寒い季節は、君のぬくもりを感じたい




永四郎が部誌を書いている時に見える項が好きだ。

思わず、触れてみた


「っひゃっ…！」

聴いたこともない悲鳴に、反射的に手を引いた。
正直、可愛くない。
(可愛い悲鳴上げられてもドン引きだけど)
永四郎は首を押さえて俺に振り返る。
「…っ、いきなり背後から変な事しないでくれる？！」
睨まれたってちっとも怖くねぇ
「……つか、いつもなら裏鉄拳なのに、油断し過ぎじゃね？」
「今からでもして差し上げますよ？」
拳を握って微笑む永四郎は怖かった。
「……冗談。悪ィ」

「それより平古場クン、手、冷た過ぎじゃないですか？」
珍しく永四郎の方から触れてきた。
「俺、心があったかいから」
「何ソレ」
「あれ、知らね？心があったかい人は手が冷たいての」

永四郎は関心なさそうな顔をしたが、思わず自分の手を握ったのを俺は見逃さなかった。

「永四郎も冷たいな」
永四郎の手の上にさらに俺の手を重ねる。
「…そ、そうですか？」
「ああ…血行悪いんじゃね？」
「……君は心があったかくて、俺は血行が悪いですか…」
永四郎が不本意だと眉根を寄せる。

俺は握っていた手を擦り出した。
「…何してんの」
「こうすりゃあったかくなるじゃん」
「止めてよ、気持ち悪い」
「やっぱ冬は手ぇ握って帰りたいし。手袋越しなんて味気ないだろ？」
「そんな事しませんよ。大体、君と手を繋いで帰る意味がわからない」
「恋人なら当然だろ」
「だから何で」


繋ぎたい、繋がっていたい


叫びたい感情を飲み込んで、自分の手に視線を落とす。

絡めた互いの指と指は、徐々に熱を帯び、まるで導火線のようだ


「じゃあ、これで許す」


点火にキスひとつ