5億の女
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春雨本部から連絡が入ったのは花梨が連れ去られた数時間後だった
ーーー「5億の女が拐われた」第一報がそれだった。
“深夜1時40分セキュリティーを破り研究所内に侵入
病床に伏せっていた該当者は発熱が収まっていない状態で部屋に不審者が突入、警護担当も同じく発病中で発熱隣の部屋で就寝。
警報も切られた状態だったがセキュリティサービスを呼ぶスイッチを該当者が押したにもかかわらず侵入者はそれらを殺害、警護担当も銃で応戦するも重症
警護担当から傘を持った者がいたと報告
夜兎と思われる、唯一稼働していた防犯カメラにて確認
天人5名・不明3名、該当者はそのままの状態で拉致“車を何度か乗り換え宇宙港より小型艇にて逃走、該当者がどこで下されているか不明“
「花梨。」思わず名前を呼んでいた。
「夜兎が動いてるってどういうこった」阿伏兎がに苦々しく言うと
「その辺の野良夜兎が金で買われたかなんかだろうな」と神威は報告書を握りつぶした。
「まさか本部が動いてるとは思えねえが」
「ああ、協定違反をしたらあの星は本気で攻めてくるさ大艦隊で。
いくら俺たちでも総攻撃を受けたらおそらく生き残れるのは一握りだ。
第七師団でも一個艦隊を潰したことはあるが、船の大きさからして違いすぎる
人間一人の力は小さいが、あの艦隊は巨大すぎる・・仮に一個艦隊ずつ潰しても半年以上かかる
こっちがその間に殺されるさ。木蓮の人間は武器を効率よく使う上に戦闘意識が総じて強い」
「いまは手がかりなしか」
「ああ。全くない。木蓮がいま必死で動いてるらしい、蓮水だっけ、あいつがまだ意識が戻ってないから話も聞けないらしい」
「二人揃って病気とはついてない時を狙われたな」
神威は尋ねた研究所の警備を思い出していた、
あれほどの何重もの警備を破る・・・でもあれは内通者でもいなきゃ無理じゃないのか?と。
指紋認証。セキュリティカード2種類、登録番号、挙句。網膜認証・・入るまでかなり厳しいチェックも受けるんだ。
・・・花梨のことだ、拉致られたところで泣き喚いて不安になったりと言うこともないだろうけど。生きることに対してあっさりしすぎているから、そこが心配だ。
そこで神威は気づく
心配?・・花梨が心配?いま俺、動揺したな?・・と。
花梨は深い眠りの底にいるような感覚が体から抜けないでいた。
目を覚ましかけると誰かが言う「まだ眠らせておけ」とそして何かまた腕にチクリと痛みが出て意識が消えていく
蓮水、どこ?声を出してるのかどうかもわからない
・・神威、阿伏兎、助けてよ・・そんな思いが浮かんでは消えていった
どれほど経っただろうか、意識は朦朧としながらも体の感覚が徐々に戻り始めていることき気付き始めた花梨は
指の感覚を確かめる 握りしめた手には力が入る動く、足の指の感覚もいつもと同じだ、耳をすますと・・気配はない?
薄目を開けてみると室内は暗いようで、背中の感覚は床じゃない。一応ベッドだ。
拘束されてもいないようだし起き上がってみるか。花梨は目を開けて体を起こした。
見覚えのない狭い部屋で__また鉄格子かよ。ここ最近で2回目だよ
またあぐらをかいてため息をつく、しかも私今回はパジャマじゃんか。床で寝たら一気に寝冷えコースじゃん。
・・っていうか体治ってない?肩をコキコキやっても首回しても快適になってる。
立ち上がってジャンプしてみる、体も捻ってみる。体操してみて完全復活だよと思う。
病気の時は気弱になったけど、回復してくると普段の自分に戻ってくる。
・・・だけど、蓮水は大丈夫なのか、それが心配になってきた。
監視係だのなんだのと文句はいいつつも、一番近くにいるのは蓮水だから・・。
あの時銃持って出てきてたから、怪我してなきゃいいけど・・・・・。
蓮水もインフルエンザだったし。
いろいろ考えだすと今の状況に納得できなくなってきた花梨はパジャマで連れてこられたことにまず文句を言い出した。
ちょっとは状況考えて誘拐したらどうだとか、病気の時に来るのは卑怯だとか
こういう状況なら一人ぐらい鉄格子の外でいいからついてろとか
着替えと靴くらい貸せとか、お腹減った、喉渇いたとか言いたい放題。
しっかり監視カメラで体操から何から何まで全部が流れているとも知らず、
さらに背中を掻いてみたり頭描いてみたり腰を掻いてみたり
普段と変わらない状況を作り出している。蓮水がそこにいたら嘆いていることだろう。
カメラの向こうで「これ、本当に5億の女か?」
「本当に木蓮の天才か?」
「間違ってないよな?」
そんな話がされているとは全く知らず延々と文句は続く。
あげく「だ〜〜〜せ〜〜〜」と叫び始める
「こんな女初めてだ」
「檻で叫ぶ痩せた熊だ」と呆れだす始末。
「これだよな?」資料を出す男たちは映像の花梨を見て
「顔は一緒だ、双子とかじゃないよな?本当にあれが5億の女か??」と確認する。
写真だと顔だけだからそれなりの美人に見えるが見た目と中身は違うんだということをなかなか受け入れられないらしい。
その5億だって花梨が釣り上げただけのことなんだが、これは神威たちとの間でしか知られていない事実。
こんな姿をきっと神威たちは想像できてないだろう、結局どこにいても花梨は花梨でしかなったということだ。