大事なもの、欲しいもの
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しおりの休日は決まって正吉窯と団子屋、
そこしか行かないというか華やかなのは苦手で
そこしかいけないというのが事実。
しおりは自覚してないが、いや思い込んでいるのか
自分は山猿とか言われるのは事実なのでいいけれど、
実は人見知りで新しい場所が苦手で馴染むのに時間がかかる、
何か共通点があれば平気なのだ
正吉窯と団子屋がその際たるもの。
団子屋のおじさんは田舎者のしおりに何かと気遣って優しい
正吉窯の正吉も優しいし同じ物づくりの共通点がどこか安心させる。
開店直後の団子屋に行き団子を5本と2本別々に包んでもらって
その足で窯へ向かう
夕方までロクロを回したり、素焼きの作品に絵をかいてみたり、釉薬がけをしたり
その合間に正吉と団子を食べる
「ああ、しおり、そこの箪笥開けてみな」
帰る支度をしてると正吉がそう言った・
「なんですか?」
「いいから開けてみな」
奥にあるタンスの引き出しを開けるとそこには女物の着物がたくさん入っていた。
「それな。俺の連れ合いのもんだ、もう死んじまって何年もそこに入ったままだ。
俺には子供もいねぇし、お前好きなの選んで持って行け。帯も一緒に。俺には無用のもんだ」
困った顔で正吉を見るしおりに
「遠慮しないで持って行け、
いっつも同じ着物ばっかり着て。
いい歳の娘がそんな格好してるんじゃねえ」
着古した着物を買い換えることもせず、着ていたしおりが正吉は不憫だった
単純にしおりが買い物に行かないというか、それすらも苦手で行けないというのが真実。
ーー「ちょっと待ってな」
そう言って正吉は隣に住む髪結のおばさんを連れてきた
「着物を選べばいいんだね?」
「ああ、似合いそうなので簡単に手入れできるやつ、選んでやってくれ」
そう正吉が言うとおばさんはあれこれ引っ張り出して
木綿の着物を2着と絹の着物を1着、帯を二本
たとう紙に畳んでしまうとしおりに渡した。
「大事に着な、正吉の嫁のだ。今まで誰にも譲らなかったんだ」
「余計なことは言わんでいい」
慌てて止める正吉の気持ちが嬉しかった。
屯所に戻って、まず着物をしまい
「後はこれを斉藤隊長に渡そう」
なぜか言葉にしてから部屋へ向かった
縁側で夕刻だというのに”z〜〜〜〜z〜〜”と寝入っている。
風邪ひきますよと声がけしてみるも熟睡中。
仕方ないので奥から肌掛け布団を出してきて掛けた。
・・それでも目を覚まさない
“お土産です“
メモだけ残してそばに団子をおいた。
夜の帳が降りて、星が輝き始める頃
「斉藤隊長、食事に来ないね、どうしたんだろう」
富子さんが気にし始めた。
まさかあのまま寝てないよね?
いや、斎藤隊長のことだ、十分あり得る。
部屋に向かうと、もう縁側にはいなくてお団子もなかった。
おにぎりぐらいは作って届けようかと思い食堂へ戻り、
三角おにぎりを二個大きなノリで巻いて、
卵焼きを焼いてお盆に乗せて運んで行った。
「斎藤隊長、入ります」
・・・・・中で寝てた・・・・・・・
肌掛け布団ににくるまって。