仁王君から白紙の年賀状が届いた。
うっかり書き忘れたのか、新手のイタズラなのか
(どちらにせよ人としてどうなのだろう…)
どういう意図があるのかさっぱりわからず、暫く眺めていた。

夜、偶々デスクライトに晒された仁王君からの年賀状が、一部変色を帯びていた。
試しにライトに近付け翳してみた。
「ああ…」
白紙と思われた年賀状に、文字らしきものが見えてきた。
「炙り出しとはまた古風な…」
コンロでより強く熱をあて、文字が読める状態にした。

『11 14 12 42 63 43 24
　15 22 74 25 45 21 83
　95 71 ☆ 62 32* 95 52
　11 14 12 82 41 12 21
　91 52 13 61 43 75 13
　44* 32 44* 31 14 45 32
　83 23* 41 55 03 32 72
　52 42 32 44 93 32* Ｒ』

浮き上がったものは数字だけ。
「暗号？」
ミステリー好きな私に対する挑戦ですね？
受けて立とうではありませんか。
数字の羅列の解読パターンのセオリーは、５０音を置き換えて配置したものだ。
１－１なら“あ”、１－２なら“い”という具合に。とりあえず、その方法で解いてみることにした。

「…文章にならないですね…」
年賀状と５０音に置き換えて書き写したメモ用紙を交互に眺め、他の解読方法が無いか考える。

「…………あ！」
突然の閃きに、急いで紙に書き写した。
「仁王君…中々考えましたね」
解読した文章を読んで、満足して就寝した。



翌日の１３時、解読した年賀状の文章の通り、駅前西口に向かった。
待ち合わせ場所によく使われる銅像前で、仁王君は缶コーヒーを片手に立って居た。

「ヒロ、よう解いたの」
仁王君は私の姿を見つけると、にっこり笑って声を掛けた。
「新年早々手の込んだ悪戯をどうも」
「悪戯とは心外じゃな。愛を込めた挨拶なのに」
「…まあ、謎解きをしながら過ごすお正月もそれなりに楽しかったですよ」
「なら良かった」

場所を移動しようと仁王君が動いたので、私もその後に着いていく。
途中、ふと疑問が過った。
「あの…今日の待ち合わせ、私があの年賀状を解読していなければ、仁王君は待ちぼうけしてしまうところだったのでは？」
「……ああ…」
仁王君は今気付いたとばかりに、口を開けた。
「…そうか、そうじゃな…そんなこと考えとらんかった」
「え？」
「ヒロは絶対来てくれるって確証あったし」
「そ、そう…ですか…」
断言する仁王君の笑顔が直視できず、照れを隠すため眼鏡のフレームを直して誤魔化した。
信頼をおいてもらえるのは凄く嬉しい。
確かに、仁王君の想いが込められた年賀状と言えなくはないかもしれない。

親しき仲にも礼儀あり。
私は頭を下げて改めて新年の挨拶をした。

「今年も宜しくお願いします、仁王君」
「おう。宜しく頼むぜよ、パートナー」