三暮のある風景
本屋の店頭、通りすがりに目に入った「バスケット」の文字。
高校生の頃まで愛読していた雑誌の表紙に足を止めた。
「あの山王が初戦敗退…」
破った相手は自分の母校ときた
「マジかよ…」
公立の部活なんて、よっぽどの歴史か戦績が無いと、大会に情熱なんて傾けない。楽しめればそれで良かった。
「やりやがったな…アイツ…」
暑苦しい目標を掲げ、それを俺達に強要したムカつく後輩。
俺達の代が卒業してからは、部員数が減ったと聞き、然もありなんと鼻で笑った。
だがヤツは全国の舞台にまで上り詰めた。
有言実行?いや、制覇してねぇから志半ば…ってとこだろ…
勝った相手よりも山王工業の写真の方がデカく載ってるのにウケつつ、スタッツと解説を眺める。
得点源は…
「三井…」
確か赤木と同様クソ生意気な後輩がいたけど…
「アイツかぁ?」
中学MVPを鼻に掛け、大口叩いていたわりに怪我してからパタリと来なくなった。とっくに辞めたと思っていた。
「あのチビも辞めなかったのか」
試合風景の小さな写真に辛うじて写っているこれまた生意気だった後輩。
問題児と言ってもいい面々が称賛されている事が、面白くなかった。
「竹中先輩、お久しぶりです」
急にかかる声。
笑顔を向ける眼鏡の男
『誰だっけ…』
湘北の制服。肩には高校の時に散々見馴れたスポーツバック。
先輩って呼ぶってことは、バスケ部の後輩だよなぁ…
「それ、俺も丁度買いにきたんです」
それ、と俺が手にしていた雑誌を指差し、男が言う。
「頑張りましたよ、赤木」
真っ直ぐな瞳で、俺を見てくる。
あなたは?そう問い掛けられている気がした。
「……チッ、そうかよ…」
俺は雑誌を乱雑に置き、急いで去った。
すぐにでもその場から離れたかった。
道の角を曲がる時、肩越しに本屋の様子を伺えば、眼鏡の後輩の隣に同じ制服の男がいつの間にか立っていた。
妙に威圧的で、目付きの悪い野郎だった。
『カツアゲでもされてんのか?』
可哀想に…と後輩に同情の目を向けたら、ジロリと睨んだ野郎と目が合ってしまった。
俺は小走りで角を曲り、死角に入った。
高校生活はそれなりに楽しかった。
だけど部活の思い出はよく覚えていない。
『俺…何、頑張ったけな…』
とりあえず明日、大学のバスケサークルを見学してみようと思った。
・
・
・
「誰だよアイツ」
「えー?オレ達の一コ上の竹中先輩だよ」
「覚えてねー」
「三井すぐ入院しちゃったからあんまり交流無かったか…」
「てか、お前仲良かったのかよ」
「……あんまり…」
「仲良くもねーのによく話掛けられんな」
「なんか、バスケ雑誌の湘北のページ見てたから、つい声掛けちゃった。まだバスケの事好きなんだな~って…」
「…お前のそーいうとこな…」
「ん?」
「いや…」
「あの頃なぁ…三井も居たら赤木の味方になってくれたかなぁ…」
「はぁ?!」
高校生の頃まで愛読していた雑誌の表紙に足を止めた。
「あの山王が初戦敗退…」
破った相手は自分の母校ときた
「マジかよ…」
公立の部活なんて、よっぽどの歴史か戦績が無いと、大会に情熱なんて傾けない。楽しめればそれで良かった。
「やりやがったな…アイツ…」
暑苦しい目標を掲げ、それを俺達に強要したムカつく後輩。
俺達の代が卒業してからは、部員数が減ったと聞き、然もありなんと鼻で笑った。
だがヤツは全国の舞台にまで上り詰めた。
有言実行?いや、制覇してねぇから志半ば…ってとこだろ…
勝った相手よりも山王工業の写真の方がデカく載ってるのにウケつつ、スタッツと解説を眺める。
得点源は…
「三井…」
確か赤木と同様クソ生意気な後輩がいたけど…
「アイツかぁ?」
中学MVPを鼻に掛け、大口叩いていたわりに怪我してからパタリと来なくなった。とっくに辞めたと思っていた。
「あのチビも辞めなかったのか」
試合風景の小さな写真に辛うじて写っているこれまた生意気だった後輩。
問題児と言ってもいい面々が称賛されている事が、面白くなかった。
「竹中先輩、お久しぶりです」
急にかかる声。
笑顔を向ける眼鏡の男
『誰だっけ…』
湘北の制服。肩には高校の時に散々見馴れたスポーツバック。
先輩って呼ぶってことは、バスケ部の後輩だよなぁ…
「それ、俺も丁度買いにきたんです」
それ、と俺が手にしていた雑誌を指差し、男が言う。
「頑張りましたよ、赤木」
真っ直ぐな瞳で、俺を見てくる。
あなたは?そう問い掛けられている気がした。
「……チッ、そうかよ…」
俺は雑誌を乱雑に置き、急いで去った。
すぐにでもその場から離れたかった。
道の角を曲がる時、肩越しに本屋の様子を伺えば、眼鏡の後輩の隣に同じ制服の男がいつの間にか立っていた。
妙に威圧的で、目付きの悪い野郎だった。
『カツアゲでもされてんのか?』
可哀想に…と後輩に同情の目を向けたら、ジロリと睨んだ野郎と目が合ってしまった。
俺は小走りで角を曲り、死角に入った。
高校生活はそれなりに楽しかった。
だけど部活の思い出はよく覚えていない。
『俺…何、頑張ったけな…』
とりあえず明日、大学のバスケサークルを見学してみようと思った。
・
・
・
「誰だよアイツ」
「えー?オレ達の一コ上の竹中先輩だよ」
「覚えてねー」
「三井すぐ入院しちゃったからあんまり交流無かったか…」
「てか、お前仲良かったのかよ」
「……あんまり…」
「仲良くもねーのによく話掛けられんな」
「なんか、バスケ雑誌の湘北のページ見てたから、つい声掛けちゃった。まだバスケの事好きなんだな~って…」
「…お前のそーいうとこな…」
「ん?」
「いや…」
「あの頃なぁ…三井も居たら赤木の味方になってくれたかなぁ…」
「はぁ?!」