5億の女
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「花梨、・・俺ならその鳥籠から出してやれる、大きな鳥籠からな・・今なら自由になれる」
”花梨を出す?俺は話を聞くだけだったのにシンスケがそこまでいうのはなぜだ?。”
その時神威の胸の中になんとも言えない感情が顔を覗かせた。神威自身もまだ全く気付いていない感情が。
しかし花梨の返事は冷静で、全てを悟り尽くした答えだった。
「私に自由なんてないって言ったでしょう?」
「星の海で生きたいんだろう?・・また地上に、籠の中にくくつつけられる。本当にそれでいいか?」
「今更の話よ。何かをされるわけでもなく、常に人がそばにいて・・でも私を命がけで守ろうともする、
なのに自由になりたいとか、そういうのはわがままでしかないと思えてしまう。」
少し手を伸ばせば自由に空を飛べるのに、こいつは。
ーーーあの諦めきった目。
斬られる瞬間の目は真っ直ぐに俺を見ていた、恐れもなに抱かず。
自由になりたくてもできないなら、斬られることで死ぬことで自由になれるとでも思っていたんだろうか。
———あの涙は神威を見た安堵感じゃなく、死に損なった悲しみだとしたら?
「逃げたくなったら言え。俺は木蓮とのしがらみはない。・・いくらでも拐ってやるよ」
その耳元で囁くようにいう高杉を一瞬見つめたもののすぐ通常運転にもどる
花梨の心の奥底を覗き込んだ高杉の目の先に蒼い目をした男が映っている
花梨と戯けることはあってもまだ奥を見ていない神威・・若さ故か真っ直ぐにしか動けない、
力で言えばその強さに勝るものはない。だからこそ隠れた人の弱さを測れない。
花梨はその弱さを見せない方法を知っている、幾重もの自分で奥底の自分を覆い隠す
高杉は自身が傷つき、倒れてきた経験からそれを読み取った
”じゃあ、あなたが斬ってよ”・・それは本心だ、あいつの奥底には絶対に生きるという選択肢はないと。
「木蓮に着くまでゆっくりしてろ、疲れただろ」
高杉はまた子に花梨を休ませるように言った。
花梨はソファの上でいつもにように膝を抱えてゴロンゴロンと体を動かす
高杉が言った言葉を心の中反復するけど・・答えなんて出ない。
ずっと出なかったのに、今も出るはずがない。現状維持であそこで生きていくしかないんだと思う。
思えばまだ蓮水はいるだけマシなのかもしれない。
「蓮水、大丈夫なのかな」そう呟く、
いつもうるさくて注意ばっかりして・・でも命がけで守ろうとする。
仕事とは言え、そんな人たちを平気で裏切れるような神経は持ってない
自分が望んで軍に入ったんだから。あの大きな鳥籠の中でいつか出られる日が来ることを願うしかないのか。
もしくは・・あの時願ったように・・・
「花梨、入るよ」その声で現実に引き戻される
ニコニコした顔で神威がバナナを持ってきた。
「花梨好きだろ?バナナ」
「好き」その房からもぎ取った一本を花梨に渡してくれる神威
隣に座って神威も食べ始める
二人の間には房丸ごとのバナナがある。それをもぎ取っては食べるが、神威の方がペースが早い。
「神威、食べるの早すぎ、私の分がなくなる」
「そう?んじゃ」そう言って3分の1を花梨に渡し
残りを自分用にと分けた
「なぁ、花梨」
「何?」
「お前さ、木蓮から本気で出たいと思うなら、・・俺が出してやるからシンスケに頼るなよ?」
「神威?」
「今回何もしてやれなくてシンスケが助けたようなもんだからさ」
「助けに来てくれたじゃない、あの夜兎を倒したのは神威でしょ?珍しいね、神威がそんなこと言うなんて」
「花梨がシンスケにさ、斬ってくれって言ったって聞いて、本気でそんなこと言ったかと」
ーーー少しの沈黙の後
「・・あの時は本気だったかな、でもあそこに神威がいたら神威に頼んだかもしれない」
「なんで?」
「あのブサイクな夜兎にやられるぐらいなら、神威の方がいいに決まってる
同じ夜兎でも全然違う。殺されるなら相手を選びたいよ。おかしい?」
「・・俺なら全部殺して花梨だけ助けるよ、勝てる自信もあるから」
「・・そっか。ありがとね、神威」
神威は首に残った指の跡を見た。なにも怖がる様も見せなかった花梨はなにを感じ、思っていたんだろうか。
戦闘種族ではないにしろ闘争心はかなり強くいつでも戦える力を持つ木蓮星人の中で彼女はどこか違う。ーーー出会った時から。