眼鏡女王

近くの神社で参拝列に並んでいる中に、知った顔を見つける。

「おう、永四郎」
「田仁志クン…」
丁度永四郎が最後尾だったので、そのまま列に加わった。

「また随分連れてますね…」
俺の足元に引っ付いている妹弟達を見て、永四郎が言う。
「大人達は酒盛りよー。だから俺が自然と子守役だ」
只でさえきょうだいの多い我が家に加え、甥と姪が追加されている。
正月の宴席から外された子供達は、初詣という名目で体よく追い出されたというわけだ。

「大変ですね…」
永四郎が2、3人、手を引いてあげる。
俺の妹弟達は日頃から知ってる仲だけに、永四郎の方が良いと俺の手を離し、永四郎に懐きだした。さっき綿菓子買ってやったのに。コノヤロウ。


「お金を前の箱に入れて、で、この紐をガラガラしてお祈りするんだぞ」
「俺ガラガラやる!」
「あたしがやるの!」
「順番!順番!」
騒がしい子供達をまとめている中、永四郎をふと見る。

静かに目を閉じ、祈りを捧げている

俺が言うのもなんだが、永四郎は大概のことは何だって叶う人間だと思っている。
そんな男が真剣に祈るものって何だろうと気になって、思わず見つめてしまった。


俺の視線を感じたのか、永四郎は顔をあげる。

「…あ、待たせてしまいました?」
「いや…」
「何ですか?」
「永四郎の願い事、叶うといいな」

俺は心の底からそう思って言った。
友が、幸せであればいいと。


「………そうですね…」

でも、その時の永四郎が困ったような表情をした理由を、俺は知る由もなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


大抵のことは努力でどうにかなるものだ

でも、

ただひとつ、
たったひとつだけ
祈らずにはいられない


もう少しだけ、彼の傍にいさせてください
23/42ページ