大事なもの、欲しいもの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しおりが屯所を去って既に2ヶ月がたった頃
近藤が土方、沖田を呼び、ため息をつきながら話し始めた。
「実はな、しおりさんに戻ってもらおうと思うんだが。
富子さんがあんな働き者で力仕事でできる子は今まで見たことがない。というんだよ
富子さんはここの一番古株だ、
彼女の推薦もあることだし、
あの事件だって彼女が犠牲者であることに変わりはない。
実際あのあと全ての犯人を捕らえて、事実は明らかになった
どう考えても彼女はとばっちりを受けたにすぎんと俺は思うんだが」
「関係者であったことは確かだぜ?近藤さん」
「彼女に落ち度はあったと思うか?トシ。」
「落ち度はないが、しかしもう武州に帰っただろ?」
「土方さん、山猿、まだ江戸にいますぜぃ」
「え?何で知ってんだ?総悟」
「万事屋の旦那が居場所知ってるんでさぁ」
「万事屋?万事屋が何で」
「山猿を気にかけてしょっちゅう会ってまさぁ」
「あいつ俺に会ってもそんなこと一言も言わなかったぞ」
「そりゃ当たり前でさぁ、
言えば土方さん山猿を武州へ追い返したんじゃないですかぃ?」
「あったりめえだろ、あの山猿が江戸で生きていけるはずねえだろ」
「・・俺たちが江戸で生きてられんのに山猿が無理って言うのは・・」
「ちょっと!ちょっと待て!二人とも!!」
近藤がこのままではやばいと止めに入った。
「総悟、居場所わかってるのか?」
「わかってますぜぃ」
「・・俺が直接頼みに行く。どこにいるんだ?」
「道具屋筋の正吉窯で住み込みで働いてますぜぃ。」
「正吉窯って?」
「山猿は元々あの猿の陶芸家の娘でぃ、
女中仕事よりそっちの方が元々本業で腕があるって評判になってますぜぃ」
「そうだったな、あの娘は陶芸家の娘だった
彼女も幼い頃からやってたと言ってたな。
明日にでも正吉窯へ訪ねて話をしてくる。」
近藤はそう言うと土方に「イイナ、トシ」と念を押した。
正吉窯ではしおりと正吉で菊煉をしながら話をしていた。
しおりの父親の話で名前を聞くと正吉はひっくり返しそうなほどの声をあげた。
「何で早く言わねえんだよ」
「え?」
「そりゃ将軍家がお抱えで田舎にいっ込んだにしろ
あんだけの陶芸家の娘で小さい頃からやってりゃ
それだけの腕目であったりまえだわ。
オメェは父親の腕前を知らなさすぎた」
「ただの猿オヤジですよ、
それを高くってるのは買い付けに来た人が勝手に値段つけてるだけで・・
と。本人も言ってますが・・・」
「その値段がつくのは陶芸家として超一流だからだ、
博覧会でも展示されるぐらいなんだ
もっとオヤジさんを誇りに思え」
「山に引っ込んだまま出てこないのにですか?」
「賢い生き方だ。作りたいものだけを作って
周りに流されることはしない
物を作るのに理想な生き方だぜ?」
「そんなもんですか」
「そんなもんだ」
正吉はしおりを見ながら、この子もかなりのものを作るだろうと想像できた
今はここの仕事で日常食器ばかりを作っているが、ここで終わらせるのはもったいないと思っていた。
「お邪魔するよ」
外で声がして引き戸が開いた
「近藤局長?」
しおりはいきなり訪ねてきた近藤に驚いた顔を見せた
正吉も局長と聞いて真選組だと気付いた。
「どうしたんですか?なにか焼き物でもお探しですか?」
しおりの的外れな質問に慌てて否定する
「そう言うわけじゃないんだ、今日は折り入ってたの見たいことがあってな」
頭をかきながら低姿勢になる近藤の様子に??が飛び交うしおりだったが
空気を読んで正吉が
「ちょっくら、出てくるから、局長さんそこ座って話してくダセェ」
そう言って出て行った
「お茶どうぞ」近藤に上がり框に座るようにいい、しおりも座った
「単刀直入にお願いする、頼む屯所に戻ってくれ!!」
腰を折り曲げ頭を下げる近藤にしおりは驚いて何も言えない
「どう言うことでしょうか?私首になったんですよ?」
「それはこちらとしては申し訳なかったとしか言えない。
土方や沖田と相談して、
ここはやはりしおりさんがもどらないと
それに富子さんが呼び戻せと」
「富子さんが?」
「あなたほど使える人間はいないって、それに終が」
「斎藤隊長ですか?」
「誰も終の相手が務まらんのだ。怖がって逃げたり
・・嫌がって逃げたり・・
怯えてやめると言い出したりで」
「・・あの??斎藤隊長は良い方ですよ?口下手でシャイな方ですが」
「それは俺もわかってるんだが、女中衆にはそう思えんらしい」
近藤はいかに困っているかを切々と語った
しおりは「はぁ、そうですか」としか言えない
「しおりさんが戻ってくれるのは一番なんだが、もう屯所に戻るのは嫌か?」
「山猿、戻ってこいよ」
引き戸の向こうから沖田が顔を出した。
「沖田さん」
二人の顔を見てしおりはさらに困ってしまう
正吉窯の仕事だってある。
屯所に戻るからと言って、
困ったしおりを助けてくれた正吉のところをあっさりやめるのは
気がひけるし、
しおり自身も陶芸は好きなので返事に困っていると
「週3。4でいい、来てくれたら助かる」と近藤はいう
拝み倒されてまた屯所に行くことになったのは
沖田が
「終兄さんが気を使いすぎて下痢ばっかしてる・」と言い
「このまま下痢で痩せこけて倒れる」
と脅したことで行くと返事をさせたからだった。
正吉窯には屯所から通いで行くことになり週4日窯に2日休み1日となった。