一世一代の恋
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少し離れた神社の階段に場所取りをした神楽と凛は花火が始まるのを待っていた。
「銀ちゃん達とはぐれちゃったアル」
「二人だからいいじゃない、銀さん達も別のところで見てるわ。
あ、さっき買ったりんご飴。」
神楽にそれを手渡し大きな音が聞こえ始めた空に舞う花火を見上げた。
「ここ絶景ポイントだったね」
「そうアルな〜」
一時間ほど上がり続けた花火を見て神楽と顔を寄せて
笑いあい、らしくなく高い声を出して凛はその時間を楽しんでいた。
ーーー”どど〜ん”
最後の大きな花火が上がり空に消えたのを見てから二人は立ち上がった。
その時、プチンと音がなった
「あら?」
「あ。凛、鼻緒が切れてるアル」
凛の下駄の鼻緒が切れてしまっていた。
「ああ。慣れないから歩き方悪かったのね、仕方ないわ。。片方は脱いで歩くしかないかしら?」
「銀ちゃん達呼んで来るアル!」
神楽が階段を降りようとするのを凛は止めた。
「大丈夫、ここで一人で待つより
神楽ちゃんと帰った方が安心。」
そう言って笑った。
「そうアルか?じゃあ、ゆっくり歩くアル。」
階段を降り始めた二人だが、
「歩きづらいから裸足になるわ。」
そう言って両方下駄を脱いで歩き始めた凛に小石に気をつけるアル、と神楽は心配して言った。
神社を出た直後、「チャイナ」と呼ばれた。
そこには沖田がいた。
「どうした?」視線を凛に向けた。
「凛の下駄の鼻緒が切れたアル。仕方ないからこのまま帰るアル。」
沖田は無言のまま、その下駄を凛の手から受け取った。
「直してやるからちょっとそこに座って待ってろぃ」
「直せるアルカ?」
「黙って待ってろぃ」
「あの、裸足で大丈夫ですから・・」
そう言う凛に
「足の裏傷だらけにしたくなかったら、黙ってろぃ」
そう言った。
スカーフを外し刀で割いて細い紐を作り器用に鼻緒を結び直し、何度かしごいて差し出した。
「ありがとうございます、すみませんスカーフ・・」
「・・いや。まだ新しいのがあるんで大丈夫ですぜぃ。」
「もう警備は終わりアルか?」
「ああ。もう屯所に戻る、・・こっからだと明かりも少ないから
送っていく、どうせ戻る道でぃ」
「親切アルな。どS王子。サド野郎。」
「うるせー、チャイナ。」
二人のやりとりを微笑ましく思いながら見つめていた。
万事屋の前まで来た時
「じゃあ、なチャイナ。」そう言う沖田に
「沖田さん、お時間はありますか?」と凛が聞いた。
「え?」
「親切にしていただいたお礼にお茶でもいかがですか?神楽ちゃんも来るよね?」
「お菓子はナニアルカ?」
「焼き菓子はあるわよ」
「行く行く、おい、サド野郎w〜。のお菓子は絶品アル、
食べないと損アルヨ〜。」
「お嫌でなければ、どうぞ・」
小腹も空いていたし、ちょうどいいかと、神楽と行くことにした沖田だった。
屁怒絽はもう自室に引っ込んでいた。
二人はダイニングテーブルの椅子に座った。
店に入るなりお菓子の甘い匂いがして、どこか優しい気持ちになるのはどうしてだろう、沖田はそんなことを考えていた。
浴衣に簡単にエプロンをつけて、お茶の用意をする凛の後ろ姿を見ていた。
遠い昔、姉上もそうやって台所に立っていた。
ふと、懐かしい記憶が蘇っていた。
「はい、どうぞ。」
そこには優しい香りの紅茶と焼き菓子、そして沖田のために簡単なサンドイッチが添えられていた。
「美味しそうアル、食べていいアルか?」
「どうぞ、沖田さんもどうぞ、お口に合うかはわかりませんが。」
「サド、食べるアル、うま過ぎてびっくりするアルよ。
あの高血糖の銀ちゃんが凛のケーキしか食べないアルよ。」
「いただきます。」
そう言ってサンドイッチを食べ始めた沖田は思いの外お腹が減っていた事に気づく。
食べている二人をニコニコしながら、凛は向かいに座って見ていた。
「凛、サンドイッチ私も食べたいアル」
「はいはい、たくさんあるから食べて。」
そのやりとりを見ながら
沖田は彼女に対する警戒心が溶けていくのを感じていた。
神楽と沖田が並んで歩くのを見送った凛は小さく笑った。
部屋に戻り、直してもらった下駄を手に取ってその鼻緒を見た。
「・・・そうよね。人間は侍という心をそれぞれに持つ生き物
彼も・・同じ。そういう生き物。優しさも
使命のために生きる残酷さも持ってる
・愚かで・・そして・・・・・。」
そこまでいうと瞳を閉じため息をついた。
窓を開けると夜の空気が気持ちいい
・・・こんな夜は
手をかざして彼らと話をしたくなる・・・
「やっぱり声かければ良かったかな。浴衣姿綺麗だったなぁ。」
屁怒絽の店が見えるビルの屋上に神威が座って呟いた。
「団長〜〜、またここ〜〜??何回目〜〜??」
阿伏兎が呆れたように言った。
「・・・・ここ好きなんだよね〜。」
ニコニコと笑って言う。
この頃になると阿伏兎も気づいていた。視線の先の住人に。
窓辺から手を伸ばし金の光と戯れる凛の姿
それを黙って見ている神威の横顔
それを交互に見て
阿伏兎はバレないように口元を上げて笑った。