一世一代の恋
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新涼に到着後凛はエージェントと合流し、神威と別れた。
「こちらです。色々集めておきました。」
小さな温室に案内されるとそこには小さな花の芽が息吹いていた。
咲き誇る花も好きだが、この小さな芽が凛は何よりも好きだった。
「凛さん、この花好きでしょう?」
花は全て好きなのだが、凛は手渡されたその花が特に好きだった。
「これは洛陽でよく咲いている花ですよ、こちらではなかなか育たなくて・・」
その花の鉢植えを譲ってもらい、とりあえずホテルにチェックインして明日の予定をチェックする。
ーーーこの星は比較的安全で夜も出歩ける
博物館も24時間空いている。
出かけてみようかな、そんな気分になって足を運んだ。
深夜の博物館には誰もいない、
遥か太古の植物の化石や生き物の骨格標本がある。
神威は博物館に入って行く凛の姿を発見し、後をついて行った。
「ふふっ、そうなのね」
何かに語りかける凛がいる。
誰もいない広い博物館のはずなのに、彼女の周りをあの日見た光が飛んでいる。
それを手に乗せて話しかけている。
光が塊になり、花や動物の形になり彼女の周りにまとわりついている。
神威はあまりそう言ったものを信じる方ではないけれどそれは目の前にあった。
彼女は声なき死にゆくものの声だけではなく、こうして描くことができるんだ。
そういえば、彼女は自分を人間とは言わない、生き物だと言った。
人間にはない力・・・そして天人でも持ち得ない力
「ふふ、駄目ですよ、そんなに戯れちゃ。」
立ち上がりまとわりつく光に優しく言う
それは見たことがない横顔だった。
思わす一歩、歩みを進めた神威だったが、気配に気付いた光が
まるで一気にカーテンを引くように消えていった。
「誰ですか?」
そう声をかけた凛に
「邪魔をしてごめんね」
そう言って神威は近づいていった。
「見ていたんですか?」
「貴女がここに入っていったから、ついてきちゃったよ。」
少し罰が悪そうに言う神威に
「気にしないでいいけど他言しないで。」と言った。
そのまま博物館の中を二人で見て歩いた。
神威にはさほど興味のないものだったけれど
再現された太古の森に入った時、建物の中なのに温かな風が吹いた。
まるで木の声を聞くようにその枝に触れ・・いや枝が伸びて
彼女に触れた。
神威の存在などないようなその太古の森の中で
凛は人には絶対向けないような優しい瞳と微笑みで
小さく何かを呟いていた。
そう、並外れた戦闘能力で星一つ潰せる
闘争心の塊のような夜兎
そして消えた命に想いを馳せて生きる闘争心などひとかけらも持たない優しさを持つ凛。
両極にいる二人がほんの少しだけ過ごした時間は
他の来場者の足音が聞こえて終わった。