大事なもの、欲しいもの
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ただ一人、沖田だけが気づいていた。
結納の日取りを決めるために近藤たちと話をしていても
終はどこか他人事のように捉えてしまう
ーー承子に悪いと思いながらも。
武州に行っても結局同室で寝ることはしない終に承子は不安も抱え始めていた
勇気を出して屯所の終の部屋で泊まろうとする彼女だけを部屋に泊めて
終は沖田に頼み部屋で寝かせてもらうことが常だった
彼女を抱く?そんな気持ちが一切沸かないのだ。
いい人なのはわかってる、
でもそういうことは結婚後でいいじゃないかと思う。
・・いや、頭ではわかっている、
妻になり彼女を抱いて子供を作って
心が追いついていかない
沖田の部屋に世話になる何度目かの夜、沖田ははっきりと終に聞いた
「終兄さん、どうしてあの人を抱こうとしないんですかぃ?
あの人だってそのつもりで泊まってる。
一度だけじゃなくこうして何度も泊まりに来て。
婚約者でもう結婚するっていうのに
・・はっきり言って手も握ったことないんじゃないですかぃ?
それなのに、結婚するっていうんですかぃ?」
終は沖田の顔を見て目を伏せた。
・・やっぱり手も握らないでここまで来てるんだ・・沖田は確信した
「原因は山猿。。いや、しおりで間違いありやせんね?」
終は何も答えないし書かない
「終兄さん、俺はそんな恋愛経験もないし、偉そうにはいえねぇ、
でも本当にこれでみんな幸せだと思い込んでませんかぃ??
・・あの最後の夜、しおりは屯所を出てから人のいないところで
声出して泣いてましたぜ。
いまだに思い出せるぐらい可哀想でしたぜ
思い出すたんび、俺も心が痛くて堪らなくなりますぜ
・・今は・・親父さん、死んで今一人で山奥にいると聞きましたぜぃ」
終は沖田の顔を見た。
「終兄さん、
何が大事で何を失うのが一番怖いか・・考えてくダセェ。
それでもこのまま結婚するならそれでもかまいやせん、
それで終兄さんが本当に幸せになるってんなら
でもそれってみんなを裏切ってるんじゃないですかぃ?
・・すいやせん・・余計なことを言いました」
沖田はそう言った。
朝方部屋に帰ると承子はすでにいなかった。
きちんと畳まれた布団が隅にあった。
縁側に座り隣を見る・・・手を伸ばすと・・
思い浮かぶ人は、そこにいるのはしおりで、承子ではない・・。
お互いに好きだと言えなくて、
でもその分長い時間をここで過ごして幸せだった。
ーーなのに
自分はこんなものだと決め付けて、
みんなが結婚を喜ぶならそれでいいと思って結婚を決めた。
でも手も握れなくて、ましてや彼女を抱きたいなんて全く思わなくて
結婚して抱くことすら全く想像つかなくて。
だから彼女のアプローチから必死で逃げて逃げて。
しおりは父親のことも何もかも抱えて・・最後に会いに来て。
好きなのは、愛してるのは一人だけなのに・・
総悟くんが言った・・みんなを裏切ってる
その通りなのかもしれない
ため息をつく終に手紙が届いた
万事屋・・と書かれていた
“お手紙読みました
言えることはとても簡単なことです
一番大事な人が誰かってことに気づいてください。
自分の気持ちを大事にしてください
そして心に従ってください“
・・と書かれていた。