そう、先刻途中で会った神楽に頼んでいた用事があった。


帰りに一緒に帰れたらご飯をうちでご馳走する約束にしていたからジャストタイミングとはこのこと。




人混みでは流石に手出しはできないと思っていたから。





「凛・・ってかなんでバカ兄貴がそこにいるアルか？」




・・バカ兄貴？？神楽ちゃんの顔を見てその男の顔を見る





「・・・・・・・」


男の方も神楽ちゃんを見て私を見た。





「お前、この人知ってるの？」




「花屋の凛サンアルヨ。ってか神威！なんかやってないアルな？

凛さんはお前が関わっていい人じゃないアル！」






そう言って立ち塞がるような仕草を見せる

肩を竦めて神楽を見る神威。




神楽はやれやれと言った様子で振り返った





「凛さん、これ神威、私のバカ兄貴アル、関わるとバカが移るアル」






・・これって大成功だったりするよね。

そんなことを思いながら利用する羽目になった神楽ちゃんに心の中で誤った






口元を上げて神威はニタっと笑うと


神楽の頭をグリグリと撫で、「またくるよ」明るく言った。




そして「またね。凛さん。今度はちゃんと相手してよね、気に入っちゃったからさ」



去り際耳元で聞こえるか聞こえないかの低い声で囁いた。




・・・・・神威はちゃんと見ていた・・・・


眉一つ動かさず、感情を出さず神威の言葉を意に介さないような金の瞳を。




“・・へえ、思った以上にしっかり壁作る人なんだ。

それに動じない・・面白いよね

絶対また会いにこよう・・・“






まだこの時神威は凛との深い関わりを何も知らなかった。

神威というより凛と夜兎との関わりを。