眼鏡女王

偶には恋人らしくデートでもしてみようか、と知念クンに提案してみた。

彼は当然賛成してくれる。


さて、デートで何をしようか。
知念クンの趣味に合わせてホラー映画でもみようか。
個人的にはカフェや公園でのんびり話すだけでも充分だけど、
ただ隣りに居てくれるだけで満たされる。


約束の日の前日は、柄にもなく浮き足だっていた。
下ろし立ての靴を履いて持ち合わせの場所へ。
約束した時間より遅れるのはいつものこと。
携帯電話を弄りながら知念クンを待った。

段々携帯にも飽きて時間を確認する。
自分が到着してから二時間は悠に経っていた。
いくらなんでもこれは遅すぎる。
生憎知念クンは自分用の携帯電話を持っていない。
自宅にかけるのも憚れるので、向こうからの連絡を待った。

『いっそ知念クンちに行ってしまおうか…』

否、すれ違いになったらそれこそ時間の無駄だ。
腰掛けるのに丁度良い段差で頬杖ついて彼を待つ。

どうしてこんなにワジワジするんだろう…

日常生活、苛立たしいと思う事はいくつもある。
でも、こんなに心掻き乱されるのは知念クンのことを考えている時だけだ。




「え、永四郎―ッ!」

漸く知念クンが姿を現した。
息急き切ってこっちに走ってくる。

「わ、わっさん…」
「俺とのデートすっぽかして何してたの?」

知念クンは少し俯いて息を整える。
丁度、目の高さに知念クンの頭がくる。
メッシュ部分に木の葉が付いていた。

「……ウージ畑で昼寝して、寝過したんでしょ」
「…!な、何でわかったんだ?!」

俺は昨夜から寝付けなかったというのに。

「罰として、今日はとことん俺の我儘に付き合ってもらいますよ」
「あいー…」

知念クンの困った顔を見ているだけで既に満たされているけど、

それは内緒にしておこう―――
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