5億の女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「で、神威、なんでここへ?」
「ああ、お腹いっぱい食べたし、なんか退屈でさあ、面倒なことは阿伏兎に任せたしいなくてもいいかなって」
「そういえば、私、神威の年齢知らない、いくつだっけ??」
「20だよ」
「私の方が上だね、23だし。って言うかこう言う話してないよね」
「まあ〜ね。だって話たのあの牢獄が最初だからまともな話はしてないよね、
名前はすぐ聞いたけどさ、それにしてもこの星は美しいね、人口も多くてそんな貧しさとか感じないよね」
「ここは確かに最低限の生活保障があるから。飢えて死ぬこともないし家がなくなることもない。
・・だから私だって学校に行けたんだもの。この星の子供は15歳までは学校へ行かなきゃダメなのよ、
ただ飛び級制度もあるから私みたいに早く卒業できる子供もいるけど
そう考えればここは恵まれた星よ。だからみんな守ろうとするの」
ーー神威は育った星を思い出す、そして渡り歩いた星々を
・・・地球は確かにここに似ているが地球は木蓮に比べれば遥かに小さな星だーー
そしてこの星には同一種しか住んでいない。
戦争が起こる星ではあるけれど全てが宇宙戦で星への影響はない。
故に、惑星に住む一般人は基本戦火に巻き込まれることがない。
戦争はするが自分たちの住む星を戦争の場所にはしない
それが彼らの戦争に対する認識であり、戦うためにこれだけはという守り抜くものでもあった
ーーーそう、この星の人間は基本戦争を好む、だから2000年近く争いを繰り返している
夜兎のように戦闘種族ではないからその力の差は明らかで、彼らは戦艦、兵器で戦う
ただし規模が今まで見た中で最大級、自分たちの船と比べても最新鋭だ
彼らは最先端の技術で力の差を埋めている
それを動かす軍人が優れているのも確かで、それを開発する花梨たちの力もある
この星はそう言う各分野で優れたものが協力し合い、この星系を星を守り抜いている
人口の多さもそれを示している850億もの人間が住みその2割以上が軍人として各地に散らばっている
主星でこの首都の統合本部に所属する軍人は明らかにエリートで花梨は明らかにエリート組に属する
「花梨はここではすごく出世が早いよね?」そう聞く神威に
「神威だってそうじゃない?」そう返されてそうか、と思う、
自分の強さに自信はあるから今までそう感じたこともなかった。
「今の仕事になってからかな。階級が上がっていったの。
最初に大型戦艦の弱点だった水平スラスターの改良に成功してからかな。
それまでは前話した通り悲惨よ、向いてない部署ばかりで」
「ははっ、でもそのおかげで死体見ながらでもご飯食べられるようになったんでしょ?」
「ま〜ね、根性はすわったわ。今は完全な裏方だから戦場にも出ないし内偵もないから直接人を殺すことはないわ」
「直接?」
「そう、私が作り上げた戦艦が他の誰かの手によって動かされて戦場へ行くんだもの
それに銃火器武器もそうだし、武器に使う素粒子開発も私の役目っだったから・・昔ダイナマイトや核を開発した人と同じよ」
「いやなのか?」神威は思わずそう聞いていた
「いいえ、軍人だから」
それはもし軍人じゃなかったら・・と言う含みも持たせていたかもしれない。
花梨は戦うために軍に入ったのではなかったからそう言う感情を持ち合わせても不思議ではなかった
ただ、学び吸収してそれを生かす道がここだっただけだ。
「神威、人間って不思議よね」花梨は空を見上げながら話す
彼女にとって17歳までは普通の学生で戦争で人が死んだり、
不幸な事件で人が死んだりそう言うニュースだけで心が痛んだ。
この星で戦争に行くのは仕方のないことだと認識していたが、
身近な人が戦死すると本当に悲しかった
それが奨学金返済免除とか様々な条件で軍に入った途端、映像でさらに悲惨なものを見せられ
現場にも実習と称されて出向き、
内偵で止むを得ず初めて人を殺めたときの衝撃は今も忘れることはで気ない出来事になった、
人はこんな簡単に死ぬのだと身をもって知り、
自分の命の軽さも同時に知った、
その内偵の仕事は確かに考えを変えるに十分だった
「“命は大事“だと教えられた幼い時、何も知らず普通に暮らした学生時代
思えばここは普通の世界から隔絶された世界なんだと、今は思えて仕方ないわ
どんなに人権と言われる世にいてもここにいる限りいつか切り捨てられる駒でしかない
だから、結構自分の命に関して諦めが早いんだよね」と空を見る
そう、17歳までの花梨は分厚い透明の壁の向こうにいる
「自分がその立場になって知ることは多いね。今はそれも貴重だと思うことにしてる
って言うか、真面目に語ってごめんね〜これで終わり〜」
ちょっとふざけたように話を締めるのは花梨の癖だ
それは、これ以上立ち入らないでと言うサインでもある
“あ、これだ“神威はそのサインで壁が作られてるんだと感じた
素を見せたかのように見えて、そうじゃない、あの時と同じだと思えた
確かにあれも花梨で今も花梨
でもそれは戦闘が始まった時の夜兎としての自分を彼女に見せないのと同じことだと神威は思った
・・まだ。花梨と神威の距離に隔たりはある・・そんな夜だった。