨がちゃんと自分を頼りにしてくれていることは
わかっていた、ジェンガにかまけて話すのは花梨の癖。遊びにかまけて必要で困ると伝えてくれている
蓮水は早く治してこの人に支えたいとまた心を新たにしていた。
そして蓮水は大切な上司を救っていただきありがとうございましたと神威と高杉に礼を述べた。
病室を出て再び迎賓館に戻る車中で高杉は神威に蓮水について聞いた。
「あの男がずっと花梨についてるって男だろ?」
「ああ、自堕落な花梨の世話を焼きながら監視と警護にあたってる男だ
呆れもせず甲斐甲斐しく世話を焼いてる。
・・・・監視は怠らずにね
花梨の大きな鳥籠見せてもらったら?。。広いけど本当の自由はないよ
パッと見た感じ、広い楽園のように見えるけどね」
神威の言葉もどこか諦めが混じっているように高杉は感じた。
迎賓館に到着すると、先に別の車で戻ったはずの花梨はすでにそこにいなかった。
研究所へ戻った聞き、神威は「やっぱりな」と呟いた。
ただ警備の関係上、阿伏兎がついて行ったことを知り、二人とも研究所へ向かった。
「これが大きな鳥籠か」高杉はその門を見上げて言った。
白い立派なゲートも向こうに伸びる道路の脇には公園が広がり、噴水があり
一つの小さな小洒落た街の風景の奥に大きな建物がある、そこが花梨のいる研究所だ
普通の町と違うところはあちこちに張り巡らされた監視カメラとセキュリティチェックの多さ。
研究所についてなお何箇所ものチェックを通り、ようやく建物内に入ったが
さらに花梨のいる施設まではまたチェックがある。
ーーーー”確かに鳥籠だ”高杉はそう思った。
すでに花梨は自分の研究室の中にいて、阿伏兎が話し相手になっていた。
「神威、ごめんね、こっちに戻ることになってそのまま」
「ああ、阿伏兎も一緒だから安心してたよ」
「阿伏兎が一緒に行くってゴリ押ししてくれて」
阿伏兎はニタっと笑って神威を見た。
「蓮水がいない間は誰がつくんだ?」
神威がそう聞くと龍翔提督の副官と小姓が二人だと花梨がいった。
三人体制に神威は少々驚いたが、蓮水がやってたことは他の人では三人ぐらいでないとこなせないって言われたと笑った。
「別にほっといてくれても・・」そういう花梨に
「寝袋で寝て飯食う奴の世話は一人じゃ無理なんだろうよ。蓮水は良くやってたよ」
そんな光景を高杉は黙って見ていた。
ここで花梨は日々を過ごし、建物の外に出ても門の外へはほぼ出ない。
とてつもなく広い敷地の中で全ては事足りる
ーーーー“大きな鳥籠”の意味をそこに行って改めて知った。