大事なもの、欲しいもの
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ーーー翌日
終は朝からしおりを待っていたが一向に来ない
代わりに承子が朝から訪ねてきていた。
“今日は予定がある”そうスケッチブックに書いて承子に見せる
その時近藤が言った
しおりさん、昨日付でやめたが、何か聞いてるか?
その言葉に体が強張った。
その場にいた沖田は悟ったように目を閉じた。
“きっと。あいつはもう江戸にはいねぇ“
確信があった・・・・
昨日の姿、涙、声、背中。
終の顔は呆然としていた
“また明日って・・言った。また明日って。
どうして?どうしてなんだ?“
承子を屯所に置いたまま終は正吉窯へ走った。
まだそこにいてほしい、ただそれだけ願った。
引き戸を開けると正吉が菊練りをしながら
終の顔を見るとまた土に視線を戻した。
「この作業、年寄りには堪えるんだ・・あの子がいたらなあ」
その言葉にもういないことを悟った。
「昨夜のあの子、別嬪だっただろ、
・・あんたのために初めて紅さして
綺麗な着物着て出かけてった。
朝一番で挨拶して出てったよ」
気が付いたら屯所に戻っていた。
隣に承子が座っていて座敷で近藤を交え話をしていて
何を言ってるかわからない、ただ言葉だけが通り過ぎていく。
翌日には松平がやってきて婚約が結納が、武州に挨拶だのと言っている。
終はただ通り過ぎていく物事に諦めの気持ちが生まれ始めていた。
しおりでなければ・・誰だって同じなんだと思えた。
周りは乗り気で
秘密で付き合うなんてしなきゃよかったんだと思うけどもう遅い・・。
・・・・・・・・・・・・・
「父さん、大丈夫?」
山奥の家で父は寝込んでいた。
麓の医者が往診してくれてひとまずは落ち着いたが、
医者はしおりだけを呼び
そう長くないことを告げた。
父の看病をしながらしおりはまた前と同じ生活を始めた。
江戸のことを忘れるかの様に作陶した。
登り窯の準備の薪割り、里に降りての農作業、全てをこなした。
忙しさにかまけて、終のことを考えずに済むことがありがたかった。
眉はすぐにゲジ眉に戻り、着物は以前と同じ木綿の着物
すでに山猿に戻っていた。
“これが一番いい
悲しいけど、私にはこれが似合ってる。“
灯ひとつない山奥でしおりはそう思っていた
何気に終を思い出す。
胃が痛い、またしくしく痛む
“終さんのこと考えたらいつも痛くなる“
胃のあたりをさすりながら眠るのが日課になりつつあった。
・・・・・・・・・・・・
万事屋ではしばらく来なかった公務員Zさんから依頼が届いて困り果てていた。
もう終であることは明白なのに公務員Zで依頼するあたりが終と言える。
その手紙には
”万事屋さんへ
私には大切な人がいました。
大好きでした。
私は彼女を大事に思うあまり
余計な詮索から守りたいあまり
おつきあいを内緒にしてました。
どうしても断り切れない上司からの見合い話で
断ろうと思いながら話が進まず
周りは動けないように固めていかれ
・・そんな私を彼女は信じてくれていました
でも。そんな彼女は明日ねって言ったのに
去ってしまいました
どうして彼女は明日って約束したのに去ったのですか?
私がもっと強く言えば済んだのですか?
私は彼女に嫌われてしまったのですか?
なかなか断れない私に愛想を尽かしたのですか?
私には彼女しかいないのに
でもあきらめるしかないんですか?
もうどうでもいいと、見合い相手と結婚する方がいいのですか?
もう、あきらめるしかないのですか?
私は収拾がつかず、どうしていいかがわかりません
今は考えるだけで下痢が止まりません。”
「Zさん、もうZさんじゃないぜ。Zがどこにも書いてないぞ
ってか・・病んでるよ・・Zさん」
ある程度事情を知る銀時ですらどうしたものかと頭を悩ませた。
情報収集して色々詳しく探ることしかないなと動くことにした。
定食屋で土方を捕まえ話を聞いた
しおりと終の付き合いは内緒だったため見合いの話を聞いた・。
「ああ、終か。
松平のとっつあんの遠縁でな。
二人とも無口だが娘の方が終にご執心になってな。
・・まあ終も満更ではないだろ
付き合ってた女もいなさそうだ、
ちょうどいいタイミングだったんじゃないか?
このまま結婚だろうな」
付き合ってた女はいるよ、危なくそう言いかけた銀時だった。