アヒルの子はアヒルでいい
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愛理はもう帰る里はなく、身寄りもない状態でこれから生きていくにしても何年も座敷牢にいたためそう簡単にここを出て自立できるはずもない
この儚げな美しさは逆に危ない目に遭いかねないという話も上がってきた時
おずおずと愛理は「ここでしばらく働かせて欲しい」と願い出た。
普通の生活慣れるまでは不安だろうと近藤も愛梨の願いを受け入れることになり女中として住み込みで働いて、生活に慣れれば自立する形を取ることになり、体も回復した頃改めて屯所で働くことを皆に伝えられた。
ここへきた状況を知ってる隊士たち、特に彼女を発見した沖田は安堵の表情を浮かべていた。
そして愛理は女中達に暖かく迎えられた。
夏海も事情を知っているから愛理には親切だった。
女中の中で夏海だけは通いで週3日の手伝いだったからあまり愛理と深く関わることはなく、二ヶ月がすぎた頃だった。
土方に呼ばれた夏海は屯所で住み込みで働かないかと言われた。
湊商店での手伝いもあるのでと断ろうとしたがすでに叔父の了解を取り付けていると言われ、でも住み込みは気を使う。特に夏海の性格はそうだ。
保留にして湊商店に戻るとすでに身の回りのものがまとめられていた。
「おじさん、急にどうして?」そう聞く夏海に申し訳なさそうに
「急で悪いが舞が結婚することになってな。婿が来るから夏海がいると色々ややこしい」
舞ちゃんのお腹にどうやら赤ちゃんがいるみたいで結婚を急ぐことになったようだった。
「だったら、実家に戻ります」
「いや、向こうも戻さないで欲しいっていうから」
どうして両親は戻るなっていうのだろう、不思議がる夏海に叔父は驚きの真実を告げた。
父の別れた愛人に子供がいて愛人が亡くなりその子を両親が引き取った
「それが・男の子でな。後継ぎにするんで戻ってきたら困るんだそうだ。こっちで自立してくれってな・・うちで見てやろうと引き受けたんだが・・すまない」
ここへやったのは全てそういうことの手筈が整っていて、おじは夏海がかわいそうで住み込みの仕事をさせていたのだと知った。
「わかりました。私、住み込みで働きます」そう言って笑った。
「納品は私がいくから、顔見せて、様子聞かせてくれな」そう叔父が申し訳なさげにいう。
泣きたい気分だったけれど、叔父の優しさがわかったから我慢しなきゃと思った。
舞ちゃんも夜「ごめんね」って謝りに来てくれて・・私はそれだけで十分だった・
「おめでとう、舞ちゃん、幸せになってね」そう言った。
夜、布団に入ってから両親のことを思い浮かべた。こういう結果になったにしろ・・
小さい頃から愛されていた記憶はある、大事に育てられた記憶もる。
だったら、もういいじゃないかという気持ちになれた
普通なら結婚もしている人も多いのだから、だとしたら家を出ていても不思議ではないのだから。戻れないのは寂しいけれど・・仕方ない。
ほんの少し涙を流して夏海は布団を頭からかぶった。
3日後私は荷物をまとめて屯所へ向かった。
勝手口から入っていくと、斎藤隊長が不思議そうな顔で私を見た。
「あ、あの・・今日からここでお世話になります」そう挨拶をすると。またペコリと頭を下げて去っていった。