色々眼鏡
バレンタインデー用の菓子を用意するため、卸雑貨店に来た手塚と柳生
「手塚君、ここのショップは品揃え豊富でとても良いですよ」
「…そうみたいだな…数が多すぎて逆に何を買ったらよいかわからなくなるが…」
「作るのはチョコレートですか?それともチョコ味のケーキとか別のお菓子を?」
「初心者でも作れるものなら特に…」
「それではやはり定番のチョコ菓子ですかね。あちらに材料一式がありますよ」
店内を見て廻る二人
「トッピングはされますか?色々あって可愛いですよね」
「…うむ」
手塚がカラフルなチョコスプレーの袋を手にした時、別の方からも手が伸び、お互いの手が触れた。
「…っと、失礼」
相手を確認すれば、よく見知った顔だった。
「……木手…」
「おや、奇遇ですね」
「…随分たくさん買っているな」
買い物カゴの中の大量の菓子を見て手塚が言う。
「もしかして、部の皆さんにあげるんですか?」
「…まあ、部長として部員を労うのは当然でしょ」
「さすが木手君。部長の鑑ですね」
柳生の言葉に手塚がしょんぼりと項垂れる。
「……俺も部員全員に贈った方が良いのだろうか…」
「それはダメーーーッ!!」
「!?」
突然掛かった声に、三人が振り返る。
「乾…!?」
声の主は手塚のチームメイトの乾であった。
「何でココに居る」
「手塚の跡を付けちゃった☆」
「お前という奴は…」
「それより!今、聞き捨てならないこと言ったでしょ!」
「部員みんなに…ってやつか?」
「手塚の愛は俺だけのもの!チョコ配るなんてダメ!絶対!」
半ば泣き脅しな乾に手塚は眉間の皺を深くする。
手塚達が悶着を起こしている様子を溜め息を吐きながら眺める柳生
その肩を、誰かが突っつくように叩いた。
「もしもし、」
振り返えれば、エプロン姿の店員であった。
「あ、申し訳ありません。店内で騒々しくして…」
「お客さん、買うもの決まりました?」
「え?…いえ…まだ…」
「なら此方のチョコを買いんしゃい」
店員が有無を言わさす柳生の手に商品を握らせた。
「あ、でも…彼の好みかどうか…」
「大丈夫じゃ。仁王君はこういうのも好きじゃよ」
「はあ、…って、今何て…!?」
店員の言葉を今一度確認しようと、柳生が握らされた商品から視線を移すと、店員の姿は既に無かった。
「今の店員さん…もしかして…」
手塚達の悶着に関わりたくないと逃げるようにその場から離れた木手。
別のフロアで菓子を物色しているチームメイトに声を掛ける。
「はいはい、キミ達、買うものさっさと決めなさいよ」
「けー君何買う?」
「美味そうなのがいっぱいで迷うんだよなー」
「永四郎!俺、コレとコレね」
チームメイトの一人、平古場が木手の持つ買い物カゴに菓子を投げ入れる。
「平古場クン、一人一個って言ったでしょ」
「どっちの味も食べてみてぇんだよー」
「ダメです。どちらか戻してきなさい」
「あ!じゃあ、寛と俺の分」
「それじゃあ、知念クンの欲しいもの買えないじゃない」
「俺は特に欲しいもの無いし構わん」
「お、やっぱ寛は話がわかるな」
「ったく…じゃあ、平古場君は部チョコ無しね」
「何で!」
「何で、って二つもあればいらないでしょ」
「俺は!永四郎からのチョコが欲しい!」
「店内で叫ばないでよ…それならどっちか諦めて」
「うっ…ううっ…」
平古場は泣く泣く一つを選び、諦めた方を陳列棚に戻す
「永四郎のチョコってどうせゴーヤー味だろ?凛君暴れるんじゃないの?」
「既存のチョコか“永四郎の”手製か、苦渋の選択だよな」
******
「結局みんなに配るんだ…」
「俺は部員みんなに感謝している」
「…うん、まあ、手塚は部長だもんね」
「ああ、部長だからな…だが、手塚国光としてはまた別だ」
「…え…?」
「手作りなのはお前のだけなんだぞ?」
「て、手塚…!」
「『グミチョコレートパイン味』変わったものがお好きなんですね…仁王君」
「ほうかの…うん、美味い」
「ところで…駅前の卸雑貨店の店員さんに知り合いが居ます?」
「いんや」
「仁王君のお名前を聞いた気がしたのですが…不思議ですね…」
「不思議じゃのう」
「…愛の試練と思えば…ゴーヤーなんか…ゴーヤーな、ん、か……」
「いいからさっさと食べなさい」
「ギャッ!………って、あれ…美味い…」
「味が再現出来てるかはわからないですけど」
「あ、俺が諦めたやつの…」
「今年だけ、ですからね」
Happy Valentine!
「手塚君、ここのショップは品揃え豊富でとても良いですよ」
「…そうみたいだな…数が多すぎて逆に何を買ったらよいかわからなくなるが…」
「作るのはチョコレートですか?それともチョコ味のケーキとか別のお菓子を?」
「初心者でも作れるものなら特に…」
「それではやはり定番のチョコ菓子ですかね。あちらに材料一式がありますよ」
店内を見て廻る二人
「トッピングはされますか?色々あって可愛いですよね」
「…うむ」
手塚がカラフルなチョコスプレーの袋を手にした時、別の方からも手が伸び、お互いの手が触れた。
「…っと、失礼」
相手を確認すれば、よく見知った顔だった。
「……木手…」
「おや、奇遇ですね」
「…随分たくさん買っているな」
買い物カゴの中の大量の菓子を見て手塚が言う。
「もしかして、部の皆さんにあげるんですか?」
「…まあ、部長として部員を労うのは当然でしょ」
「さすが木手君。部長の鑑ですね」
柳生の言葉に手塚がしょんぼりと項垂れる。
「……俺も部員全員に贈った方が良いのだろうか…」
「それはダメーーーッ!!」
「!?」
突然掛かった声に、三人が振り返る。
「乾…!?」
声の主は手塚のチームメイトの乾であった。
「何でココに居る」
「手塚の跡を付けちゃった☆」
「お前という奴は…」
「それより!今、聞き捨てならないこと言ったでしょ!」
「部員みんなに…ってやつか?」
「手塚の愛は俺だけのもの!チョコ配るなんてダメ!絶対!」
半ば泣き脅しな乾に手塚は眉間の皺を深くする。
手塚達が悶着を起こしている様子を溜め息を吐きながら眺める柳生
その肩を、誰かが突っつくように叩いた。
「もしもし、」
振り返えれば、エプロン姿の店員であった。
「あ、申し訳ありません。店内で騒々しくして…」
「お客さん、買うもの決まりました?」
「え?…いえ…まだ…」
「なら此方のチョコを買いんしゃい」
店員が有無を言わさす柳生の手に商品を握らせた。
「あ、でも…彼の好みかどうか…」
「大丈夫じゃ。仁王君はこういうのも好きじゃよ」
「はあ、…って、今何て…!?」
店員の言葉を今一度確認しようと、柳生が握らされた商品から視線を移すと、店員の姿は既に無かった。
「今の店員さん…もしかして…」
手塚達の悶着に関わりたくないと逃げるようにその場から離れた木手。
別のフロアで菓子を物色しているチームメイトに声を掛ける。
「はいはい、キミ達、買うものさっさと決めなさいよ」
「けー君何買う?」
「美味そうなのがいっぱいで迷うんだよなー」
「永四郎!俺、コレとコレね」
チームメイトの一人、平古場が木手の持つ買い物カゴに菓子を投げ入れる。
「平古場クン、一人一個って言ったでしょ」
「どっちの味も食べてみてぇんだよー」
「ダメです。どちらか戻してきなさい」
「あ!じゃあ、寛と俺の分」
「それじゃあ、知念クンの欲しいもの買えないじゃない」
「俺は特に欲しいもの無いし構わん」
「お、やっぱ寛は話がわかるな」
「ったく…じゃあ、平古場君は部チョコ無しね」
「何で!」
「何で、って二つもあればいらないでしょ」
「俺は!永四郎からのチョコが欲しい!」
「店内で叫ばないでよ…それならどっちか諦めて」
「うっ…ううっ…」
平古場は泣く泣く一つを選び、諦めた方を陳列棚に戻す
「永四郎のチョコってどうせゴーヤー味だろ?凛君暴れるんじゃないの?」
「既存のチョコか“永四郎の”手製か、苦渋の選択だよな」
******
「結局みんなに配るんだ…」
「俺は部員みんなに感謝している」
「…うん、まあ、手塚は部長だもんね」
「ああ、部長だからな…だが、手塚国光としてはまた別だ」
「…え…?」
「手作りなのはお前のだけなんだぞ?」
「て、手塚…!」
「『グミチョコレートパイン味』変わったものがお好きなんですね…仁王君」
「ほうかの…うん、美味い」
「ところで…駅前の卸雑貨店の店員さんに知り合いが居ます?」
「いんや」
「仁王君のお名前を聞いた気がしたのですが…不思議ですね…」
「不思議じゃのう」
「…愛の試練と思えば…ゴーヤーなんか…ゴーヤーな、ん、か……」
「いいからさっさと食べなさい」
「ギャッ!………って、あれ…美味い…」
「味が再現出来てるかはわからないですけど」
「あ、俺が諦めたやつの…」
「今年だけ、ですからね」
Happy Valentine!
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