ヒロが最近つれない。

否、普段から俺に対する態度はつれないけど、それは照れの一種だとわかっていたから、むしろそんなつれなさも楽しんでいた。
しかし、ここ最近のヒロは俺を見るなり、隠れる・逃げると明からさまに俺を避けている。

朝、憂鬱な気分で起き上がる。
今日もヒロにつれなくされたら、繊細な俺のハートはいよいよ砕け散るだろう。

「あ、仁王君。おはようございます」
「……ヒロ」
ここ最近避けていたヒロから声を掛けられた。
久しぶりにヒロの声を聞いた気がして、目頭が熱くなった。
「仁王君、学校が終わったら何か予定はありますか？」
「いや…特に…」
「良かった！私、僣越ながら部の皆さんに協力頂いて、仁王君の誕生パーティーを企画したんです」
「…誕生…パーティー…」
思ってもみなかったサプライズに、気の利いた言葉が全く出てこなかった。
「勝手に企画して…ご迷惑でしたか？」
ヒロが不安げに俺の顔色を伺う。
「否…まさかこんな風に祝ってもらえるとは思っとらんかったから。ありがとさん」
「…いえ…」
ヒロがほっと胸を撫で下ろす。
はにかんだ笑顔が可愛い。
「仁王君、勘が良いですから、内緒で準備するのに気を遣いました」
「……それで最近コソコソしとったんか」
「やはり感付かれていましたか。気を悪くさせていたらすみませんでした」
「や、気ィ悪いっていうか…」

――嫌われたらどうしようって…

言いかけて慌てて口を噤んだ。
これはカッコ悪いから、ヒロには内緒にしておこう。

「なあヒロ、誕生パーティーってことはプレゼントもあるんだよなぁ？」
「それはパーティーまでのお楽しみです」
「そうか…ヒロの愛情籠った手作りだとええのう…」
「さあ、どうでしょう」
こんな風に並んで話すのは何日ぶりだろうか。

他愛のない会話が今はすごく愛しい――