大事なもの、欲しいもの
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・・・・私が今こんな山奥にいるのは理由がある。
その1 親が山奥で自給自足の生活をしたこと
その2 父親が陶芸家でここに登り窯を構えたこと
その3 父の後継になったこと
その4 父の知り合いの紹介で結婚するはずが逃げられたこと
その5 山を降りたら自分が山猿をさらに自覚したこと
本当まだまだある。。。
他人に会うなど一月に一回
作品を買い付けに来る業者だけ
そう、ここは武州でも本当の山の中。
御近所さんは獣ばかり
それも慣れてしまえばなんてことはない。
里の学校に通っていた時だって変人扱い
避けられて当然だった。
「しおりちゃん、久しぶりね」
泥と汗まみれで山奥まで訪ねて来たのはその都会に住む叔母だった。
「ここにたどり着くのに、何回も死ぬかと思ったわ」
叔母はそう言いながら、
猪に追いかけられそうになったとか
あれはクマかも知れないとか
こっちが口を挟む暇もないほどに捲し立てて言った。
「それで、こんな山奥まで何の用なんだ?」
父がそう聞くと叔母がまた一気に話し始める
「しおりちゃん、男に逃げられたって聞いたわよ。
まあ。無理もないと思うけれどね。
叔母さんそれでいろいろ考えてみたんだけどね
やっぱりここにいることが良くないのよ
あなた今は山猿だけど数年後には山姥になっちゃうわ
だから、おばさんといらっしゃい
お仕事のツテがあってね、もうお引き受けしちゃったのよ」
「・・・山猿が山姥。仕事引き受けて来たって何?
叔母さんってば勝手に決めて来てるの?
大体ここの登り窯お父さん一人じゃ無理・・・」
きっと父は反対する、無駄足なのにそう思った父が発した言葉
「このまま山姥は困る。お前行ってこい」
「はぁ?」
顎がガックリ落ちるとはこのこと。
「いや、結婚相手に逃げられるわ、山猿度が増していくわで
困ってたんだよ。このままじゃ先は山姥で間違いない
でも男親じゃ何もしてやれんから」
・・いや、あのね、ここに住み始めたのお父さんじゃありませんか
無理やり連れて来たのお父さんじゃありませんか
それを今更山猿だの山姥だのと・・・
「じゃあ。早速連れていくわよ、ってかその服なんとかならないの?」
「山の中でそんな叔母さんのような洒落た格好しないもの」
確かに、若干擦り切れたかすりの着物に、擦り切れた帯
素足に化粧っけなし、まゆボーボー。当然素足にぞうり。
「・・・いくら何でも・・
とりあえすその髪と眉なんとかしなさい
括るなり、何なりして」
叔母はまるで小汚い何かを払うみたいに手をフリフリして眉間にシワを寄せた。
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