アヒルの子はアヒルでいい
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銀行の中は緊迫していて一箇所にみんなが集められていて、夏海もその中に混じっていた。
強盗の1人にどこか見覚えがあって、夏海は思い出そうと記憶をたぐっていた。
人の顔を覚えるのはどっちかというと苦手な夏海はこう言ったことがよくあるが、見覚えがあるってことはいい思いをしたか嫌な思いをしたかどっちかだ。
誰だっけな?どこだっけな?・・・こういうとき思い出せないと結構イラッとするのよね。
動いて場所まで行って何するんだっけなって忘れてしまう同じ感覚。
「お前、あのデブか?」向こうのほうが先に気づいたらしく顔を近づけてきた
・・・・・夏海は思い出した・・・・・
屯所を辞める原因の一つ、愛理さんの仲間の1人だ。
確か1人は捕まって1人は逃げた・・
「へえ〜。痩せてマシになったな。」
ニヤニヤして私の顎を掴むから手で叩いてソッポを向いた。
「知り合いか?」
「こいつ例の愛理の時の女中だ、こんなとこで会うとは思わなかったぜ」
「あのデブでどうしようもないって言ってたやつか」
夏海はいい気がしない、デブデブデブって・・なんで言われなきゃならないのよと思う
立てこもりは長引いて人質のなかには体調を崩す人も出てきた、交渉の末体調不良は解放されていく、大人数を抱えるより少人数の方がそれを盾にして逃げやすいというのもあった。
夏海は当然解放されない、元気な上に前の事件で浪士からすれば作戦失敗の憂き目に遭わされ仲間を2人も失った
周りの目が変わってきたのはその頃だった、一部の人の解放されない不満と苛立ちは。関わりあった夏海に向けられた
「あんた、前になんかあの人たちにしたんだってね、恨まれてるからこんなことになったんじゃないの?」
「迷惑な話よね」
「ほんとよ!」
・・いや、勘違いも甚だしい・・・しかし、夏海はそこで泣くほど素直じゃない、拗らせだ。
「偶然なのにその言い方はないですよ」そう言い返すと喚くから思わず浪士たちに
「このうるさい方たち、出してあげたらどうですか?」と言った
浪士たちは思わず夏海を見て、何考えてるんだと言った顔で首を捻る
1人がいう
「そうだ、こいつを人質にして盾にして助けがくるのを待って逃げればいい
こいつは真選組にいたやつだからな」
「もう1人ぐらいいるだろ。」
「2人か、そうだな」
夏海は後の1人で揉めるだろうな、と冷めた目で残りの人間を見回してため息をつく。
こういう時って人間性出るんだよね。。と、
その時だった、まだ10歳ぐらいの男の子が手をあげる
「俺が残る」と
祖母らしく人が慌てて止めて「ばあちゃんが残るよ」と言い出して・・・
みんな、どこか安心した顔をしている・・
皆が解放されていく中、男の子も残るという。
「情けないね、こんなお年寄りと子供人質に取るなんて武士の片隅にもおけないよね」
夏海は言い切った。
浪士の1人は「確かにそうだ」と言い、・・結局夏海1人が残された。
“こんなもんかな”と自虐的な笑いが出る。
拗らせてるな、と思う
足元が震えてるけど、怖いと言えない、泣けない。