大事なもの、欲しいもの
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駅に降りると
そこにはあの日お世話になった農家のおばさんが立っていた
ーーー「おかえり」そう言って。
そして「勘違いでひどい目に合わせて悪かったよ」と詫びた。
「見せたいものがあるっていったでしょ」
そう終は言うとおばさんと一緒に歩き始めた
懐かしい道が続く。
そしてあの焼け落ちた山に緑が植えられているのを見えた・・
「あれ・・」
「みんなで植樹したんだよ。
あれはあんたのとこの山だけどさ、
焦げた木ばっかりじゃさ。
神社も新しく建ったんだよ」
ゆっくりと輪郭が見えてくる
「山に道が・・・」
「将軍の使いの方が見にきてね、
総指揮をとって山の手入れと
道を付けるのとあんたの家を建て直すのと
神社と・・全部やってくださったんだ
将軍家お抱えの陶芸家の家がこうじゃダメだってね
村の人みんなが協力してここまでになったんだよ
早く上に行ってご覧」
今までの藪道はなくなり。
手入れされた道を歩いて上に上がる
真新しい家とそのまま残った登り窯
新しい薪が山と積まれている
家の中に入ると新しいロクロや道具類も全て揃えられていた。
「将軍家お抱えの陶芸家がここから出るなんて名誉だよ」
「そうだよ。早くあの窯に火が入るところ見たいよ」
「薪割りならまかしなよ。」
皆が口々にいった
「雨降って地固まるってこういうことなのかな?」
と終にいうと
「かな?」と短く返事をした
終は見ていた
嬉しそうに登り窯に触れるしおりを。
ここで想いを抱えたまま過ごした二週間はもう遠い過去で
またこの窯に火を入れるときは一緒に薪をくべて
今度は火の前に座って一晩中話をしようと思った。
饒舌には話せないけど・・ゆっくり少しずつ話してすごそうと思った。
しおりがここで仕事をするときは別で暮らすことになるのは寂しいけれど・・・
そう思っていたらしおりは
「登り窯は一年1回かな・・・いいですか?終さん」と聞いた。
「もちろん」終はそう答える
一年に一回ならそんなに寂しくないとほっとしたのも事実だった。
終の実家では両親が緊張した面持ちでしおりを迎えた
やはり親子揃って将軍家お抱えの陶芸家という肩書が多少なりとも影響していたようで。
”あの・・ゲジ眉でボサ髪で日焼けした彼女を見たら
きっとこうはならないだろう”と思った。
自分としてはあっちのしおりも大好きなのだが。
今日は終が用意した着物と帯でちゃんと正装で来た分
しおり自身もいつもよりはかなり気が張ってる。
「大丈夫」終は決まっていう。
しおりはその大丈夫に安心する。
すでに婚約を報告済みだった二人は正式な式の日取りを両親と決め、
式と披露宴は江戸で行うことになるがこちらでも親戚を集めての披露は行うことになった。
親がいないしおりは正吉が親代わりとなった。
翌日両親に見送られて終はしおりと共に故郷を後にした。
江戸に帰る列車から流れる景色を見ていた。
肩にもたれて寝息を立てているしおりの重さが終に幸せを感じさせる。
“緊張してたから疲れたんだろう“
江戸につくまでゆっくり眠ったらいい。
穏やかな光が車窓から差し込んでくる中で
終は小さなあくびをして目を閉じた。
ーーーきっと夢の中でも二人で幸せだろうと思いながら。
ーーーー秋には正式にしおりは斉藤しおりになる。
紆余曲折を繰り返し・・やっとたどり着いたのは終の元だった。ーーー
大事なものはお互いで。欲しいものは二人の幸せな未来。