大事なもの、欲しいもの
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しおりは作品の仕上げが残っていて終を見送った後
またロクロを回し始めた。
最近はほぼ毎日終はやってくる。
終は家賃を払っているから当然だと思うのだけど
ちゃんと収入はあるわけだし・・作品も売れてるから貧乏ではないわけで・・・
いいかげん、家賃払わせてもらおう、そんなことを思っていた。
そういうことはきっちりしようと思うとすぐ行動したいしおりは
翌日縁側で終に言った
「家賃払わせてほしいんですけど・・」と。
驚いたようにしおりを見た終はふるふると頭を横に振る
「だって、ちゃんと私にも収入はありますから、
何ヶ月も出してもらっておいて
今更ですけど。」
”私が勝手に契約してここに連れてきたんだから私が払う”
「いやいや、私が困ってたから助けてくださったことで、勝手とかそんなんじゃないですから」
”あなたに払わせるなんてできない”
「それとこれは違います、
私が貧乏になって払えなかったら貸してください、お願いします」
”あなたのお願いは聞いてあげたいけど、これだけは絶対ダメです
譲れません”
「それは終さんダメです、少しぐらい譲ってください」
”絶対ダメです。”
「終さん、頑固すぎます」
”こればっかりは頑固でもいいです”
「でも」
”ダメなものはダメです、私が払うと決めてるんです”
払う払わせない問答を繰り返す二人をまた呆れた様子で沖田は見ていた。
あんな風に言い合うこともあるんだと少し意外でもあった。
結局年内いっぱいは終が払い
年明からは年末にもう一度話をしようということに落ちついたようだった。
一緒に住めば済むことなのに
帰り道沖田はそんなことを思った。
ーーー帰り道、吐く息が白くなりかけてた。
”今日は冷える”
冷え込んだ夜に終はポケットに手を突っ込んだ。
制服のポケットには土方が持たせた口紅がずっと入ったままだった。
”結局渡せてない。・・どうしよう”
毎日会ってるけど・・それ以上でもそれ以下でもない。
これを渡したらしおりはつけてくれるだろうか・
・・・笑ってくれる?今度は・・心から笑ってくれるだろうか・・・・
終はそれを握って唇をかんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よお。元気か〜まだ仕事か、忙しそうだな」
手をひらひらさせて尋ねてきたのは銀時だった。
「お茶入れますね」
そう言ってしおりがお茶を入れてくる間並べられた作品を銀時は見た。
「どうかしましたか?」
「これさ、土からできてるってすごいな」
「そうですね、土掘って乾燥させてふるいかけて、
練って、形にして。。乾かして・・素焼きして釉薬かけて本焼きして・・・
形を変えて一つのものになるんですもの」
「なんか人間みたいだな」
「え?」
「生まれて、いろんな目にあって、それこそ痛い目にもあったりして
その中で形になって一個のものが出来上がるってよ
それもオンリーワンだろ?同じものはない」
「そうね、そうよね」
お茶を飲みながら銀時は続けた
「。。もしかしたらアフロにとってオンリーワンはお前で、
お前にとってのオンリーワンはアフロじゃねえの?」
銀時を見たしおりは目を伏せた。
「怖がるな。お前とアフロはまだ終わってねえ。
まだ進める。やり直せる
・・今のお前たちは一生懸命お互いに傷つけないように
逃げて、繕って、一番大事なもんを掴もうとしてねえ・・ってな
銀さんにはそう見えるんだよ」
最後にはおどけて見せたがその。その言葉はしおりの心に刺さっていた
自覚もあるけど、・・思い出して怖い。
終がここへきてくれるだけでいい
”一番大事なもん掴もうとしてねえ”
一番大事なものは一番欲しかったもの。
口に出したら壊れそうで言えなかった
今も口には出せない。
言い出したらきっと全部が溢れ出すから・・・
もう何もなくしたくない。
「一応、しおりに言っといた」
定食屋で一緒になった土方に銀時はそれだけ言った
「言っといたって・・」
「言うことは言った」
「あとは二人しだいってか・」土方はそう言って酒を飲んだ。