眼鏡紳士

コートやマフラーが恋しくなってきた、そんな寒い季節。

「仁王君、お誕生日おめでとうございます」

大好きなあの子からの祝いの言葉は格別だった。

「…なン…急に。一瞬、ビビった…」
「私がお祝いの言葉を言ってはいけないのですか?」
膨れる顔が妙に可愛い。

「…や、素直に嬉しいけども…」
こういうことを一番期待してなかったのも事実で。
「…あぁ…うん…嬉しい…」
期待していなかっただけに、その喜びも大きい。

「これからどこかへ寄ろうと思うのですが、如何ですか?」
「それって…誕生日デートしてくれんの?」
やばい。口元が緩む。
「デー……まあ、そういうことにしておきましょうか」

大好きなあの子と肩を並べて歩く。
毎日一緒に帰っているはずなのに。

そのひとときが、
無性に幸せだと感じた。

12月4日、大好きなあの子と同じ時代に生を受けたことを心から感謝した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ


「?…ヒロ、これ何?」
「あ!そっそれは…」

ヒロの鞄の中から少し見えていた白い紙。
一瞬手紙に見えたそれは、墨で楷書された文字がつらつらと並べられていた。

「…“柳生「仁王君、お誕生日おめでとうございます」…仁王が一瞬驚く確率97.8%。しかし、内心ではもの凄く喜んでいるので大丈夫”……ってコレ…」
「あっ、あのっ…仁王君への誕生日プレゼントにどんなのがいいか決めかねて、それで柳君に相談しましたら…この内容を実行すれば一番喜ぶと教えていただいて…」
「“食事のあと仁王の自宅へ誘われる確率100%。これで仁王は充分満足しているはず”…………」

確かにヒロに奢ってもらったあと、自分ンちに招いて、今に至るわけだが…。

さすが、達人。抜かりない脚本だ…。

「つか、ヒロ!今までの言葉は全部セリフかよ!」
「ち、違います。ちゃんと心を込めて言いました!」

…ヒロも大概、詐欺師だよな…
30/41ページ