アヒルの子はアヒルでいい
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終と夏海はそれから非番の日は会うようになっていった。
すきだとも付き合ってほしいとも言ってない2人が気持ちを深めて行くには十分な時間だった
夏海はこうして会えるだけで十分幸せな気持ちになれていることが確かで、それ以上を望もうという気持ちは心の底でありながらも、今までを思うとまるで天地の差があって定期的に終に会えることは奇跡のように思えていた。
・・・・・
「あんたほんとに綺麗になったわよ」いつものお茶タイムにアゴミが夏海の顔をしみじみ感慨深げに見ていう。
「え?」
「3番隊の隊長とうまくいってるんでしょ?」
「ご飯食べたりしてるだけだけで。。でも前より会えるからそれが嬉しいなって」
「告白されてないの?」
「そういうのは。ただ非番の日にはお誘いがあって・・」
「向こうも無口だそうだからねえ。・・・夏海自分からいっちゃうのって・・あんたも無理なタイプよねぇ・」
「無理ですぅ・・・」
夏海の顔を見るも、無理よねぇという感じは見て取れる、無口なのは向こうだけじゃないから仕方ないのかしらねぇ・・
前よりは話すようになったけれど夏海の場合は相手が限定されてるからお互い様な2人なのかもね。と。
・・・・・・
その日は映画に出かけようと約束をした日で、終との待ち合わせは少し早い午前中で映画館の前。
終が選んだのは恋愛コメディ映画で終も夏海もホラーが苦手、デートで悲しい映画も選ばなかった、笑い合っていたいそれが終は2人でいるときに一番大事にしていることだった
仕事上、血生臭い出来事も多い毎日の中で夏海とこうして会うことはリフレッシュにもなり元気を取り戻すことができる大事な時間。
並んで椅子に座り、ひとつのポップコーンを2人で分けて食べることも自然な行動になっている
ただ告白はしてないし、キスもしていない
映画館を出てそのまま2人はタクシーで少し遠い海まで移動した。
たまには街を出て違う所へ連れて行こうと思っていたから、ベタな選択ではあったけれど海もいいかもしれない、天気もいいし海辺を歩くと気持ちいだろうと考えた
「綺麗ですね、海って本当に何年ぶりかです」そう言って笑う夏海も終も笑顔になる
眩しい日差しが海面に反射してキラキラと輝くのを見ながら海風にあたり歩く
饒舌に話せない終は夏海の話し掛ける言葉に頷いていた
突堤を歩いて海の向こうに一番近い場所に座って途中で買ったサンドイッチと缶コーヒーで遅めのランチタイムはどこかのんびりして、ゆったり時間が流れていく。
どこかに食べに入るよりこっちの方がいいと夏海がいい、終もこっちの方がいいと意見が一致した。遠くに鳥が飛んでいて並んで見ていた時、指先が触れた、終がその手をそっと握ると夏海も握り返す、お互いに顔は見ないけれど顔が熱い
いい大人がまるで学生の恋みたいに少しずつ前に進み始めたデートで、帰るまで握られた手が離されることはなかった。
翌日屯所で終が女性と手を握っていたと目撃情報が飛び交い、終に聞き出そうとするが
顔色ひとつかえず飄々と無言を貫く姿に誰も何も聞くことはできなかった。