眼鏡女王

1月の第二月曜日。
所謂‘成人の日’と呼ばれる日で、かつて同じ青春を共にした学友達が久しく集まった。
島暮らしといえど、学校を卒業した後は会う機会も減り、懐かしさを覚える。
島を離れた人間なら殊更。


成人式の後、中学時代のクラス会が行われた。
開始時間より遅れて開催場所の飲み屋へ入った俺は、無意識に彼の姿を探していた。
幹事に軽い挨拶をした後、カウンター席に座っていた意中の彼に近づいた。

「…式、見なかったな、木手」
「不知火クン…」
木手は一瞬目を見張ったが、すぐに澄ました表情に戻った。
「丁度良い飛行機がなくて」
「…そっか…」
久しぶり故か、どう話してよいものか迷った。

俯き気味の木手の横顔を見る。
年齢と共に変化する成長を除けば、彼は中学当時の面影のままだった。

「何ですか?」
「…いや…あんまり変わってねぇな…って」
凛としたその佇まいは、思わず「主将キャプテン」と呼びたくなるほどだった。
「不知火クンこそ…」
不意に木手は俺の耳元に顔を近づけた。
妙に甘い匂いがして、軽い眩暈を覚える。

「俺ね、中学の時からずっと好きだったんですよ、キミのこと」


「………え…?」


青天の霹靂とはこの事だ。

俺は自分の耳を疑った。
思わず木手を凝視する。

「当時と変わらなくて、何だか嬉しくなっちゃった」
「おおおお前、酔ってるだろ?!」
「そうかも知れないですね」
動揺が隠せない俺が面白いのか、木手は悪戯が成功した子どものように笑った。

幸い、他の連中はカラオケに夢中だ。
俺はこのまま、木手の想いに応えていいのだろうか。
木手の肩を抱いた瞬間、木手に背負い投げされるんじゃないかとか、
誰にも気付かれず店を出た途端、『大成功!』なんて看板を持った誰かが現われるんじゃないかとか、
頭の隅で色んな仮定が思い起され、警鐘を鳴らす。

所詮は報われない想いなのだと諦め続けてきた5年間。
ようやく思い出として頭の中を整理したところだったのに、

それを今更……



神様はなんて残酷なんだ―――

22/42ページ